では、その運用は、各都道府県警が独自の判断で行っているのか? というと、それは、まず、ないだろう。法律ではないにせよ、少なくとも最高裁の判例に基づいて運用されていたことを、一地方警察が独自にひっくりかえすとは考えにくい。当然、全国の警察を司る警察庁の方針に、各々、追従しているはずだ。
それにしても不思議なのは、警察はなぜ、司法当局の業務の軽減化を主目的として、1963年に制定された「交通反則通告制度」(反則金制度)のメリットを全否定するようなことを今になって始めたのかということ。例えば、今回の滋賀県警の例に倣えば、従来は、取り締まり現場で青切符を切れば業務終了(帰投後、ある程度の事務作業はあり)だった60件近い反則行為に対して、ナンバーから所有者を割り出し、出頭要請の通知を郵送し、出頭者ひとりひとりに反則行為を通告し、青切符を切るという業務をこなさなければならないのだ。まさか、「駐車違反金制度」の導入で、人手が余っているとでもいうのだろうか?
まっ、確かに、現時点では、全国的に見ても、導入された移動オービスの総数はたかがしれている。各都道府県に1~3台だ(やる気の愛知県は5台)。今回の発表でも、半年間(約180日)に実施された移動オービスによる取り締まりは113回と、1日1回にも満たない。天候の影響もあるだろうが、とにかく、毎日どこかで実施されているわけではないということがよくわかる。検挙人数もそれなりに抑制できるというものだ。
だが今後、その取り締まり効果がより確実なものとなれば、例えば、各所轄署毎に1台が配備されるなんてことになるかもしれない。参考までに、全国の所轄署の数は1,000を超えている。それでも今と同じ運用方法を貫くとすると、各所轄署に大量の違反者が押し寄せることになる。警察はどう対応するのか? まさか「速度違反金制度」の導入を視野に入れているのか? その動向から、当分、目が離せそうにない。