REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
PHOTO◉田村 弥(TAMURA Wataru)/市 健治(ICHI Kenji)/三橋仁明(MITSUHASHI Noriaki)N-RAK PHOTO AGENCY
※本記事は『GENROQ』2019年3月号の記事を再編集・再構成したものです。
ミッドマウントされたV型6気筒3.5ℓターボエンジンに、左右前輪をそれぞれ駆動する2基、そして後輪に1基の計3つの電気モーターを組み合わせた革新的なハイブリッドパワートレインをアルミスペースフレームボディに搭載して、2016年に登場した第2世代NSX。極めて高いパフォーマンスを発揮する一方で、その制御の複雑さ故にドライバーフレンドリーとは言えない面もあり、評価あるいは賛否は分かれた。
初の改良版となる“2019年モデル”の最大の狙いは、この評価を改めることにあった。タイヤを変更しアンチロールバーやブッシュ、ハブなどの剛性を高めたほか、複雑なハイブリッドシステムの制御を見直して、より自然、そして軽快なフットワークを目指している。
先にワインディングロードでは、良い意味で制御感が薄まり、従来に較べればずいぶん自然なドライビングで速さを引き出すことができるようになったのを確認している。ではサーキットではどうだろうか。
IDS(インテグレーテッド・ダイナミック・システム)を“TRACK”にセットしてコースへ入ると、まずは姿勢変化が抑えられ、乗り味がフラット感を増しているのを確認できた。今思えば、当初の17年モデルは前後左右への荷重移動の際に、極端に言えば“どっこいしょ”という感じがあった。それが新型では、実は1.8tもある車重をさらに意識させない軽快感を手にしている。
その恩恵はブレーキングからターンインまでの微妙なコントロールに効いていて、コカコーラ・コーナーなどは抜群に攻めやすくなった。ステアした方向に巻き込むように曲がっていくような感覚が薄れて、舵角なりにインに向いていくからリズムも流れもコントロールしやすい。相変わらずリヤの限界を超えた時の動きは速めだが、こうしたカウンターステアを要する場面でも、動きの唐突感はだいぶ薄らいでいる。
ただし、クルマやタイヤの状態が饒舌に伝わってくるかという点についてはまだ満足とは言えない。路面温度があまりに低かったのでそのせいもありそうだが、17年モデルに較べて姿勢変化が抑えられたこともあって尚のこと限界が掴みにくい気がした。プロならこれでいいが、アマチュアドライバーは、もっとクルマと密に対話したいのだ。
動力性能数値に変更はないが、やはり制御に手が入れられたことで、ドライバビリティにはさらに磨きがかかった。コーナー立ち上がりでのトルクのツキの良さと、その先の爆発的な伸びは快感。7500rpmまでしっかり回るだけでなく、回したくなるスーパースポーツらしいパワーユニットに仕上がっている。9速DCTの鋭い切れ味も快感である。
世間では相変わらずタイプR待望論が渦巻いているが、私としてはNSXは、この独創的なハイブリッドシステムをとことん磨き上げていくべきだと思う。だが、今回サーキットで乗ってみて、走りの手応えがよりソリッドに伝わるトラックエディション的なものは欲しくなった。現代版NSX タイプS、悪くないと思うのだが、どうだろう?
SPECIFICATIONS ホンダNSX
■ボディサイズ:全長4490×全幅1940×全高1215㎜ ホイールベース:2630㎜
■車両重量:1800㎏
■エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 総排気量:3492㏄ エンジン最高出力:373kW(507㎰)/6500~7500rpm エンジン最大トルク:550Nm(56.1㎏m)/2000~6000rpm モーター最高出力:Ⓕ27kW(37㎰)×2 Ⓡ35kW(48㎰) モーター最大トルク:Ⓕ73Nm(7.4㎏m)×2 Ⓡ148Nm(15.1㎏m)
■トランスミッション:9速DCT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡウイッシュボーン
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ245/35ZR19 Ⓡ305/30ZR20
■環境性能(JC08) 燃料消費率:12.4㎞/ℓ
■車両本体価格:2370万円