ヴァレオのDrive4Uについておさらいしておこう。レベル4──つまりある一定の条件においてシステムが一切の作動を担う──を狙う同車。そのキーデバイスの数々がヴァレオ自製の量産品であることが何よりの特長である。
試乗拠点からしばらくはレベル0、つまりドライバーによる運転で走行した。その後、あらかじめプログラムされたルートに差しかかると自動運転モードで走行する。ビデオでみたことのある「勝手にクルクル回るステアリング」が目の前で繰り広げられているのだ。
定められたルートに則ってDrive4Uは進む。左折する交差点が近くなると自動的にウインカーまで点滅、周囲をセンサ類でリアルタイムでキャプチャしながら器用に車線変更を済ませ、左折帯に進入。信号ももちろん把握していて自動停車、信号が青になれば走り出し、対向車が走ってくれば待機し、横断歩道に人がいれば停車する。「本当に何も操作していないんですか」と思わずドライバーに訊いてしまったくらい、人間が運転している状態と変わらない自然さが非常に印象的だ。
CESの期間ということもあり、ラスベガスの街は大渋滞。頻繁な発進停止、イライラするクルマの急な割り込みなど、自動運転車にとって厳しい条件だ。何もわざわざこんなシビアなコンディションでテストしなくてもいいんじゃないですかと訊いたら、「パリはもっとシビアです」と笑いながら答えてくれた。
しかし、今回の試乗は「あらかじめプログラムされたルートに沿って走る自動運転車」である。意地悪な見方をすれば、レベル4相当としてもある程度はシステムが不測の事態に見舞われる可能性は低くなっているだろう。とはいうものの、助手席に乗っていてもドライバーの負担軽減は手に取るようにわかり、ならば公共交通機関にこれらのシステムを搭載すれば都市部の交通環境の是正に大きく寄与するのではないかと感じた。
乗車前にはやや否定的だった自動運転車への印象は試乗後にあっけなく雲散霧消、「自分のクルマにも備わっていたらいいな」というように気持ちは切り替わっていた。なぜそのように思えたかと言えば、渋滞の中をノロノロ走っていたからというのが何よりの理由だろう。自分では運転したくない状況で、システムとセンサ類が確実に安全を確認しながら自車を目的地に向かって進めている、その効果にあらためて舌を巻いたのだ。
かといって完全自律運転であるレベル5のクルマが欲しいか、乗ってみたいかと問われれば……「いややっぱり運転席に乗っていたいです」と答えてしまそうなあたり、まだ頭がかたいのだろうか。