中国のNEV規制を語るとき忘れてはならないのは、かつてイスラエルに存在したプロジェクト・ベタープレイス(以下=PBP)だ。同社は2007年10月に米・カリフォルニア州で発足した大規模なBEVインフラ化計画への参画をねらった米国企業だったが、創設者のシャイ・アガシCEO(最高経営責任者)はイスラエル国籍であり、自動車産業のない自国にもBEVを普及させることを考えていた(設立翌年に社名からプロジェクトが消えてベタープレイスとなったが、本稿ではBP=ブリティッシュ・ペトローレアムとの混同を避けるためオリジナル名を使用する)。しかし、この会社は志半ばで挫折した。
PBPはリチウムイオン電池(以下=LiB)を脱着式パックにして車両の床下に配置し、この電池パックをまるごと交換する「ドロップイン方式」を考案、電池パック交換ステーションを数多く建設すれば、充電待ちや電池切れのないBEV運用が可能になると考えた。高価なLiBだが、利用者は「使ったぶん」の料金を支払うというビジネスモデルだった。イスラエル政府がこれに賛同し、国家を挙げた事業となり、続いてノルウェーと米・ハワイ州もPBP案に乗った。
のちにPBPはルノー・日産のCEOだったカルロス・ゴーン氏の目にとまり、日産はPBPへの関与を深める。日産は経済産業省やタクシー業界にはたらきかけ、東京でドロップイン方式のBEVタクシー「デュアリス」を90 日間限定の実証実験という形で走らせた。BEV「リーフ」が発売される前年、2010年4月のことだった。(次ページへ続く)