現状を確認したところ、一見キレイなボディにはサビとサビ穴が隠れていた。悲しくて涙が止まらないが、泣いてばかりもいられない。サビを克服して見事に甦らせるには、地道な努力しかない。鉄スクーターの天敵、サビを撃退する方法を今回は考えてみたいと思う。

レッグシールド内側にあるトランクでサビの撃退方法を試してみよう。

 前回紹介したように、幸運に恵まれて手元へやってきた1978年式ベスパP125X。だが、フタを開けたら鉄ボディにはサビ穴が無数に空いていた。これを放置して路上復帰させるわけにはいかない。まずは動くかどうかを試す前に、ボディのサビを克服してみたい。


 だが、いきなりサビ穴だらけのフロアでサビ撃退方法を試すほどの勇気はない。そこで前回確認した時、レッグシールド内側のトランクにも見つけたサビでテストしてみようと思う。ここならもしサビ退治に失敗しても、中古パーツを探して再チャレンジできるからだ。そしてこのトランク、ボディと切り離すことができる。そこでボディから切り離して、浮き出たサビに各種ケミカルを使ってサビが落とせるか試してみようという作戦だ。

トランク内部にあるナットを外せばトランクは分離できる。

 それでは早速チャレンジしてみよう! まずトランクを分離するにはロックを解除してフタを開ける。内部を見ると上に2つ、下に2つの計4つナットが見えるはずだ。このナットを外すとボディからトランクを分離することができる。ナットは10mmのメガネで緩めるのだが、この時注意したいのが、やはりサビ。ナットがサビにより固着していると、思ったように緩んでくれないからだ。メガネをかける前に潤滑剤をスプレーしておこう。

ナットを外してトランクを揺するとボディから分離できる。

 ナットを4つ外したら、トランクを両手で抑えて前後左右に揺すってみよう。するとカタンという音がしてボディから外れてくれるはずだ。ただ、この時点でトランクを持った両手はサビと汚れで真っ黒になる。作業するときはニトリルなどのゴム手袋をしておくと、汚れなくて済む。

トランクにはゴムが付いている。

 単体になったトランクには、ボディとの密着度を高めるためにウエザーストリップのようなゴムが付いている。グルリとトランクを覆っているので、ゴムを取り外そう。ここには接着剤などが用いられていないので、若干手応えはあるものの、そのままゴムが外れてくれる。注意点は無理にゴムを引っ張らないこと。外している途中で無理をすると、最悪ゴムが切れてしまうことがあるからだ。

ゴムを外すとサビの全貌が見えてきた。

 トランクからゴムを外すと、サビの脅威を目の当たりにすることになる。ゴムの内部までサビが侵食していたのだ。おそらく隠れていたことで温床になっていたのだろう。このままでは腐って崩壊すること間違いない。やはりトランクを外して正解だ。

いきなりケミカルを使わず、まずは地道にワイヤーブラシ攻撃だ。

ワイヤーブラシ攻撃で表面に浮き出たサビをやっつけた。

 サビが浮き出て鉄が何層にも見えたサビだが、ワイヤーブラシ攻撃を続けると元の鉄板が見えてきた。いきなりケミカルなどを使わず、サビを落とすには地道な努力から進めよう。

トランクを外したボディにも黒い汚れが堆積している。
清掃することで一見きれいにはなった。
だが、敵は隠れたところに潜んでいる。

 ちなみにトランクを外したボディ側にまで、サビは伝わっていないようだ。ただ、トランクが付いていた跡が汚れによってクッキリとわかる。ここはまず清掃だ。するとキレイにはなったのだが、フロア側に塗装が浮いている個所がいくつかある。試しにマイナスドライバーで浮いた塗装を剥がすと、敵は隠れたところに潜んでいた! やはりフロアのサビが上にまで上がってきていたのだ。ここもいずれ処置しなければならないだろう。

今回試したサビ取りケミカルは、この2種類。

 サビを落とすケミカルを探そうと近所のホームセンターへ出向いてみた。するとカー用品コーナーに見慣れたブランドのサビ取りケミカルが並んでいた。だが、それらは以前試して効果が薄かった記憶がある。もっと違うモノがないか探していると、工具コーナーに別のブランドのものが見つかった。それが写真の2種類だ。


 まず左はバイク乗りにはお馴染み、AZというブランドのジェル状ケミカル「サビアウト」。110g入りで328円という安さが魅力だ。そして右はサビが進行して工具が使えなかったり、工具を使ってナメてしまったボルトやナットを外す時に活躍してくれる工具「ネジザウルス」から発売された「ネジザウルスリキッド」という商品。泡タイプのスプレーで、価格は1480円とそれなりに高い。どちらもスーパービバホームでの価格だ。

サビアウトはジェル状なので、先端をサビに当てて容器を押せばいい、
ネジザウルスリキッドはスプレーするだけ。

 同時にテストしたかったので、向かって左側をサビアウトで処理、右側をネジザウルスリキッドで処理してみた。サビアウトは容器先端のプラスチック部品を回転して外し、容器に付いているフタを外す。そしてプラスチック部品を戻して先端をハサミなどでカットすればいい。容器を手で押すとチョロチョロとジェル状ケミカルが出てくる。


 対してネジザウルスリキッドはスプレー先端に「ON」と「OFF」の表示があるので、先端を回転させてスプレーするだけだ。だが、ここでつまずいた。なんと不良品だったようで、いくらスプレーしてもケミカルが噴出されないのだ。本来ならホームセンターで交換してもらえばいいのだが、引っ越した先からホームセンターまでクルマで30分近くかかる。そんな無駄足は踏みたくないので、今回は仕方なく別のスプレー容器からノズルだけ借りて使うことにした。

サビアウトはジェル状だから、塗った付近からゆっくりと周囲へ垂れていく感じ。
ネジザウルスリキッドはスプレーすると泡状に広がる。ただ液体なので周囲へ垂れるのは早い。
しばらく放置するとサビが化学反応してくる。

 サビアウト、ネジザウルスリキッドともに説明によれば塗布してから10分から20分ほどつけ置きすると効果が高いとある。そこで30分以上放置してみた。その結果は写真の通りで、左のサビアウト塗布面はサビが化学反応により黒くなっている。対して右のネジザウルスリキッド塗布面も確かに化学反応を起こしているが、左ほどの反応ではないようだ。サビが消えている部分もあるが、そのままサビが残っている部分もある。 


 ケミカル製品の効果は写真の通りで、サビアウトが抜群に良かったと言える。そこで、ネジザウルスリキッドで落とせなかった部分にもサビアウトを上塗りして、さらに放置することにした。

処置前のトランク。
処置後のトランク。

 今回試したサビアウト、ネジザウルスリキッドともに処置後は十分な水洗いをしろと書かれている。おそらく酸性のため、そのまま放置しているとさらに化学反応を起こして無用なサビを生んでしまうのだろう。そこで水をかけながら溶液を洗っていると、やはり白い泡が出てくる。そのまま水で流すこと5分くらいだろうか、ようやく泡がなくなった。


 洗い流したトランクを処置前のトランクと比較してみよう。これはどちらも劇的な効果があったと言える。ただ、今回の場合はサビアウトの効果が高く、処置した部分は見事に鉄色に戻ってくれた。今回はこの後、ネジザウルスリキッドを塗布して落とし切れていない部分にもう一度サビアウトを塗って処理しようと思っている。それが終わったら、サビ止め処置してみたいと思う。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ボロンボロンなスクーターのサビを落とす!|ベスパレストア計画