「売れ筋国産SUV長距離実力テスト」と題したこの企画では、2020年1~3月の販売台数ランキングで上位につけた国産SUV4台をピックアップ。SUVユーザーに多いであろうアウトドアレジャーや帰省での使用を想定し、各車とも約500kmを走行して長距離長時間での疲労度を測るとともに、都心の町中や高速道路、郊外の一般道やアウトドアスポット近隣の荒れた路面で走りの実力をチェックする。
1本目は2019年11月の発売以来、OEM車のトヨタ・ライズが登録車販売台数トップ10にランクインし続けている、ダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」。都内の首都高速道路から京葉道路を経由し千葉市内から銚子港、九十九里浜までの一般道を経て、千葉東金道路から東関東自動車道、首都高速道路へと戻るルートなどを走行した。
なお、今回テストしたのは、上から2番目のグレード「G」の4WD車。メーカーオプションのブラインドスポットモニターとパノラマモニターパック、ディーラーオプションの9インチスタンダードメモリーナビなどに加え、スタッドレスタイヤのブリヂストン・ブリザックVRX2を装着していた。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、ダイハツ工業、トヨタ自動車
ライズとロッキーの快進撃が止まらない。自販連の「乗用車ブランド通称名別順位」を見ると、
【トヨタ・ライズ】
2019年11月… 7,484台(4位)
2019年12月… 9,117台(2位)
2020年 1月…10,220台(1位)
2020年 2月… 9,979台(1位)
2020年 3月…12,009台(4位)
総計 …48,809台
【ダイハツ・ロッキー】
2019年11月… 4,294台(16位)
2019年12月… 3,514台(16位)
2020年 1月… 3,153台(21位)
2020年 2月… 3,411台(24位)
2020年 3月… 5,011台(22位)
総計 …19,383台
ライズは登録車トップの座に2回つき、ロッキーもダイハツの登録車としては非常に好調に推移している。
このロッキーとライズは、2019年7月発売の新型ダイハツ・タントに続き、新世代の「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」プラットフォームを採用。これにより「取り回しのよいコンパクトな5ナンバーサイズながら、広い室内空間と大容量ラゲージに加え、17インチの大径タイヤを採用した力強いデザインを実現した」とダイハツは主張している。
確かに、DNGAが採り入れられたことで、タントでは室内空間が一段と広くなり、旋回性能も劇的に向上した。その一方で内外装の質感に明確な割り切りが見られ、乗り心地や静粛性、新開発の「D-CVT」や「次世代スマートアシスト」に関しては熟成不足が目に付いた。
また、売れているクルマ=良いクルマ、とは限らないのが、特に登録車ではよくある話。そのため今回ロッキーに試乗する前、筆者は少なからず不安を抱いていた。
ともあれ実車を目の前にすると、全長4m以下の5ナンバーサイズながら、そうとは思えない迫力と存在感が、ロッキーのエクステリアには備わっている。その方向性は流行のクロスオーバーとは真逆の、SUVらしさを強調したものだが、要素過多で煩わしいと感じさせないギリギリの所でシンプルにまとめているあたり、ダイハツデザイナー陣の力量の高さを実感させる。
なお、OEM車のトヨタ・ライズとの違いは、フロントマスクと17インチアルミホイールのデザイン、エンブレム類とグレード構成(ロッキーにはファブリック×ソフトレザー調シートの最上級グレード「プレミアム」があり、ライズにはスマートアシストレスの廉価グレード「X」がある)に集約される。が、RAV4と共通のモチーフを持つライズのフロントマスクはロッキーに対し要素が増え、そのボディサイズの許容量を超えてしまっているため、筆者としてはロッキーの方が好ましく感じられた。
室内に目を移すと、インパネはやはりタントと同様に質感の高さを追求せず、安っぽく見られるのを巧みな表面処理で避けている印象。Aピラーが細くヒップポイントが高いことで圧迫感は少なく、かつエンジンフードの左右前端が見えるため車両感覚は掴みやすい。だが、インパネに分割線もデザイン要素も多く、フロントガラスが天地方向に狭いうえ9インチモニターがインパネ上部中央に鎮座するため、少々煩わしく感じられる。
前後シートの感触もタントと同様に、クッションのフィット感こそ悪くないものの絶対的なサイズが不足しており、身長176cm・座高90cmの筆者が座るにはやや心許ない。なお後席はニールームに20cmほどの余裕があり、AセグメントのSUVとは思えないほど広々としているのだが、着座位置が高めに設定されているためヘッドクリアランスは5cm程度。さりとて見晴らしが良いかといえば、前述の通りフロントガラスが天地方向に狭いため、視覚的には閉塞感が強いというのが率直な感想だ。
ロッキーは荷室の広さもセールスポイントの一つに掲げているが、絶対的な容量(後席使用時・デッキボード下段時369L)だけではなく使い勝手の良さも大きな美点と言えるだろう。デッキボードは上下二段可変式となっており、これを上側に配置すれば、後席を倒しても段差がほぼなくなる。また下段でもボードの下に筆者のビジネスバッグとカメラバッグ、A4正寸のカタログが綺麗に収まる空間が得られるうえ、さらにボードを外せば2WD車なら高さ1mほどの荷物も積載できる。またバックドアが樹脂製で軽く、開閉が容易なのも好印象だった。
果たして、実際の走りはどうだったか。まずハンドリングと乗り心地に関しては、簡潔に言えば良くも悪くもタントに近い感触だった。
ロッキーはタントよりも600mm長く220mm広く155mm低く(4WD車)、ホイールベースは65mm長いのだが、こうした寸法上の有利も手伝い、タントでも感じられた操縦安定性の高さにより一層磨きがかかっている。そのため銚子港近隣にあるアップダウンの激しいワインディングでも、軽快かつ安定感のあるハンドリングを楽しめた。
このように、個々の要素を見ていくと手放しで絶賛できるポイントは少ないのだが、500kmを走り切った後の疲労感は思いの外少なかった。それは恐らく、満足できなかったシートサイズや乗り心地、エンジンのマナー、ADASの制御といった点が、致命的に疲労を蓄積させるレベルで悪くはない、ということなのだろう。逆に好印象だった車両感覚の掴みやすさや静粛性、ハンドリングは、少しでも出来が悪ければ速度域や走行環境を問わず多大なストレスに直結する。
今回のテスト車はスタッドレスタイヤを装着していたため、これが新車装着のサマータイヤになった場合、少なからず評価が変わる可能性は捨てきれないが、このダイハツ・ロッキー、室内と荷室の広さを含め、長距離長時間のドライブとアウトドアレジャーに適した高い実力の持ち主であることは間違いない。
…が、全行程の平均燃費は16.2km/Lと、まずまずの水準だったにもかかわらず、道中で燃料警告灯が点灯し、1回余分に給油を余儀なくされたのはいただけない。燃料タンク容量が36Lと小さく、満タンから空になるまで走ったとしても航続距離が583.2kmというのは、長距離長時間を走るSUVとしては物足りない。走り方次第で燃費が大きく落ち込む傾向にあるだけに、遅くともマイナーチェンジの際に燃料タンクが増量されることを切に願う。
■ダイハツ・ロッキーG 4WD
全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1050kg
エンジン形式:直列3気筒DOHCターボチャージャー
総排気量:996cc
最高出力:72kW(98ps)/6000rpm
最大トルク:140Nm/2400-4000rpm
トランスミッション:CVT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:195/60R17
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:17.4km/L
市街地モード燃費:13.3km/L
郊外モード燃費:18.8km/L
高速道路モード燃費:19.0km/L
車両価格:222万4200円