四輪版は1985年に登場した初代トゥディの商用版として「ハミング」なるサブネームを与えられて93年に登場。乗用版は二代目へとスイッチしていたが、初代が好評だったため、二代目と並行して販売するためにサブネーム付きの商用版というスタイルを採って併売されたというわけである。
「旅券」「確実な手段」などを意味する英語。二輪、四輪ともに北米市場のみで使用されたペットネームである。1980年から北米で販売されたスーパーカブC70には、パスポートのペットネームがつけられていた。
一方の四輪版は北米専用のSUVとして93年に登場。初代と二代目(97〜2002年)はいすゞ・ビッグホーンの北米仕様のOEM版で、18年のLAショーで登場した三代目はホンダの自社開発によるブランニューモデルだ。
海外でのみ使用されたペットネームの例としては、パスポートのほかにジャズ(次ページで紹介)が挙げられる。
「流れ」を意味する英語。リヤ2輪の個性的なトライクとして1981年に登場した。四輪版ストリームは2000年に登場し、二代目が14年まで生産された。
「刀(サーベル)」を意味する英語。二輪版はSabre、四輪版はSaberと綴りが異なるが、前者はイギリス流、後者はアメリカ流であり、意味は同じだ。発音はそれぞれの訛りの違いが多少はあるものの、日本語で表記すれば両方ともセイバーとなる。
「完全にする」という意味のIntegrateや、「不可欠な」という意味のIntegralからの造語。もともと二輪につけられ、後に四輪につけられた後、再び二輪につけられた希有な例だ。
まず、日本初のフェアリング付きモデル(それまで日本では法規上、禁止されていた)として1982年にCBX400Fインテグラが登場。続いて、同年にデビューしたVT250Fのフルカウル版として翌83年にVT250Fインテグラが登場する。いずれもインテグラはフェアリング付きモデルを意味するサブネームとしての扱いだった。
四輪版は1985年のクイントのフルモデルチェンジに伴い、「クイントインテグラ」として登場した。二代目からはクイントが外れ、インテグラを名乗る。天皇陛下が自ら運転される愛車としても有名だ。四代目が2006年まで生産された。
そして12年、NC700シリーズの1モデルとして再び二輪版インテグラがデビュー。14年に750ccまで排気量を拡大される変更を受けるなどして、16年まで販売された。
文字通り音楽用語の「ジャズ」を意味する英語。最初に四輪版が出て、二輪版が続き、再び四輪版が登場し、さらにまったく異なるモデルとして三たび四輪版に採用されるという、まさにホンダでしかあり得ない変遷を辿ったネーミングである。
1981年にデビューした初代シティの海外仕様のモデル名として82年に採用されたのが始まり。86年には50ccのクルーザーモデルという特異な二輪車のネーミングに採用された。
93年、今度はいすゞ・ミューのOEMモデルのネーミングとして登場し、2001年からはフィットの海外市場向けネーミングとして使われている。写真は14年(国内版フィットは13年)にデビューした三代目だが、初代シティから数えると四輪版としては五代目ということになる。
「打つ、リズミカルに叩く、打ち負かす」などを意味する英語。まるでクルマのような個性的なカウリングを持つスクーターとして1983年にデビューした。四輪版は軽自動車初のミッドシップスポーツカーとして91年に登場した。同じ名前を持つホンダの二輪と四輪のなかで、双方が最も似たテイストを持っていた例かも知れない。
地平線や水平線を意味する英語。二輪版は1983年にデビューしたCBX750をベースにシャフトドライブ化などによってツアラー色を強めたモデルとして翌84年に登場した。
四輪版はいすゞ・ビッグホーンのOEM供給を受け、94年から99年まで販売されている。
「今日」を意味する英語。四輪版が先に出た二例のうちのひとつ。シティにも通じる特徴的な1.5BOXシルエットの軽ハッチバックとして四輪版トゥディがデビューしたのは1985年。93年に二代目へとスイッチしたが、商用バン扱いのトゥディ ハミングは二代目と並行して販売され、二代目販売終了の98年まで続いた。
二輪版トゥデイは50ccスクーターとして2002年にデビュー。二代目がユーロ4排ガス規制の施行となる16年まで生産された。
クルマ好きたちよ、今こそバイクに乗るべし〈スズキSV650X試乗記〉
「剣」を意味するイタリア語。VT250のサブネームとして採用された。四輪版は、二代目ステップワゴンのスポーティグレードとして2003年にデビュー。ひとつのモデルとしてポジションを完全に確立し、五代目となる現行モデルにも名を連ねている。
「翡翠」を意味する英語。直列4気筒を搭載するスポーティながらも扱いやすい250ccモデルとして1991年に登場。四輪版はストリームの後継車として2015年にデビューした。
「適切な」「相応しい」という意味を持つ英語。二輪版は二代目ディオの派生車種として1997年に「フィット」のサブネームを与えられて登場。
四輪版は2001年にモノスペース的ユーティリティを備えたBセグメント・ハッチバックとして登場。現在は三代目モデルが販売されている。
主に「固形物を液体につける」「身を水に浸す」などの意味を持つ英語だが、間違いなくバスケットボールにおいてゴールリングに叩きつけるようにボールを入れる「ダンク(ショット)」に由来しているのだろう。
四輪版は1998年に登場した三代目ライフにターボチャージャーを追加した派生モデルとして、「ライフ ダンク」のネーミングで2000年に登場した。
二輪版は若者の通学や通勤にフォーカスした500ccスクーターとして14年に登場。19年現在も生産されている。
以上、二輪と四輪の両方に使われたネーミングは13種類にのぼった。このうち、二輪が先だったのが10種類、四輪が先だったのが3種類だった。ここにも「ホンダのルーツは二輪にあり」であることを感じさせられる。
現在、二輪と四輪の両方を作っているメーカーは、ホンダのほかにスズキとBMWが挙げられる。そしてKTMも少数ながら四輪を生産している。これらも含め、ホンダ以外の二輪四輪同名モデルについても追ってまとめてみたい。乞うご期待!