そういった過程を経る中で、フェアレディZには何らかの操縦テクニックが発揮できる場を残したかったとしてFRが選ばれた。また、山田自身、実験に足繁く通い、あらゆる部署の人間にデータによる判断だけでなく、その時人間がどう感じるか?を大切にして修正を加えていったという。その結果、フェアレディZは操縦性を高めるためにボディサイズが先代から小さくなるという従来のモデルチェンジに対する既成観念を壊しただけでなく、エンジンとトランスミッションは既成のものをちょっと手直しするという便宜的な手段は採用されなかった。
エンジンは吸排気系の見直しのほか、ヘッドとピストン、ブロックなどほとんどを設計し直した。「レパードに搭載されているエンジンと型式は同じですが、性能アップのための改良点は数限りない」という。さらに、ドライバーが意のままにコントロールできるようにスカイラインに続いてスーパーHICASと前後マルチリンクサスペンションが採用された。それらについて山田は世界一という高い志に近づくなら問題はないと語る。その代わり、予算は随分オーバーして役員から怒られたそうだ。