TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
GRスーパースポーツは昨年の東京オートサロンで世界初公開され、同年6月のル・マン24時間でヨーロッパのファンに向けて公開されている。トヨタが初めて開発するハイパーカー(車両価格が日本円で億単位になる超高性能車)だ。GRブランドを掲げるTOYOTA GAZOO Racingの頂点に位置するモデルである。
ル・マン24時間サーキットで行なわれた記者会見に臨んだ友山茂樹TOYOTA GAZOO Racing Companyプレジデントに、GRスーパースポーツについて聞いた。
──GRスーパースポーツが公開されるのは昨年のル・マン以来となります。今回は実車の展示はなくビジュアルのみでの発表でしたが、これまでとどこが違うのでしょうか。
友山プレジデント「昨年のGRスーパースポーツは、(WEC参戦車両の)TS050ハイブリッドをベースに、ロードゴーイングバージョンを作るとこうなる、という姿を示しました。あの時点ではまだ、ハイパーカークラスのようなカテゴリーができるのではないか、という情報を頼りに作っていた。当時はWECの新しいレギュレーションに関して不透明だったのです。ところが今回、レギュレーションが決まりました。今回見せたシルエット(イメージ画像)は、レーシングバージョンに近いと考えていただいて結構です」
──ロードゴーイングバージョン(市販車)を先に開発して、それをレース仕様に仕立てるということでしょうか。
友山プレジデント「いいえ。これまでのトヨタのクルマづくりと違い、レースフィールドにあるクルマから、ロードゴーイングバージョンをつくります。しかも、なるべく近いものを出す。例えば衝突安全性など、法規要件は入れなければなりませんが、できるだけ近いものを出します。そう遠い未来の話ではなりません。今回、レギュレーションがはっきりしたので、それをスタディしながらチューニングし、2020年のWECに投入する。そこで得られたノウハウをロードゴーイングバージョンに入れ込んでいきます」
──開発はどこで行なっているのですか?
友山プレジデント「メインはTMG(ドイツ・ケルンにあるWEC参戦車両の開発および参戦チーム運営拠点)で行なっています。TMGにはトヨタの号口(量産車)のエンジニアもいます。エンジニアを育てる意味もあります」
──開発の進捗状況はいかがでしょうか。
友山プレジデント「(記者会見の)ビデオで見せたように、すでに富士スピードウェイでテストしています。レギュレーションが決まったのが本当にここ数日のことですので、その内容を研究し、よりコンペティティブなクルマにしていく作業が待っている。そういう意味で、開発はこれからといえます」
──アストンマーティンが、ヴァルキリーでハイパーカークラスに参戦すると発表しました。
友山プレジデント「強力なライバルですね。NA(自然吸気エンジン)のままくるのか、ハイブリッドでくるのかわかりませんが、次第にはっきりしてくるでしょう」
──TOYOTA GAZOO Racingのハイパーカーは、他社のハイパーカーとどこが違うのでしょう。他社のハイパーカーに対する優位性は何でしょうか。
友山プレジデント「実際にル・マンでレースをやっているクルマが公道で乗れること。我々がスーパーカーの領域に入っていくなかで、そこが一番コンペティティブな(競争力のある)要素だと思います。スーパーカーのビジネスとWEC、ル・マンは表裏一体であって、どちらも中止してはいけないと考えています」
──WECでハイパーカーが走り始めるのは2020年の秋。どれくらい先になるかわかりませんが、GRスーパースポーツの発売はそれより先になる。それまで、ファンの興味をつなぎ止めておけるようなモデルは出てくるのでしょうか。
友山プレジデント「出していきたいですね。サーキットはル・マン/WECに参戦している。ラリーフィールドではWRCに参戦して、かなり善戦しています。TOYOTA GAZOO Racingはレクサスのスポーツカーと何が違うんだと、よく聞かれます。GAZOO Racing(GR)はピュアスポーツで、レクサスはラグジュアリースポーツという位置づけです。GRはいまあるクルマをチューニングして持ち上げるのではなく、レースフィールドにあるクルマをロードゴーイングカーに落とし込んでいく格好です」
──これまでにないクルマの作り方になる。
友山プレジデント「GRスーパースポーツのようなフラッグシップがあり、その下にスポーツ専用車のようなクルマが出てくる。例えばGT4であったり、全日本ラリーに即参加できたりするようなモデルが考えられます。86でやっている草の根のイメージです。一所懸命働いて買うのがフェラーリではなく、GRのフラッグシップになってくれるとうれしいですね。ル・マンや富士スピードウェイのWECで走っているクルマが自分のものになると考えたら、興奮しませんか?」