つまり、この事案において31km/hオーバーで検挙され、有罪判決が出たというのは一見、疑問を挟み込む余地のないところではあるが、31km/hオーバーというのは、まさに赤切符と青切符の境目ギリギリの数字。言ってみれば、警察にとっても被疑者にその辺を突っ込まれる可能性のある数字であることには間違いない。
事実、提訴したドライバーの主張も「レーダー式の速度測定は誤測定を生みやすい。だから、もしかしたら青切符だった可能性もあるのでは?」ということだった。確かに、例えば測定に2km/h程度の誤差があり、実速が29km/hオーバーであれば反則行為、つまり、反則金を払えば済むことになる。前科のつく非反則行為=犯罪とは、えらい違いなのだ。
では一体、Hシステムの計測精度はどんなものなのか、まずは、被告側と検察の主張を検証してみよう。
・被告側の主な主張
レーダー波は、ロードサイドの看板や建物、また後方を走る他の車両などに当たり、乱反射を起こす可能性があり、また街中を飛び交う電磁波ノイズの影響を受けやすい。よって、誤測定だった可能性があるのではないか?
2. Hシステムが生産中止、あるいは保守点検終了により続々と撤去されているのは信頼性に問題があるからなのでは?また、その測定性能に対し専門家による検証や意見が反映されていないということも社会通念上おかしい。
3.メーカー(三菱電機)の各種点検による正確性の証言は実際に点検した人の証言ではないから信頼性が薄い。
etc.
・検察側の証言(主に三菱電機の担当者による)
1. 他の電波の影響を受ける可能性はないことはないが、誤差が生じるにしてもマイナス側にしか出ない調整をしている(0.75%~0.16%)。また、看板や他車等に反射した電波は弱くなり、その電波を受信した場合はエラーとして測定を中止する仕組みになっている。
2.三菱電機がHシステムの生産を中止し保守点検を終了させたことと、測定性能の信頼性は無関係。事件当時も定時点検、定期点検など3種類の点検が行われており、いずれも測定値に問題は無し。
etc.
では、各々の証言、及び事実確認を経て、裁判官がどんな判断を下したのか、というと、簡単に言ってしまえば、被告人の主張に対してはいずれも抽象的であり、確固たる証拠が示されていないということ。それに対してメーカー側の証言は理にかなっており、また、ドップラー効果を利用した速度測定は何十年もの間、一般的に採用されこれといった問題が出ていない以上、正しい。よって被告人は有罪であり、6万円の罰金を科す、ということだったのだ。
もちろん、被告側から何か目新しい証拠でも出てこない以上、元々、勝ち目のない裁判ではあったのだが、それにしても青切符と赤切符の境目+1km/hで犯罪者になってしまうという事実が示されたことは、我々ドライバーにとって、決して他人事ではない。もしかしたら、北海道に限らず、特に、交通量の少ない道路に設置されているオービスの作動速度設定は同じようなものなのかもしれない。飛ばし屋さんは事前警告板を見つけたら、躊躇なくアクセルを緩めましょう!