REPORT:森本太郎 PHOTO:平野 陽
新型カローラは、誰が見ても、ある程度はカッコ良いという評価になるでしょう。ただ、自動車ファンを長年やってきた自分が、まさか、数ある魅力的なクルマたちの中から、欲しいクルマ・オブ・ザ・イヤーに「カローラ」を選出する日が来ようとは、まさか考えもしませんでした。︎
それだけ、カローラの魅力が飛び抜けていたわけですが、評価したのは、圧倒的にエクステリアデザインであると最初に言っておきます。あくまでこれは、極めて個人的な理由で選ぶ「欲しいクルマ・オブ・ザ・イヤー」ですから。ボディサイズの制約の中で実現した、カローラセダンのスタイリングの圧倒的な塊感を評価したわけです。
まずは、エクステリアデザイン以外の部分に、先に触れておきましょう。カローラは、最近の他のトヨタ車同様、あらゆる部分が良くなっています。プリウス以降の低重心プラットフォームでまず、走りの質感がすこぶる高い。動的質感の高さは、スタイリング同様、旧型とは比べものにならないレベルです。ただその一方、やはりカローラはトヨタ車だなあと感じるのは、パワートレーンが特別に刺激的だったり、インテリアが官能的だったり、ということはない。そうした意味ではやはり、良く出来た「優等生」なんですね。ただ、単に良く出来た優等生なだけなら、HOTYにカローラを選ぶことはありません。そこに、理屈抜きのカッコ良さを感じてしまったんですね。
新型カローラは、欧州仕様と日本仕様では、ベースとなるプラットフォーム(TNGA GA-C)は共通ながら、ボディの寸法はまったく違います。ワゴンのデータで比べてみると、全長で155mm、全幅で45mmも日本仕様が小さいのです。だから、パッと見は同じデザインですが、良く見ると日本仕様はリヤドアがかなり短いし、オーバーハングもハッキリ言ってショートワゴン並みに短い。そして、そんなに大胆に寸法を詰めていても、スタイリング全体として、まったく破綻をきたしていません。
リヤガラスや、ワゴンのハッチゲートは日欧共通部品ですが、そこに向かっていくショルダーのラインやフェンダーのカーブと辻褄を合わせながら、日欧共通のパーツへと収束していくんですね。こんな面倒なことをするくらいなら、まったく違うスタイリングを自由につくる方が簡単に違いありません。そんなことを考えだすと、感心せずにはいられないのです。
あらためて、セダンのリヤクオーターまわりを見てください。奇をてらっているわけでもなく、こんなにもセダンらしさを守りながらも、凝縮感があって無駄がない。小さいのにしっかりと美しく、存在感のあるスタイリングはなかなか他にありません。ただそれだけで、個人的な今年のHOTYに選出するに十分でした。
最後に、日本仕様カローラセダンのスタイリングに最大限の賛辞を贈ったうえで、欧州仕様カローラの日本仕様との併売を提案して、HOTY原稿を締めましょう。現状のナローカローラは、日本には絶対に必要。その一方で、ワイドボディを許容するユーザーもいます。そこで、個人的には、日欧両仕様併売の検討をお願いしたいと感じます。日本で両方を走らせたらナローが見劣りするのでは? という懸念もあるでしょう。でもこの日本仕様の完成度なら、たとえワイドボディが横に並んだとしても、決して魅力があせることはないだろうと思います。
そして、たとえ欧州仕様の併売が叶わなくても、日本仕様カローラの走りの良さ、質感の高さ、燃費の良さやスポーティなスタイリングが褪せるものではありません。ぜひ一度、ご自身の目で見に行ってみることをお勧めします。