KTMから「790 ADVENTURE(アドベンチャー)」の特性とDNAに加え、ダカールラリー成功からのフィードバックを融合させたNEWアドベンチャーモデル「390アドベンチャー」、その国内仕様の詳細が明らかになった。「390 DUKE」をベースに開発された新しい「390アドベンチャー」は、手軽に“冒険”を楽しめる入門モデルながら、レース仕様をフィードバックした充実の装備を誇る。


REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

The 2020 KTM 390 ADVENTURE | KTM
エンジンは水冷単気筒4ストロークDOHC 4バルブ 373ccを搭載。国内では普通自動二輪(中型)免許で乗車可能だ。

前後ホイールはフロント19インチ、リア17インチの異径タイプを採用。

コンパクトで軽量な車体が特徴。車両重量は約158kg。

写真はホワイト。

写真はホワイト。

 ヨーロッパのオーストリアを拠点とする大手バイクメーカー「KTM」がリリースする、ミドルクラスのアドベンチャーモデルが「390アドベンチャー」である。排気量は、国内では普通自動二輪(中型)免許で乗車可能な373cc。




 この新型モデルに掲げられた目標は、「新たなトラベルエンデューロライダーの誕生」。これを実現するため、アドベンチャーシリーズの上位モデルが持つ、オフロードマシンの血統とハンドリングの卓越性を活用し、その性能とノウハウを実装している。




 「390アドベンチャー」は、KTMが20年以上に渡り築き上げてきた、トラベルエンデューロエンジニアリングのパフォーマンスを獲得。これに加え、扱い易さ、軽量化、俊敏性、スポーツ性の向上といった要素も織り込まれているのが大きなポイント。


 KTMの技術者は、ラリーやオフロードレースチームから、ポテンシャルを高めるためのフィードバックを活用することを実現。その結晶として生まれたのが、「390アドベンチャー」なのだ。




 アドベンチャーモデル未経験者に、新しい境界を切り拓くだけでなく、ビギナーでも楽しく、しかも機敏にライディングできる1台に仕上げられている。

走行シーンを選ばないアドベンチャーモデル「KTM 390アドベンチャー」。

単気筒エンジンゆえの軽量な車体は、ストリートでの扱いやすさも良好。

最先端の水冷単気筒4ストロークDOHC 4バルブ 373ccエンジンを搭載

 搭載されるエンジンは水冷単気筒4ストロークDOHC 4バルブ373cc。37Nmの高トルクと、32kW (44PS) の最高出力を発揮する。圧縮比は、市販車としてはやや高めの12.6 : 1。46mmのスロットルボディを採用した最先端の燃料噴射システムとの組み合わせにより、パワフルでリニアな出力特性を実現している。




 エンジンには摩擦を低減し、エンジン回転数が高くても長時間でも信頼性をサポートするDLCコーティングが施されたフィンガーフォロワーを採用。ボア×ストロークは、レーシーなΦ89mm×60mmのショートストローク型とし、“エンジンを回してパワーを稼ぐ=回して楽しめる”要素が盛り込まれている。




 燃料タンク換気システム(EVAP)は、燃料の蒸発ガスの漏れを抑制し、厳しい排ガス規制「Euro4」への適合に貢献。スリッパークラッチは、 急ブレーキ時や減速時に後輪のチャタリングを防止。また、スロットルを開いた際に、クラッチスプリングの力で閉じるので、わずかな力でクラッチを引くことができ、走行時の疲労を低減。




 エキゾーストシステムは、ステンレススチール製ヘッダーパイプ&プリマフラー(2つの触媒コンバーターを含む)が、軽量サイレンサーと絶妙のマッチング。ダカールマシンから発想を得たこのユニットは、バランスとハンドリングを支援するため、バイクの中心に向けて集約されている。




 「KTM 390アドベンチャー」の重量は約158kg、燃料満タンの状態で約172.5kgで、パワーウェイトレシオは3.9kg/PS。小排気量のトラベルエンデューロセグメントの競合他車と比べても、最高のパワーウェイトを誇るのがポイントだ。

最新の「ライダー支援システム」も充実

軽量アルミニウム製のテーパーハンドルバーを採用したハンドル周り。

 モーターサイクルトラクションコントロールは、最適なスリップを制御するスロットルバルブを備えた「リーンアングルセンサー付きTCシステム」を採用。オフロードABSは、さまざまな地形でのブレーキのコントロール性を向上し、スライドをコントロールするために、後輪をロックすることも可能だ。




 コーナリングABS(解除可能)により、ライダーは様々なリーンアングルにおいて、ブレーキをフルパワーで使用OK。また。オプションの「クイックシフター+」により、シフトアップ・シフトダウンの両方において、クラッチレスでの迅速な操作が可能となる。




 灯火類には、「KTM 1290スーパーアドベンチャー」や「KTM 790アドベンチャー」にも採用されているLEDヘッドライトを装備。テールランプ、ウインカーもLEDを使用している。




 ディスプレイは、フルカラーの、5インチTFTディスプレイを採用。周囲の光に適応し、明瞭で新しいデザインのメニューシステムの一部として、ギアシフト警告灯も含まれている。表示中の情報は、カスタマイズ可能で、左側のハンドルバースイッチを介して実行することができる。




 なお、「KTM MY RIDEアプリ」は、2017年にリリースされ、2018年に改良。スマートフォンへのBluetooth接続を介して、電話や音楽もTFTディスプレイを介して操作することが可能だ。

フレーム&サスペンションはココがポイント!

●スチール製トレリスフレーム


 スチール製トレリスフレームは、柔軟性と剛性、そして軽い重量と信頼性の高いスタビリティ(1430+/-15.5mmの短めのホイールベース、63.5度のステアリングヘッドアングルと長めのスウィングアームによる)の絶妙なバランスを実現するため、「KTM 450 RALLY」で実施した検証と結果を活用。




●スイングアーム


 KTM 390アドベンチャーに採用された鋳造ラティス構造のスイングアームは、シャシー全体の適切な屈曲/剛性比を可能にするもう1つの要素となっている。




●コンパクト、軽量、敏捷、安定


 重量、ジオメトリー、エルゴノミクス、そして最新仕様のWP製サスペンションとの融合により、信頼と安心感を獲得。




●フロントフォーク&リアショック


 WP製APEX 43mm倒立フロントフォーク(本来はエンデューロ用に開発)が装備されており、左右に調整機能をチョイス。コンプレッションとリバウンドは、ダイヤルを回すだけで簡単に変更できる。


 トラベル量はフロントフォークが170mm、WP製APEXリアショックが177mmで、舗装道路における十分な安心感はもちろん、路面が変化した時の信頼性がさらにアップ。リバウンドダンピングとスプリングプリロードは、容易に調整可能。

外装類の特徴

●燃料タンク


 容量は14.5L。走り方によって異なるが、1回の補給で430km程度の航続距離となる。こだわりのタンク形状により、ライダーの感触が向上し、またライディング時の体の自由度をアップ。一方で、タンクスポイラーは保護とコントロール性を高めるため、少し幅広になっているのが特徴。




●シート


 徹底的に素材や形状を吟味したシートの高さは、やや高めの855mmだが、足着き性を良くするため、前部が狭くなるように成形。耐久性のあるフォームは快適さを提供し、カバーはグリップと動きやすさの両方を実現。




●ハンドルバー&ハンドガード


 軽量アルミニウム製テーパーハンドルバーは、大型のアドベンチャーモデルから直接派生したもう1つの要素で、位置の調整が可能。左側のハンドルバーには、TFTディスプレイを操作するためのスイッチシステムを備えている。




●ウインドシールド


 ウインドシールドは、ライダーの身長と好みに応じて、2つの位置に配置できる効率的なディフレクター。ユニットの形状により、走行時の視認性が制限されることもない。

「2チャネルのABSシステム」「ブレンボ製4POTラジアルキャリパー」「前後鋳造ホイール」などの豪華な足周り

●ブレーキ


 BOSCH製ソフトウェアによって制御される2チャネルのABSブレーキシステムは、320mmの大径フロントブレーキディスクと230mmのリアディスクを備えた、高品質&高性能なブレンボ製BYBREブレーキを組み合わせ。フロントは4ピストンのラジアルマウントキャリパー、リアは1ピストンのフローティングキャリパーを採用。




●ホイール


 19インチ(フロント)&17インチ(リア)の鋳造ヘビーデューティホイールは、岩、こぶ、くぼみに対する耐久性と、ツーリング時の心地良さを高次元で実現。前後異径のホイール寸法とすることで、軽快な操作感を獲得。




●タイヤ


 走行シーンを選ばない、多目的で使いやすいセミブロックパターンの「Continental製 TKC 70」を標準装備。

エンジン型式:4ストローク単気筒


排気量:373cc


ボア×ストローク:89mm×60mm


出力:32 KW(44PS)/9,000rpm


トルク:37 NM/7,000rpm


圧縮比:12.6:1


スターター/バッテリー:セルスターター/12V, 8 AH


変速機:6速


燃料システム:BOSCH製EF(I スロットルボディ46mm)


コントロール:4バルブ/ DOHC


潤滑方式:ウェットサンプ


エンジンオイル:MOTOREX FORMULA 4T 15W/50


プライマリードライブ:30:80


ファイナルドライブ:15:45


冷却方式:水冷


クラッチ:PASC™スリッパ―クラッチ、機械操作式


イグニッション/エンジンマネジメント:BOSCH製EMS(RBW付)


トラクションコントロール:MTC


フレーム:スチール製トレリスフレーム(パウダーコート)


サブフレーム:スチール製トレリスフレーム(パウダーコート)


ハンドルバー:アルミニウム、テーパード、Ø 26 / 22mm


フロントサスペンション:WP製APEX、Ø 43mm、コンプレッション/リバウンド調整可能


リアサスペンション:WP製APEXショックアブソーバー、リバウンド/スプリングプリロード調整可能


サスペンションストローク( F/R):170 / 177mm


ブレーキ(F):4ピストンラジアルマウントキャリパー、ディスクブレーキØ 320mm


ブレーキ(R):シングルピストンフローティングキャリパー、ディスクブレーキØ 230mm


ABS:BOSCH製9.1MP 2チャンネル(コーナリングABSおよびオフロードモードを含む)


ホイール(F/R):アルミキャストホイール 2.50 × 19”;3.50 × 17”


タイヤ(F/R):100/90 × 19;130/80 × 17


チェーン:X-RING 520


サイレンサー:ステンレススチール製プライマリーサイレンサー/セカンダリーサイレンサー


キャスター角:63.5°


トレール:98mm


ホイールベース:1,430 ± 15.5mm


最低地上高:200mm


シート高:855mm


燃料タンク容量:約14.5 L / 3.5 L(リザーブ)


車両重量:約158kg
●問い合わせ


KTMジャパン https://www.ktm.com/
情報提供元: MotorFan
記事名:「 レースマシンの機構をフィードバック。ライダー支援の電子システムも充実でビギナーも安心