REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
スチール製ダイヤモンドフレームに空冷単気筒SOHC2バルブエンジンを搭載する車体構成は、「Gentleman(ジェントルマン)」を踏襲しますが、独創的なシルエットのフェアリングやセパレートハンドル、バーエンドミラーで独創的なカフェレーサースタイルとしています。
側面をレイヤー構造とするなど、手の込んだ形状としたフェアリング。リング状のLEDポジションランプを持つヘッドライトと絶妙なマッチングを見せ、第一印象では違和感がありましたが、見慣れていくうちにどんどんカッコイイと思えてくるではありませんか。不思議な魅力を持ったスタイルです。
ステンレス製スリップオン・メガホンサイレンサーは、GPX JAPANの母体となるツキギレーシングがプロデュースするオプションパーツ「TRエキゾーストシステム」です。レーシーなジェントルマンのスタイルをよりスポーティなものへと昇華させました。
アンダースポイラーやスネの内側で押さえ込む部分にある丸い形状のカバーなど、独創的なスタイルを決定づけるエクステリアパーツは、ベースとなる「ジェントルマン」譲りの装備。前後17インチの足まわりなども変更ありません。
ホイールはリムをブラック仕上げにしたクロススポーク仕様。トラディショナルな足もとにラジアルマウント式4ピストンキャリパーや倒立式フロントフォーク、ピレリ製のバイアスタイヤ「ANGEL CITY」がセットされ、新旧の要素が融合したレトロモダンなモデルであることを強調しています。
セパレートハンドルによって、上半身が前傾となるライディングポジション。車体はコンパクトですが、窮屈ではなくゆったりとした感覚もあります。ニーグリップがしやすいよう、大きなラバーが燃料タンクに貼られているのもありがたいところです。
シート高は800mmと低く、身長175cmの筆者だと両足カカトまで地面に届きます。車両重量は160kgで、公式スペックではカウルなしの「ジェントルマン」と変わりません。軽量・コンパクトで押し引きも容易い印象です。
上はベースモデルで、フラットバー装備のジェントルマン。セパレートハンドルのジェントルマン レーサー200の方が上半身は若干前傾となることがわかります。
ライディングポジションが前傾になったことで、身体をより積極的に動かし、シートやステップへの荷重にメリハリを付けてアグレシッブに操りたくなります。右手のアクセル操作も大胆になり速度域もアップしがちですが、それでもSOHC2バルブ単気筒の200ccエンジンは穏やかで、手に負えないほどの突出したパワーや過敏なスロットルレスポンスではないので、余裕を持ってコントロールできるのでした。
また、今回の試乗車はマフラーがツキギレーシング製のステンレス製スリップオン・メガホンサイレンサーに換装され、サウンドに迫力があります。アクセルをより大きく開けるのが楽しいのは、言うまでもありません。
高揚感もあって、エンジンをつい高回転までブン回してしまいますが、ビュンビュン回るわけでなく、すぐに応答性がよくシングルエンジンらしい鼓動を伴う低中速域を使って走ろうと考えが改まります。
乗車姿勢こそ車名のとおりレーサーですが、得意とするのはサーキットではなくストリート。ジェントルに走るのがマシンのキャラに合っているのは間違いありません。
ただし、身のこなしは軽く決してノンビリ走るだけではありません。ハンドリングは軽快で、前後サスペンションはしなやかに動いて荒れた路面も苦にしないのが持ち味。タイヤへの依存度が低く、身構えることなくスポーティに走れるのは、どんな操縦であれ行きたい方向に視線を送り車体を傾けさえすれば舵角がつき旋回してくれるからで、車体剛性に見合ったサスペンション、そしてエンジンの出力特性といったトータルバランスに優れるところも「ジェントルマン」そして「ジェントルマン レーサー200」の秀逸なところでしょう。
スペック的にズバ抜けた部分はありませんが、総合的な範囲内で上手くまとめ上げてストレスを感じるところが見つかりません。斬新で目を惹くスタイルで、走りも及第点。ラジアルマウントキャリパーやダブルディスクブレーキ、倒立フォークが備わりながらも税抜き40万円を切る車体価格を考えると、選択肢のひとつになるのは納得がいくところでしょう。
スモーク仕様のウインドシールドをフェアリングに装着し、防風効果を高めています。高速域で身を屈めれば、プロテクションを実感できます。
LED式リングライトを外周に配したハロゲン(12V35W)ヘッドライト。整流効果の高いフェアリングはエッジの効いた形状でスタイリッシュです。
セパレートハンドルのクリップ部は、肉抜きが施されたトップブリッジと一体化されています。グリップエンドに備わるミラーは、丸型でトラディショナルな形状です。
ジェントルマンではオフセットマウントされるラウンドタイプのLCDメーターですが、レーサーでは中央に配置。バックライトは好みに応じて変更可能で、スピード、エンジン回転数、燃料計、ギヤポジション、電圧計などを表示します。
スイッチボックスもジェントルマンと共通。右にハザードとセルスターターボタン、左にヘッドライトHI/LO切り換え、ウインカーL/R、ホーンのスイッチを備え、操作性は日本車に近い感覚です。
12Lの容量を確保するフューエルタンクは、ニーグリップがしやすいラバー製のタンクパッドを装着。給油キャップからシートにかけての装飾バンドなどもジェントルマンと共通です。
ジェントルマン同様、足まわりは軽快なハンドリングと高い旋回性を実現する前後17インチ。フロントフォークを倒立式とし、ブレーキキャリパーはラジアルマウントの4ピストンタイプと豪華としか言いようがありません。
そんな先進性を足もとでアピールしつつ、ブラックリムにレトロなクロススポーク仕様としているのも見逃せません。
オイルクーラーを標準装備する空冷単気筒SOHC2バルブエンジンは、トラディショナルなキャブレター仕様です。
クッション厚のあるダブルシートはレッドステッチが施され、タックロール調の座面といい側面のテクスチャーを変えている点など手の込んだ仕上がりを見せています。
シートはキー操作によって外すことができ、書類を入れるスペースがバッテリー横にわずかながらあります。シートレールには取り回し時に重宝するグリップが左右両方に溶接されています。
赤いスプリングのリアショックユニットはYSS製。フロントフォークもそうですが、ソフトなセッティングで路面追従性が重視されています。
ツキギレーシング製のTRエキゾーストシステム スリップオン メガホンサイレンサーを装着。ステンレス製で音量90db、重量1.6kgのスペックです。
シングルシート風のカバーを標準装備。テールライトや前後ウインカーはLED式を採用しました。
原動機種類 : 4ストローク
排気量 (cc) : 197
圧縮比 : 9.2 : 1
冷却方式 : 空冷(オイルクーラー)
ヘッドライト : LEDリング/ハロゲン12V35W
テールライト : LED
エンジン始動方式 : セルモーター
ブレーキシステム(前): ダブルディスク
ブレーキシステム(後): シングルディスク
フロントサスペンション : アップサイドダウン
リヤサスペンション : YSSシングルサス
タイヤ(前): ピレリ製 110/70-17
タイヤ(後): ピレリ製 140/70-17
全長(mm): 2,020
全幅(mm): 790
全高(mm): 1,160
地上高(mm):200
シート高(mm): 800
軸間距離(mm): 1,400
車両重量(kg): 160
カラーリング:レッド、ブラック