世界中でもっとも売れているスバル車は、フォレスターだ。そのフォレスターの国内モデルは、2.5ℓの水平対向エンジン(FB25)と2.0ℓ水平対向エンジン(FB20)+モーターのe-BOXERを設定する。今回はe-BOXERをモータリングライターの世良耕太が試乗。「e」の価値を検証した。


TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

e-BOXERの「e」の価値は?

 フォレスターには2.5ℓ水平対向4気筒エンジン(184ps/239Nm)を搭載する仕様(車両本体価格286万円〜308万円)と、2.0ℓ水平対向4気筒エンジン(145ps/188Nm)にモーター(13.6ps/65Nm)を組み合わせた仕様(車両本体価格315.7万円)がある。エンジンに電動技術を組み合わせたハイブリッドシステムを、スバルは「e-BOXER(イー・ボクサー)」と呼んでいる。

ステアリングギヤ比13.5:1 最小回転半径:5.4m 最低地上高:220mm

 今回乗ったのはフォレスター・アドバンスで、e-BOXER搭載車だ。モーターの最高出力は10kW(13.6ps)なので、大きなアシストが期待できないのは容易に想像できる。スバルもそこはあまり狙わず、モーターの特徴である「反応の良さ」を生かそうとしたと明言している。減速時のエネルギー回生による燃費の向上よりも、レスポンスに着目したのだ。




 エンジンはその性質上どうしても、応答遅れが生じてしまう。「加速したい」とドライバーがアクセルの踏み込み量を増すと、車載コンピューターはドライバーの要求を汲み取り、エンジンに取り込む空気量を増やすよう指示を出し、スロットルの開度を大きくする。蛇口にひねりを加えても一瞬でコップに水が溜まらないように、シリンダーにたくさん空気が入るにも相応の時間を要する。そこから着火〜燃焼というプロセスを経て、初めて大きな力が発生し、ドライバーの要求を満足させる。

ボンネットフードを開けると、このような景色が見える

カバーを外すとFB20型2.0ℓ水平対向4気筒DOHCエンジンが見える。(その他の写真は「画像ギャラリー」をご覧ください)

エンジン形式:水平対向4気筒DOHC エンジン型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4000rpm 過給機:× 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)

 いっぽう、モーターはエンジンのように、空気量を増やして、着火してという面倒なプロセスは必要なく、信号を送ると瞬時に反応する。エンジンが不得意とする領域を応答性に優れたモーターでカバーするのがe-BOXERのコンセプトだ。




 低出力ではあるけれども、モーターの力だけで車両を動かすだけの力はあり、発進から微低速では、いわゆるEV走行を行なうことができる。市街地を走っている状況でアクセルをオフにした際は、エンジンをシャットダウンし、コースティングしつつモーターで減速エネルギーを回生する。シーンは限定的だし効果は弱いけれども、高出力モーターを積むストロングハイブリッドと同様のモードを備えていることになる。

トランクルームの下を見るとバッテリーの存在がわかる。東新宿の編集部でフォレスターを受け取って、外苑から首都高にのって、6号線経由で三郷から外環に入り、新倉PA(ほぼ高速で63.5km走行)で燃費は15.7km/ℓだった。

 e-BOXERには2018年10月に箱根で乗っているが、そのときは交差点や信号がほとんどないルートでの走行に終始した。今回は都内近郊の自動車専用道路と幹線道路、それに細街路を走った。一般道では発進と停止を頻繁に繰り返し、冷間始動も体験した。より、日常に近い条件で走らせてみて気づいたことがある。アクセルを踏み増したときの応答性こそe-BOXERの生命線であるはずだが、モーターからエンジンへのバトンタッチが上手にできておらず、不愉快な動きが顔を出す。




 発進時はモーターだけで走行するのが基本だ。だが、出力が小さいのが災いしてか、ドライバーとしてはそれほどアクセルを強く踏んでいるつもりはないにもかかわらず、浅い踏み込みでもエンジンが始動する。エンジンが始動すること自体は何ら問題ないのだが、エンジン走行に切り替わる際に、ドンというなかなか不愉快なショックをともなうのだ。




 それが、発進の度に起きる。渋滞に遭遇した際に発進と停止を繰り返していると、発進の際に、「あぁ、またアレが来るのかぁ」と暗い気分になる。そして、やっぱりショックは出るのだ。フォレスターのダッシュボード中央にはインプレッサと同様にマルチファンクションディスプレイが装備されている。モードを切り替えるとスロットル開度を表示することが可能だ。発進時のアクセル開度が17%であったとしても(ごく普通に発進したつもり)、モーター走行はほんの一瞬で終わってエンジンが始動し、ドンとくる。

マルチファンクションモニターでパワートレーンの運転状況は把握できる。バッテリーが空になれば、当然エンジンのみで駆動することになる。

全長×全幅×全高:4625mm×1815mm×1730mm ホイールベース:2670mm

燃費は2.5ℓ車が13.2km/ℓなのに対してe-BOXERは14.0km/ℓ 価格は2.5ℓのプレミアムが308万円 Advanceが315万7000円。 車重はe-BOXERが110kg重い。

 冷間始動時は触媒を短時間で適温まで上昇させるため、エンジン回転を高めに制御するのが一般的だ。スバル車も例外ではなく、始動直後のエンジン回転数は高い。今回の試乗では1度しか経験する機会はなかったが、フォレスター・アドバンスの始動直後のエンジン回転数は1800rpm前後で、近所迷惑レベルで騒々しかった。




 あまりに騒々しいのでアイドル回転が落ち着くまで待つことはせず、Dレンジに入れて発進。すると、触媒の暖機が完了したのか、モーター走行に切り替わって途端に静かになった。「静かにしてほしいのはそのタイミングじゃないのに」というのが実感である。せっかくモーターを搭載しているのだから、冷間始動時であっても始動直後はモーター走行を基本とし、最初にエンジンが始動したタイミングで上手に触媒の暖機をできないものだろうか。

リヤサスペンションはダブルウィッシュボーン式
フロントはマクファーソンストラット式

 アクセルオフ時やブレーキング時は、減速エネルギーを電気に変換する回生ブレーキが働く。いまどきのハイブリッド車にしては珍しく、フォレスター・アドバンスはモーターを搭載したクルマに特有のヒューンという音が車室内に容赦なく侵入する。ハイブリッド車が出始めの頃ならいざしらず、この音を「効率の高さを象徴する未来的な音」と好感をもって受け入れる層がどれほどいるだろうか。どう受け止めるにせよノイズには違いなく、昨今のトレンドからしても聞かせないようにするのが筋だろう。

室内長×幅×高さ:2100mm×1545mm×1270mm

 2.0ℓエンジンだけを搭載した場合に比べ、低出力であってもモーターを加えただけのメリットはあるのだろう。だが、日常使いで電動化のメリットは感じづらく、むしろモーターを追加したがゆえに顔を出してしまう、感じたくないショックや音が気になる。それらが解消されれば、もう少し気持ち良く付き合えそうだが……。

WTLCモード燃費:14.0km/ℓ  市街地モード11.2km/ℓ  郊外モード14.2km/ℓ  高速道路モード16.0km/ℓ

スバル・フォレスター アドバンス


全長×全幅×全高:4625mm×1815mm×1730mm


ホイールベース:2670mm


車重:1640kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式


エンジン形式:水平対向4気筒DOHC


エンジン型式:FB20


排気量:1995cc


ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm


圧縮比:12.5


最高出力:145ps(107kW)/6000rpm


最大トルク:188Nm/4000rpm


過給機:×


燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)


モーター:MA1型交流同期モーター




使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量:48ℓ


最高出力:13.6ps(10kW)


最大トルク:65Nm




WTLCモード燃費:14.0km/ℓ


 市街地モード11.2km/ℓ


 郊外モード14.2km/ℓ


 高速道路モード16.0km/ℓ


車両価格○315万7000円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スバル・フォレスター Advance:スバルe-BOXERの「e」の価値を試乗で検証する