2018年夏にソニッククラフティがリリースした「VESGRIDE」は、フュージョンを基礎にカスタマイズされたコンプリートバイクという、ちょっと異色の存在だ。パイプフレーム剥き出しの無骨なスタイルは目を惹くこと間違いなし! 今回はこの車両の走行性能について徹底CHECK!




PHOTO&REPORT:佐藤恭央(SATO Yasuo)

●VESGRIDEのショーアップイベントの模様 https://motor-fan.jp/article/10004590●ソニッククラフティが放つ独創的なカスタム https://motor-fan.jp/article/10004505
フレームカラーは、FJクルーザーの純正色であるサンドベージュ、カーキーグリーン、オレンジとジープ純正色のアンビル、そしてグロスブラックを加えた全5色から選べる。別途カラーオーダーも可。

 アドベンチャーモデルが人気を集めている昨今のバイク業界。それだけツーリングの需要が多いという証左だ。さて、スクーターにもアドベンチャーをコンセプトにした「オフロード系スクーター」が存在する。



VESGRIDE の元となっているフュージョン(FUSION)は、1986年4月にデビュー。スクエアを基調にした個性的なロングボディと、フリーウェイから引き継いだ水冷4スト244㏄のパワーユニットで快適な長距離走行を実現し、1997年まで11年間販売されたロングセラー。当時のビッグスクーターブームの影響もあって2003年にリバイバルを果たした。

 それは以前にもご紹介したソニッククラフティの「VESGRIDE」だ。ホンダ・フュージョンをベースに同店が手を加えた、オリジナルのカスタムコンプリート車なのだが、純正の面影は全くと言っていいほど残っておらず、タフなイメージに仕上げられている。


 コンプリート(完成車)ゆえに、同店にしてはカスタム度が抑え気味だが、それでも「何コレ~!?」と注目されることは請け合いだ!


 実際に製作現場を拝見したことがあるが、職人が全て分解してフレーム+αを加工しつつ、一つひとつのパーツを丁寧に組み上げていく工程はヘタなカスタムよりも手間掛かっている。このような状況のため、きっちりとメンテナンスされており、また面倒も見てもらえることからUSEDベースでも安心して手が出せるというものだ。

 今回は、同店の馴染みであり、普段使いからキャンプツーリングまでVESGRIDEを活用しているオーナーの車両をお借りして試乗した。トランクカーゴ(30ℓ)やサイドバッグなどもオーナーの私物だ。


 跨った印象はフェアリングをスポイルし、フレーム自体もシェイプされているため、かなりコンパクトに感じられた。縁石や壁などに擦ったりして外装を破損する心配もない。車幅のスリムさは渋滞時に大きなアドバンテージになることだろう。また、スクーターの外装の脱着は非常に面倒なので、整備がしやすいのも特筆点だ。





フラットなシートは肉厚で長時間の走行でもお尻が痛くなりにくい。長さはロング(写真:全長82cm)とショート(64cm)の2サイズ。シート表皮はヘビ柄やチェック柄など45種類を用意。

 アクセルを回すと低回転気味でクラッチミートし、トルク感を維持したままスゥーっと加速。変速域は広く取られているようで、80km/h位までフラットに伸びていく。パワフルとは言い難いが、パワーの出方に唐突感はなくアクセルに比例してグイグイ走ってくれるのは、長距離移動を難なくこなす、ステイヤー気質のフュージョンらしい駆動系&エンジン特性だ。


 このエンジンの位置が他のビッグスクーターと比べると若干後ろ側にある設計だが、そこまでリヤヘビーには感じない。素直なハンドリングを生かしながら走ることで、高速コーナリングもスムーズに決められる。

 その代わりに、サスペンションはやや存在感が希薄だがこれは許容範囲内。攻めるバイクではないのでそこはさほど気にはならない。なお今回は叶わなかったが、ブロックパターンに変更されたタイヤ(DURO:HF903)は、林道などのちょっとしたダートセクションでの活躍が期待できる。

8.5インチのスケートボードのデッキを縦にカットしてフットボードに! まさにストリートコミューターとしてのアイデンティティとなっている。滑り止めテープには摩耗や剥離しにくいMOBGRIP製をチョイス。足着きを向上するシェイプ加工も可(別途5500円)。

 フットペダル式のリヤブレーキは、ビジネスバイクの他にフリーウェイ、スペイシー、トレーシーなど主に80年代に登場した小型~中排気量スクーターに多く見られた構造だが、慣れればハンドレバーよりもラクチン! 車の感覚に近いのでバイクに不慣れなユーザーにとっては操作しやすいはず。


 当のブレーキユニットに関しては、リヤがドラム式というのが時代を感じさせるし、フロントディスクブレーキのローター径もφ190㎜と後年のビッグスクーターと比べれば大きくはないが、常識的な速度域なら制動力に不満が出ることはないだろう。


 フレームは切削・溶接加工されているけれど剛性感はたっぷりで不安は全くない。ビッグスクーターで最大級の1625㎜のロングホイールベースとゆとりのあるネック角が直進安定性をもたらし、扱いやすい出力特性も加わることで万人が安心して乗れる仕様となっている。

 さて、ここまでは多くがフュージョンにも共通するインプレであって、VESGRIDEにはもちろんデメリットも生ずる。主に外装に関することだが、フュージョンのフェアリングの整流は、80年代当時のレベルとしては中々に優れており、これがなくなっているのだから高速走行時の風当たりは推して知るべし。


 また、少々野暮ったい形状の純正の段付きシートも本来はお尻の据わりが良く、バックレストに腰をグっと押し当てて、ゆったりとしたフォワードポジションが取れるようになっている。もちろん、アイコンにもなっているトランクスペースもないので積載に関しては別途ボックスやバッグを用意する必要がある。

バーハンドルにベイツライトと、スクーターとは思えないハンドル周り! これにACEWELL製の多機能デジタルメーターをセットする。

 要するに、VESGRIDEはコンフォート(快適性)とトレードして、唯一無二の“ファッション性”を獲得しているというわけだ。これはかつてホンダの若手集団「Nプロジェクト」が提案したズーマーやPS250がそうであったように、それまでの利便性も重視したスクーターという存在を、ストリートカルチャーに落とし込んだ斬新なコンセプトでもある。


 誰もがスクーターに便利さだけを求めているわけではなく、VESGRIDEは自分流にアレンジして、オシャレ&ワイルドに使いこなしたいという、活用の幅を広げるものとなっているわけだ。


 ビッグスクーター=ラグジュアリーのイメージを逆手にとって、大胆にイメチェンを果たしたこのコンプリートマシンがアナタの琴線に触れたのなら、今すぐ問い合わせてみるべし!

サイドバックの装着をサポートする「サイドキャリア(2万4840円※片側)も用意。ヘビーツアラーも納得の装備だ。
こちらはスーパーカブ用のベトナムキャリアを加工装着した例。なおオプションでより屈強なセンターキャリア(1万7280円)をラインナップ。


こちらは「釣り」をモチーフにした横浜発のアパレルブランド「IRIE FISHING CLUB」が別注した“RUNGUNスタイル”。ロッドホルダーやタックルボックス用ステーなどを追加してフィッシャーマン向けの機能を持たせている。

VESGRIDE SPEC


サイズ:全長2130mm×全幅740mm×全高985mm


排気量:244cc


タイヤサイズ:フロント120/80-12/リヤ 120/90-10




●SHOP


Sonic-Crafty(ソニッククラフティ)


千葉県八街市八街は97-117


TEL 043-305-5123


http://www.sonic-crafty.com/





情報提供元: MotorFan
記事名:「 見た目で選ばれる! 個性派アドベンチャー系スクーター「VESGRIDE」って?