「BENLY e:(ベンリィ イー)」や「GYRO e:(ジャイロ イー)」の電動モデルを、2020年4月にリリースするホンダが、電動バイクの世界戦略や、国内での電動バイクの市場や動向について発表した。


PHOTO/REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)

最大の市場は中国!中国専用の電動モデルを発売し、電動バイクの普及&市場の開拓を推進中

人口13億人の中国は、世界最大の電動バイク市場。写真は上海の高層ビル群。

 第46回東京モーターショー2019では、「10年後の2030年には、四輪車の3分の2をEVモデルに」と語った、ホンダの代表取締役社長・八郷隆弘氏。2020年4月には、「BENLY e:(ベンリィ イー)」や「GYRO e:(ジャイロ イー)」をリリースするなど、バイクも着実に電動化が進められている。




 とはいえ、世界規模での電動バイク市場は、まだまだ小さいのが実情。現在、もっとも大きな市場は、電動バイクの保有台数が1350万台と言われる中国。ただし、そのうち1000万台は、免許が不要な自転車扱い。350万台がバイク扱いとなる。


 中国では近年、電動バイクの取り締まりが強化され、新しい交通法規を制定。現在は、「エレクトリックビークル(EB)」、「エレクトリックモペット(EM)」、「自転車」の3つにカテゴライズ。




 中国の電動バイク市場においてネックとなっているのが、電動バイク自体のパワー不足。多くのモデルは50ccクラス並の走りで、“実用車として最低限必要な”、100cc~125cc並の性能にはほど遠い。これが電動バイクがガソリン車ほど普及していない理由であるとホンダは分析する。


 その一方でホンダは、「パワーアップに関しては、技術的に問題なし」との見解。従来の弱点を克服したモデルをリリースすることで、今後一気に電動バイクが普及するのではないかと推測している。




 ホンダでは、すでにパワフルな中国専用のEBモデル、EMモデルを投入済み。電動バイクの普及推進とともに、市場の開拓を進めている。

「日本国内の法人向けの需要は増大。ただし個人での使用は、急速充電スタンド等のインフラ整備が必要」

実用スリーター「GYRO」の電動モデル「GYRO e:」。

 日本では、法人向けの電動バイク「BENLY e:(ベンリィ イー)」と「GYRO e:(ジャイロ イー)」を、2020年4月に発売することが決定。




 ホンダによれば、「法人向けの電動バイクの需要は、かなり増えている」とのこと。ホンダでは、郵便配達用バイクの電動化を目指すなど、現在も「日本郵便」と提携。実用化に向けた開発・実験を継続中だ。




 国内で電動バイクが普及しない大きな理由は、『充電の手間』と『航続距離』の2点。一言でいえば、ガソリン車並みの利便性に欠けるからだ。




 「BENLY e:(ベンリィ イー)」や「GYRO e:(ジャイロ イー)」は、“法人向け(仕事用向け)”ということで、この2点をクリアしているのがポイント。




 例えば、ピザ屋さんのデリバリーや郵便配達などの場合、配達の範囲が限られる。また、拠点となるお店や郵便局に行けば、充電されたバッテリーが準備されて、即交換が可能。個人での使用に比べ、バッテリー交換がしやすい環境が作りやすいのが特徴だ。




 ただし一般ユーザーの場合、上記のような環境を作るのが難しいのがネック。高価なバッテリーを何個も買うのは、予算的にも厳しいだろうし、オフィスや職場で充電することが無理な人もいるはず。


 ホンダでは、「急速充電スタンド等のインフラが整わないと、個人レベルでの電動バイクの普及は、まだ時間がかかるだろう」と予測している。

「BENLY e:」のバッテリーはシート下に収納するタイプ。
「BENLY e:」に搭載の着脱式バッテリー「Honda Mobile Power Pack」。


充電中をイメージしたEVモデルの量産電気自動車「Honda E(ホンダ・イー)」。電動バイクの普及には、急速充電スタンド等のインフラ整備が急がれる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 電動バイク最新事情|ホンダが二輪事業全体戦略を発表