今回の新型ヤリスは4代目にあたるモデルだ。GA-Bベースのモデルの生産に約360億円を投資したフランス、バレンシエンヌ (Valenciennes)工場で引き続き生産される。
さて、その新型ヤリス欧州仕様のスペックを見てみよう。
日本仕様との違い、欧州仕様で明らかになった数字を追ってみよう。
欧州仕様の最高速度は175km/h。最終減速比の2.834は日本仕様と同じだから、日本仕様も最高速度は175km/hということになる(もちろん、公道で出したら違反になるが)。0-100km/h加速は、10.5秒と発表されている。
M15A-FXE型1.5ℓ直3エンジンのスペックは共通だ。日本仕様では公表されていなかった圧縮比が欧州仕様では「14.0」と発表されている。
注目は燃費性能だ。
日本仕様のモード燃費は
HYBRID X(FF)
WLTCモード:36.0km/ℓ
市街地モード 37.5km/ℓ
郊外モード 40.2km/ℓ
高速道路モード 33.4km/ℓ
である。これに対して欧州仕様のハイブリッドは
Combined(WLTP):3.7ℓ/100km(=27.03km/ℓ)
Combined(Corr.NEDC):2.9ℓ/100km(=34.48km/ℓ)
となっている。また、複合モード(Combined)以外のモードは未発表だ。
日本のWLTC(欧州仕様のWLTPも同義と思っていい)と欧州仕様の燃費データが違うのは、同じWLTCといっても日欧で採用しているモードが違うからだ。
日本はLow(市街地モード)/Middle(郊外モード)/High(高速道路モード)の3つのフェーズを採用するのに対して、欧州仕様は「Extra High」のフェーズも採用している。Extra Highは最高速度130km/h・平均速度92km/hもフェーズである。欧州仕様のWLTP複合燃費が27.03km/ℓとなっているのは、これが原因だろう。
つまり、ヤリス・ハイブリッドの超高速燃費は、かなり悪い数字なのだろう(というよりTHSⅡの数少ない弱点)。
次はCO2排出量だ。
日本仕様のWLTCのCO2排出量は64g/km。
これに対して欧州仕様は
NEDCモードで64g/km
WLTPモードで86g/km
と発表されている。こちらも日本仕様の64g/kmと欧州仕様の86g/kmとなっていて大きく数値が異なるが、その理由は上記の通りだろう。
注目は、NEDCモードでの64g/kmという数値だ。ご存知のとおり、95g/kmというCO2排出規制が施行される。メーカーは販売台数1台につき、95ユーロ/gの罰金を支払わなくてはならない。しかも、この数字は、WLTPモードの数字ではなくNEDCの数字が使われる。つまり、新型ヤリス・ハイブリッドの64g/kmは95g/kmより31gも少ない数値なのだ。自動車メーカーは、燃費の良い小型を多く販売すること全体の平均CO2排出量を下げ(できれば95g/km以下に)その余裕分で高価で大型(あるいはスポーツカー)、CO2排出量の多い(しかし儲かる)クルマを販売したいのだ。トヨタにとって、新型ヤリスが担う役割は、そのボディサイズよりもずっと大きいのである。