REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
PHOTO◉田村 弥(TAMURA Wataru)/三橋仁明(MITSUHASHI Noriaki)N-RAK PHOTO AGENCY
※本記事は『GENROQ』2019年3月号の記事を再編集・再構成したものです。
フロントエンジンの2+2、そしてリトラクタブルハードトップ・オープンという、フェラーリの新境地を切り拓いたパッケージをカリフォルニア/同Tから継承しながら、格段に美しさを増したデザインをまとって登場したポルトフィーノ。しかしながら注目すべきは見た目だけではない。何しろハードウエアは完全に新設計なのだ。
オールアルミ製のボディは車両重量を80㎏削り取る一方で静的捻れ剛性は35%、サスペンション取付け部については50%も向上させている。3.9ℓV型8気筒ツインターボエンジンはピストンもコンロッドも新設計され、ツインスクロールターボ内蔵のワンピース構造鋳造ターボマニホールドを採用。優れたレスポンスを実現すると同時に最高出力を600㎰の大台へと乗せている。
走り出せば、軽さと剛性感の違いは明らかだ。トップを開け放った状態でも加減速もコーナリングも一体感が格段に増しているし、その質も高まっているのを実感できる。しかも、最新のE-Diff3がそこに効果的なスパイスを加えていて、マネッティーノを標準のCOMFORTにした状態では、これが旋回性を重視した設定となり、とにかく良く曲がるのだ。
エンジンは低中速域でもアクセル操作に対するツキが素晴らしく良く、まさに意のままになるドライバビリティを味わえる。ウインドディフレクターを立てておけば風の巻き込みも抑えられ、エアコンも良く効くから、冬のワインディングロードをオープンのまま、敢えてゆったりと流していたら、本当に満ち足りた気分になった。
さらにペースを上げて、600㎰を堪能しようというならば、ルーフは閉じた方がいい。そうすると走りが明らかに変化する。全体の剛性感が高まり、ステアリングも中立位置での据わりが格段に明確になるのだ。
こうしておいてさらにアクセルを踏み込むと、ポルトフィーノはますます走りが活気づいてくる。エンジンは弾けるように反応して嬉々として高回転域へと向かっていく。それに従ってパワーはますます高まり、冬の空気を容易に切り裂いていく。ミッドシップの488のようにエキゾーストマニホールドの長さを取れないこともあり、低音が強調され突き抜け感に乏しい排気音に悪態をつきつつも、さらに右足に力が入る。
そんな風に本気で踏む時にはマネッティーノをSPORTに切り替えると、E-Diff3はトラクション重視、要するにLSDがしっかり効いた状態になり、600㎰のパワーを逃さずトラクションに変換してくれる。立ち上がりでの腰だめの姿勢での猛然としたダッシュはまさにハイパワーFRの歓びである。
デイリーユースできるし、そこに快感もあるけれど、そこだけには留まらない。然るべき舞台では、これぞフェラーリという強い刺激も堪能させてくれるポルトフィーノには、繰り返しになるがその見映えのするルックスも含めて、売れない理由はなさそうに思える。実際、納車待ちの列は相当な長さになっているということだが、きっとそれは十分に報われることになるはずだ。
SPECIFICATIONS
フェラーリ・ポルトフィーノ
■ボディサイズ:全長4586×全幅1938×全高1318㎜ ホイールベース:2670㎜
■車両重量:1664㎏
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:86.5×82㎜ 総排気量:3855㏄ 最高出力:441kW(600㎰)/7500rpm 最大トルク:760Nm(78.5㎏m)/3000~5250rpm
■トランスミッション:7速DCT
■駆動方式:RWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ245/35ZR20(8J) Ⓡ285/35ZR20(10J)
■パフォーマンス 最高速度:320㎞/h以上 0→100㎞/h加速:3.5秒
■環境性能(EU複合モード) 燃料消費率:11.7ℓ/100㎞ CO2排出量:267g/㎞
■車両本体価格:2530万円