HERE Technologiesは、国際的な新組織、Institute for Advanced Research in Artificial Intelligence(人工知能先端研究所、IARAI)をオーストリア、ウィーンに設立することを発表した。IARAIは、世界で初めて産業界規模で位置情報データを扱う機械学習の研究機関。

 独立系機関として運営されるIARAIは機械学習の研究を通し、自動運転車両のための位置認識の強化、自己修正型地図の高精度化、予測渋滞情報モデルの改善、フリートマネージメントや都市インフラの最適化など、Autonomous World(自律化する社会)の実現に必要な位置情報の更なる進化、深化を目的としている。HEREは、独自のデータセットと専門知識の提供を通して同機関と密接に協力していく。この画期的なイニシアチブにより、HEREは自社の持つデータを基に構築される事業中核分野において、テクノロジーの可能性を最大限に活用できるようになる。




 AIアルゴリズムは膨大な数のデータポイントから複雑なパターンを抽出し、その過程で自己修正やパターンの学習をおこなう。IARAIでは、こうしたアルゴリズムを位置データへ適用し、産業界や社会が抱える位置情報に関する喫緊の課題に取り組む。




 HEREは今後5年間に、IARAIの施設や研究職に対する資金など、同機関の発展を促すために2,500万ユーロを超える経済面での支援を提供する。現在は、約30名の研究チームを構成することに重点を置き、世界中から人材を募集している。




 IARAIは、人工知能のパイオニアであり、LSTM(long short-term memory)ニューラルネットワークの枠組みを考案したヨハネス・ケプラー大学(オーストリア、リンツ)のSepp Hochreiter博士と、データサイエンスの第一人者であるウィーン天然資源大学のDavid Kreil博士という、それぞれ機械学習とデータサイエンスの分野の著名な専門家によって指揮される。




 HEREの新最高技術責任者(CTO)、Peter Kurpick氏は次のように述べている。


「私たちにとってIARAIは、最先端のAI研究を通じ、自己修正マップや高度な自動化など次世代の位置情報サービスを構築するための第一歩です。当社には、独自のデータやマッピングに関する資産があります。IARAIでは、こうしたデータを活用したディープラーニングや大規模な実験に注力することで、ニューラルネットワークによる位置情報の再構築に対する理解を深め、次世代位置情報サービスの促進を目指します。Hochreiter博士とKreil博士の両名を迎え、こうしたテクノロジーが持つ可能性を引き出していけることを大変楽しみにしております」




 Hochreiter博士は次のように述べている。


「HEREが持つ独自のデータや知識が、開かれた学術研究のために提供されることで、実用的なAIモデルの構築に変革がもたらされるでしょう。HEREのオープンな企業姿勢は、IARAIのパートナーとして非常に魅力的です」




 Kreil博士は次のように述べている。


「IARAIとHEREの協業により、大きなスケールでは初めて、実世界の位置データが科学界に幅広く共有されます。学術研究と産業用途の両方でユニークな機会が創出されることを期待しています」

情報提供元: MotorFan
記事名:「 HERE:2,500万ユーロを超える資金を投じ、画期的なAI研究機関を設立