RSの歴史がアバントから始まったことからもおわかりのように、アウディスポーツにとってDセグメントワゴンは最も重要なモデルである。そのアイコンとも言えるRS 4 Avantがフルモデルチェンジを果たした。日本導入に先駆けて、本国ドイツで欧州仕様をテストドライブする。




TEXT◉大谷達也 (OTANI Tatsuya)


PHOTO◉Audi Sport GmbH


ポルシェが開発に携わったアウディ【Audi RS2を知っているか?】

しなやかさを備えた超弩級ステーションワゴン

 アウディRS4アバントは、A4ファミリーの頂点に君臨するスポーツモデルであると同時に、アウディが誇るRSモデルのなかでも最新世代に属する1台だ。




 その企画と開発を担当したのはご存じ、アウディスポーツGmbHだが、ここのところ彼らはRSモデルの方向性を微妙に変化させているように思える。




 もともとRSはドイツ語のRennsport、つまりはレーシングスポーツの意味で、サーキット走行にも耐えうるパフォーマンスを備えていることを意味する。ただし、アウディは単なるサーキット専用モデルに仕立てるのではなく、日常的にも使用できる快適性や実用性をRSモデルに与えた。そのことは、1994年に誕生した初のRSモデルであるRS2アバントが、排気量2.2ℓの直列5気筒エンジンから当時としては驚異的な315㎰を絞り出していながら、日常的に使用してもまったく苦にならない乗り心地と優れた室内スペースを備えていることからも明らかだった。




 一方で、時を経るにつれてエンジン技術はさらに進化し、RSモデルの中にも400㎰台、もしくは500㎰台のパワーを発揮するモデルが誕生。これにつれて足まわりの設定も徐々に硬くなっていった。もちろん、アウディスポーツは最新のサスペンションテクノロジーを惜しみなく投入して快適性の確保に努めたけれど、ここ数年のRSモデルの中には「日常的に使うならこれが限界か?」と思えるモデルがなきにしもあらずだった。

 では、そんなキャラクターがRS4アバントではどのように変化したのか?




 その解説に入る前に、最新のRS4アバントの概要を紹介しよう。




 ベースとなったのはアウディの人気モデルであるA4アバント。RS4アバントの外観も一瞥しただけではA4アバントとの違いに気づきにくいが、よくよくフロントグリルを見れば、クロームメッキされた水平なラインが幾重にも折り重なったA4とは異なり、RS4ではグロスブラックのハニカムパターンとされて精悍な表情を手に入れている。チンスポイラーも低くワイドなものに改められたほか、シングルフレームグリルの下端にはquattroの文字が誇らしげに描かれている。




 ボディサイドに目を移すと、前後ホイールをカバーするフェンダーが円筒形状に盛り上がっていることに気づく。そう、アウディ・ファンにとってはオリジナル・クワトロで採用


されたことで印象深いブリスター・フェンダーがこのRS4アバントにも引き継がれているのだ。A4アバントに対して、その張り出し量は30㎜になるという。ホイールサイズが標準で19インチになるのもRS4アバントの特徴だが、試乗車はオプションの20 インチを装着していた。




 リヤエンドはブラックのディフューザー・インサートによって引き締められているほか、エキゾーストパイプはRSモデル専用の楕円状のものに交換されている。




 しかし、RS4アバントの目玉はなんといってもそのエンジンだ。最新のV62.9ℓツインターボエンジンは450㎰と600Nmを発揮。最高出力こそV84.2ℓ自然吸気エンジンを積む現行型と同じだが、最大トルクは新型が170Nmも上回っている。この結果、0-100㎞/h加速はスーパースポーツカー並みの4.1秒でクリア。最高速度は250㎞/hと発表されているが、これはスピードリミッターによって規制された数値で、実力は280㎞/hを軽く上回ると予想される。なお、駆動系は他のRSモデルと共通のクワトロ=フルタイム4WDを採用。ギヤボックスは8速ティプトロニックを搭載する。




 まだ日本では発売されていないRS4アバントに、今回は本誌取材の同行車としてドイツ国内でドライブすることができた。ここに記すインプレッションは、したがってドイツ仕様がベースであることをご理解願いたい。

2.9TFSIはVバンク内にターボチャージャーを2基、バンクごとに設置する。配管によって右下側に備わるのが水冷式インタークーラー。


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新型RS 4 アバントは超高速クルーザーの理想型

全面液晶のバーチャルコックピットに加え、センターディスプレイも備える。写真の車両は、ステアリングとシフトノブにパ ーフォレイテッドレザー、シートはホワイトレザー、インパネデコレートパネルにはホワイトカーボンを備えた仕様。

 走り始めてすぐ感じるのが、エンジンノイズの低いこと。いや、スピードを上げていってもロードノイズが不当に高まることはなく、車内騒音は全般的に低い。




 それ以上に驚きだったのが乗り心地が快適なこと。よく知られている通り、アウディにはベースグレードのAモデル、そのハイパフォーマンス版で快適性にも配慮したSモデル、さらにその高性能版でサーキット走行も視野に収めたRSモデルという3つのラインで構成されるが、最新のRS4アバントの乗り心地は従来型のS4と同等か、やや上回ると思われるほど快適だった。




 私が冒頭で「RSモデルの方向性を微妙に変化させた」と指摘したのはこの点である。とにかくサスペンションの動き出しが滑らかで、ストローク量でいうと10〜20㎜ほどの領域が驚くほどしなやかに上下してくれるのだ。しかも、これを上回るストローク量ではダンパーが無駄な動きをしっかりと抑制してくれるので、超高速域での安定感はバツグン。今回はアウトバーンの速度無制限区間で190㎞/hまで試したが、ウエットコンディションだったにもかかわらずスタビリティは理想的でまったく不安を覚えなかった。クワトロの面目躍如といったところだ。




 450㎰と600Nmを生み出すV6エンジンの仕事振りも極めて模範的で、ターボラグを一切感じさせることなく、ボトムエンドからレッドゾーンまで淀みなくパワーを発揮する。しかもトルクのわき出し方が実にスムーズで扱いやすいのも美点のひとつ。これであれば、ハイパフォーマンスカーを操った経験のあまりないドライバーにも安心してステアリングを委ねられるだろう。




 ハニカムパターンのステッチが施されたシートはいかにもスポーティだが、上質なレザーに覆われていることもあって掛け心地は上々である。ワゴンボディのアバントゆえ、ラゲッジスペースは後席を立てた状態でも505ℓ、折り畳めば1510ℓまで拡大できるなど実用性も申し分ない。




 圧倒的な動力性能、優れた静粛性と快適性、そしてハイパフォーマンスカーの常識を打ち破るスペースユーティリティを誇るRS4アバントは、フルタイム4WDのクワトロを備えている点を含め、オールマイティな超高速クルーザーの理想型といえるだろう。



RS4 アバント(ドイツ仕様)


■寸法・重量


全長:4781㎜


全幅:1866㎜


全高:1404㎜


ホイールベース:2826㎜


トレッド 前:1580㎜


トレッド 後:1575㎜


車両重量:1715㎏


乗車定員:5名


■エンジン


形式:V型6気筒DOHCターボ


ボア×ストローク:84.5×86.0㎜


総排気量:2894㏄


圧縮比:10.0


最高出力:331kW[450㎰]/5700-6700rpm


最大トルク:600Nm/1900-5000rpm


燃料供給装置:筒内直接燃料噴射装置


使用燃料:プレミアム


燃料タンク:容量58ℓ


■トランスミッション


形式:8速AT


ギヤ比:1速5.000


2速:3.200


3速:2.143


4速:1.720


5速:1.313


6速:1.000


7速:0.823


8速:0.640


後退:3.478


最終減速比 後軸:3.204


■駆動方式:F・AWD


■ステアリング方式:─


■サスペンション


前:5リンク


後:5リンク


■ブレーキ


前:ベンチレーテッドディスク


後:ベンチレーテッドディスク


■タイヤサイズ


前:265/35R19


後:265/35R19


■JC08モード燃費:─


■価格:─

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ドイツ「ノイブルク &ネッカーズルム」


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情報提供元: MotorFan
記事名:「 日本上陸間近! アウディRS 4 Avantにドイツで試乗する