では、OICA(Organisation Internationale des Constructeurs d'Automobiles=国際自動車工業連合会)の統計データから分析してみよう。
危機の発生源であるアメリカ市場では、新車販売台数が
2007年:約1646万台
2008年:約1349万台
2009年:約1060万台
2010年:約1172万台
と激減した。2007年の水準に戻ったのは2014年(約1684万台)。じつに7年間を要した。
欧州(EU 15 countries + EFTA)では
2007年:約1730万台
2008年:約1581万台
2009年:約1523万台
2010年:約1470万台
2011年:約1468万台
2012年:約1342万台
というように、なかなかもとの水準に戻らない。直近の2019年でも約1658万台だから、いまだに元の水準には戻りきっていない。
日本は
2007年:約531万台
2008年:約508万台
2009年:約461万台
2010年:約497万台
2011年:約421万台
2012年:約537万台
とリーマン・ショックの後、2011年に東日本大震災のダメージを受けた。それでも日本市場は健全なほうで、2019年は約520万台となっている。
2007-2009年の間で失われた販売台数(リーマンショックが起こらなくて07年の水準が09年まで続いたと仮定して)は
アメリカ:約883万台
欧州:約356万台
日本:約93万台
で、日米欧では約1332万台がリーマン・ショックで消えた(もちろん、その後の回復のなかにそれは含まれる場合もあるが)わけだ。
この間の世界販売台数は、
2007年:約7156万台
2008年:約6832万台
2009年:約6557万台
2010年:約7497万台
2011年:約7817万台
2012年:約8213万台
となっている。08年のリーマン・ショックの影響で08-09年とマイナスになっているが、10年には回復している。まさに、2009年が、世界最大の自動車市場がアメリカから中国に変わったタイミングなのだ。
乱暴な計算だが、2007年-2009年に失われた販売台数を世界で計算してみると
世界:約923万台
じつに、日本市場が丸ごと吹き飛んだことになる。
同じ時期、中国は
2007年:約879万台
2008年:約938万台
2009年:約1364万台
2010年:約1806万台
2011年:約1851万台
2012年:約1931万台
で、成長を続けていた。つまり、世界の自動車産業がリーマン・ショックを乗り越えるために中国が果たした役割は非常に大きかったといえる。
しかし、中国市場は2017年の約2888万台をピークに減少に転じている。
今回の新型コロナウイルスによる肺炎の世界的な流行に端を発する経済危機が発生するとしたら、もはや中国市場頼みとはいかない。
日本の、世界の自動車産業が直面する危機をどう乗り越えるのか? これを奇貨として自動車産業の体質改善を進めることができるのか?