その代わり、ルーフ部分は熱線吸収ガラスとなっており、ボタンを押すだけでスムーズにオープンすることが可能で、巨大なガラスは大きなスライドルーフのようにリアウィンドウの後ろにすっきりと格納される。
この新しいタルガの利点は、ルーフを閉じたときの風切り音の低減と、太陽の光をたっぷりと浴びられる車内環境を両立できることだ。また、クーペのルーフラインを損なうことなく、オープントップのドライビングプレジャーを味わえることもユーザーから歓迎された。
ポルシェは1997年に第5世代の911カレラ、タイプ996を発表した。タイプ996はデザインが一新されただけでなく、初めて水冷6気筒ボクサーエンジンを採用したことでも話題を呼んだ。
タルガは2001年12月に登場、先代モデルと同様に電動式ガラスルーフを採用していた。ガラスルーフの表面積は1.5平方メートルを超えるが、これはポルシェ911で最大のガラスであった。
また、新型タルガは、911で初めて開閉式のリアウィンドウを搭載したモデルでもある。これにより、バッグやスースケースを最大230ℓの荷室へ積む際のアクセスが容易になった。
2006年9月、6代目911(タイプ997)のタルガが導入された。クーペライクなルーフデザインや実用的なリヤリッドなど、基本コンセプトは先代から継承した。タイプ997では特殊ガラスを採用することで1.9kgの軽量化が図られたほか、サイドウインドウの縁には高光沢ポリッシュアルミニウムストリップが追加された。
タイプ997のタルガは、2種類の4WDモデル(911タルガ4と911タルガ4S)でのみ選択することができた。これは、最新のタルガ(タイプ992)においても同様である。
2011年9月、ポルシェは911を7代目(タイプ991)へとフルモデルチェンジ。クーペとカブリオレに続き、2014年1月にタルガを発表した。
新型タルガは、革新的なタルガルーフを備えた現代のクラシックカーとして登場した。古典的なタルガのアイデアと最先端のルーフの利便性を初めて融合させることに成功したのだ。
新型タルガを構成するのは、Bピラーの代わりとなる特徴的なワイドバー、可動式のルーフセクション、Cピラーのないラップアラウンド型のリヤウィンドウだ。これらはタイプ901〜タイプ964の時代のタルガと共通性が感じられる部分だが、過去のタルガと異なるのは、新型タルガのルーフはボタンを押すだけで開閉できること。フルオートマチックのルーフシステムは、リヤシートの後ろにルーフを時計仕掛けのような精密な動きで格納するのだ。
タイプ991の後継となるタイプ992は2018年11月に登場、それをベースとした新型タルガも5月18日に発表された。
好評だったルーフ格納システムはそのままで、911タルガ4とタルガ4Sを設定。3.0ℓツインターボエンジンは、タルガ4Sで450psを発揮する。最高速度は304km/h(タルガ4S)、そしてオプションのスポーツクロノパッケージを装着したタルガ4Sは0-100km/h加速を4.2秒で達成してのける。このパフォーマンスは、間違いなく歴代タルガで最強である。
「最新の911は最良の911」というのは良く知られたフレーズだが、タルガもその例外ではないのである。
タイプ901(1996年1月〜1973年7月) 2万5429台(タルガ)/7万6092台(911全体)
タイプ930(1973年9月〜1989年7月) 5万7371台(タルガ)/19万6397台(911全体)
タイプ964(1989年10月〜1993年7月) 4863台(タルガ)/6万3762台(911全体)
タイプ993(1995年11月〜1998年4月) 4585台(タルガ)/6万8881台(911全体)
タイプ996(2001年12月〜2005年3月) 5142台(タルガ)/17万5262台(911全体)
タイプ997(2005年12月〜2012年5月) 8459台(タルガ)/21万3004台(911全体)
タイプ991(2014年1月〜2019年12月) 1万9373台(タルガ)/23万3354台(911全体)