Cセグメントを牽引してきた王者ゴルフがついに第8世代に生まれ変わった。ひと目でゴルフとわかる外観は継承しているが、その中身はまるで別物だ。先進技術を新たに採用した新型ゴルフのの走りの魅力を詳細にお届けしよう。




REPORT◉塩見 智(SHIOMI Satoshi) 


PHOTO◉Volkswagen AG




※本記事は『GENROQ』2020年2月号の記事を再編集・再構成したものです。

 ⅦからⅧへ。VWゴルフのモデルチェンジは世界中の自動車メーカーの関心事だ。FFハッチバックのベンチマークとして、他社にとっては新学期に新しい教科書が配られるようなもの。しかしその教科書を作ってきた学校、すなわちVWが2015年にディーゼルスキャンダルを起こし、権威はかなり揺らいだ。それでも新しい教科書は出来上がった。




 新型は12年に登場したゴルフⅦが採用したエンジン横置き用モジュラープラットフォーム「MQB」を引き続き採用する。Ⅶは17年に改良が加えられ、ⅦPA、通称ゴルフ7.5へと進化したこともあって、登場から7年たった今でもハンドリング、乗り心地、効率のいずれもライバルと戦える力を保っている。




 引き続き採用といっても、何も変わっていないわけではない。上級グレードのフロントサブフレームをアルミ化するといったブラッシュアップが図られた。Ⅶ同様、廉価版のリヤサスはトーションビーム、豪華版のそれはマルチリンクだ。



8.25インチの大型の液晶パネルを採用したインフォテインメントシステムを採用。スイッチ類はタッチ式ボタンとスライダー操作がメインとなる。室内の快適さも相変わらず良好。

 サイズはさほど変わっていない。全長が26㎜伸び、全高が36㎜低くなった。低くなって前面投影面積が減った。またCd値も0.3から0.275へと向上した。低くなった分だけ重心が低そうに見えるが、いつものゴルフのプロポーションといっていい。太いCピラーが折れ曲がってボディになじんでいく伝統も守られた。灯火類にLEDを多用するなど新しさを演出しているが、外観については“デザインし過ぎ”を我慢したベストセラーカーらしいモデルチェンジだ。




 モデルチェンジをひと言で表現するなら「デジタライゼーション」だ。運転席まわりの環境は一変した。センターパネルの物理的なスイッチは激減し、カーナビ、オーディオ、エアコンなどの操作を8.25インチのスクリーンをタッチして行う。または「ハローフォルクスワーゲン」と呼びかけて音声認識システムを起動させ、会話するように各機能を呼び出すこともできる。




 アマゾンのAIアシスタント「アレクサ」も組み込まれるが、言語対応の問題から日本仕様には装備されない可能性が高い。近い将来、アップデートによってスマートフォンで施錠、解錠ができるようになり、キーは不要になる。eSIMが車載されており、常時クラウドとのデータ通信が可能なため、最新情報を入手し渋滞回避したり、ストリーミング音楽を楽しむことができる。あらかじめIDをクラウド上に登録し、シートポジションなど好みの設定を登録しておけば、レンタカーなどで別のゴルフに乗った場合にその設定を再現できるなど、シェアリング社会を見越した機能も備わった。




 本国仕様はVWが「CAR2X通信」と呼ぶ車々間通信、路車間通信システムを活用し、例えば先行車のブレーキ操作に連動して自車のブレーキランプを点灯させ、後続車の追突を防ぐといった機能も備わるが、通信規格の都合上、日本仕様は少なくとも導入と同時には備わらない。

2.0TDIと1.5ℓターボ+48V電源を組み合わせる1.5eTSIを導入予定。上級グレードはフロントサブフレームがアルミ化された。

 試乗したのは、日本仕様として予定されている1.5ℓガソリン直4ターボに48V電源システムとマイルドハイブリッドが組み合わせられたガソリンのeTSIと、2.0ℓディーゼル直4ターボのTDI。いずれも7速デュアルクラッチトランスミッションとの組み合わせ。eTSIは最大トルク50Nmのスタータージェネレーターモーターが備わり、加速をほんのりアシストするほか、減速時に回生に勤しむ。




 モーターが備わることで、アイドリングストップからほぼ振動ゼロで再始動する。(本国には)マイルドハイブリッドではない仕様もあるが、最高出力、最大トルクなどのピーク性能は同じ。1.4ℓガソリンターボの現行型に対し、明確に力強いわけではないが、給油の頻度は減るはずだ。




 ディーゼルは基本的に現行型と同じもの。低回転からトルクがもりもり立ち上がるのではなく、ディーゼルらしからぬスムーズさで高回転まで回り、それによってパワーを獲得するタイプだ。新型は排ガスに対しアドブルーを2度噴きかけるツインドージングシステムを採用し、排ガスをよりクリーンにしたという。




「ⅦとⅧではまるで違う!」と叫びたくなる激変ではなく、全方位的に少しずつよくなったモデルチェンジだ。現時点では今回見聞きしたデジタライゼーションのうちのどの程度が日本で使えるのかわからないため、日本導入後でないと良し悪しの判断は下せないが、肝心の日本導入は20年後半以降とまだ先。ゴルフファンにとってしばらく待ち遠しい期間が続く。“ゴルフの本質を味わいたい”というのであれば、Ⅷ導入を待たずに今Ⅶを買うという選択肢もありだ。

6対4可倒分割式のリヤシートを採用。後席を折り畳むと1237ℓの積載量を誇る。

〈SPECIFICATIONS〉フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI


■ボディサイズ:全長4284×全幅1789×全高1456㎜ 


ホイールベース:2636㎜ 


■車両重量:―㎏ 


■エンジン:直列3気筒DOHCターボ 


総排気量:1498㏄ 


最高出力:110kW(150㎰)/5000~6000rpm 


最大トルク:250Nm(25.5㎏m)/1500~3500rpm 


■トランスミッション:7速DCT 


■駆動方式:AWD 


■サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトーションビーム 


■パフォーマンス 


最高速度:224㎞/h 


0→100㎞/h加速:8.5秒
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【Volkswagen・Golf試乗記】