※1 Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム
※2 Light Detection and Ranging:対象物に光を照射し、反射光を検出して距離を測定するセンサー
車載ライダーは、車両や歩行者などの周囲にある対象物にレーザーを照射し、反射してくるまでの時間を計測することで正確な距離を測定し、周辺の状況をリアルタイムかつ立体的に把握できるセンサーである。ADAS※3 の高度化及び自動運転の実現に不可欠なキーデバイスとされ、その世界市場は年平均成長率170%と急速に成長しており、2025年度には約3,300億円に達すると予測されている。
従来は、モーターで回転するミラーにレーザーを照射し、周囲の状況を計測する「機械式」が主流であったが、モーター駆動部の部品数が多くなることから小型化が難しく、高コストだった。また、モーターを常に駆動させるため、温湿度や振動などに対する耐久性も課題だった。
三菱電機は今回、水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMSミラーを搭載した小型の「MEMS式車載ライダー」を開発し、広い水平視野角下での高精細な3次元画像の取得を実現した。車載ライダーの小型化、低コスト化による普及を進めることで、安心・安全な自動運転社会に貢献する。
※3 Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム
【開発の特徴】
1. 独自の構造と2軸走査の電磁駆動により、広い振れ角を持つ業界最大級の軽量ミラーを実現
・車載搭載向けに水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMSミラーを開発
・当社独自のミラー構造採用により面ひずみを抑制し、業界最大級(7mm×5mm)の軽量ミラーでの広い振れ角(水平:±15°、垂直:±3.4°)を実現
2. 主要部品の最適配置により、広範囲での3次元画像取得と小型化を実現
・開発した2軸電磁駆動式 MEMS ミラーと、複数のレーザー光源の高密度実装と最適配置により、広い水平視野角(120°)を実現することで、先行車両や歩行者などの高精細な3次元画像を広範囲に取得することが可能(図2)
・信号処理回路基板と光学系部品の最適配置により、ライダー本体を900cc(108mm×105mm×96mm)に小型化
今後、さらなる小型化や垂直視野角の拡大を進め、2025年以降の実用化を目指す。
車載ライダーで先行車両や歩行者などの高精細な3次元画像を取得するには、レーザー(送信光)を対象物に照射し、その反射光(受信光)をより多く集めることが必要である。このため、光路に設置されるミラーの大型化やミラーの振れ角の拡張が求められる。
三菱電機は今回、送信光と受信光のそれぞれを水平・垂直の2軸で走査する業界最大級の電磁駆動式MEMSミラー(7mm×5mm)を開発した。面ひずみを抑制する機能を持たせた同社独自のミラー構造を適用し、ミラー自体の軽量化を図るとともに、より高い駆動力が得られる電磁方式MEMSを採用し、広い振れ角(水平:±15°、垂直:±3.4°)を実現した。
今後、MEMSの梁構造を改良することにより、さらに広い振れ角(垂直:±6.0°以上)を目指す。
なお、本MEMSミラーは、半導体加工技術によりシリコン基板上に多数個作成しており、量産性に優れている。また、モーターで駆動させる機械式に比べ、使用する部品点数が少なく、より高い耐久性が期待される。
電磁駆動式MEMSミラーと、光学部品(複数のレーザー光源、光検出器、レンズ等)の最適配置により光のケラレ※4 を抑制し、広い水平視野角(120°)を確保した光送受信機構を実現した。これにより、高精細な3次元画像を広範囲に取得できるため、本ライダーを搭載して走行した際、前方を走行する先行車両、対向車両、路上横断中の歩行者、信号機、標識等の路側物を適切に検知することが可能となる。
今後は、垂直視野角のさらなる拡大に向けた開発を進め、25°以上の垂直視野角を実現し、近距離の車両や歩行者の検知を目指す。
また、本ライダーは、信号処理回路基板、電源回路及び光送受信機構を最適配置することで、ライダー本体の小型化(900cc)を実現している。今後も小型化に向けた開発を進め、350cc以下の小型ライダーの実現を目指す。
※4 ライダー内部の部品配置の影響を受け、レーザー光が遮光されること