大きく開くリヤゲートと、トランクを持たない2BOXフォルムが基本的なスタイル。積載性や大きな荷物の出し入れがしやすい使いやすさと、狭い道での運転やパーキングも容易なパッケージは老若男女に受け入れられている。パワートレーンもハイブリッド、ディーゼル、モーター駆動、ダウンサイジングターボと、個性が際立つラインナップとなっている。
人気の「e-POWER」に4WDと「NISMO」を追加
2016年11月、月間販売台数ランキングにおいてノートが日産車として30年振りの首位となり、大いに話題となった。当時は、“まぐれ”のような感じがあったものの、ぜんぜんそんなことはなく、17年12月こそプリウスに譲ったものの、18年1月には再び首位に輝いた。そして17年には計4回も首位となり、年間でも2位となった。さらには18年も1月から3ヵ月連続で首位となったほか、上半期の販売台数でも首位となった。これは日産にとって実に48年振りの快挙だ。
登場から6年が経過したクルマが「e-POWER」のおかげでまさかこんなことになるとは、誰も思っていなかった。人気を受けて、日産では競合車に対して見劣りしていた先進安全支援システムを充実させたり、直近も「e-POWER」に4WDを追加するなど商品力の向上を図った。
そんなノートで注目すべきは、もともとガソリン車でも人気が高く、のちに「e-POWER」にも設定された「NISMO」だ。既存のNISMOロードカーと同様に赤のアクセントが印象的な内外装をはじめ、専用のボディ補強やサスペンションを採用し、専用VCMを搭載しているのが特徴で、予想をずっと上回る販売比率を誇るという。
一方、オーテックジャパンが手掛けるコンバージョンモデルの「AUTECH」もすでにラインナップされているほか、SUVテイストの「シーギヤ」も新たに加わった。
低価格&低燃費で走りは軽快 高剛性で回頭性が良いのも◎
かつては国産コンパクトのど真ん中商品だったマーチも、今では最大の売れ筋はノートに任せて、より小さく「軽自動車に毛が生えたような」スモールクラスとなった。
あえて日本最大の売れ筋から外れたこともあってか、日本仕様のマーチも国内生産ではなくタイから輸入される。今や新興国での販売が主任務となりつつあり、欧州では日本のマーチとはまったく異なる新型車が「マイクラ(かつてのマーチの欧州名)」を名乗るようになった。
デビューからすでに8年以上経過していることもあって、内外装の質感や収納などの使い勝手も、正直いって古さを隠せなくなっている。特製スポーツモデルの「NISMO」、「NISMO S」を例外とすれば、パワートレーンは全車1.3ℓ3気筒+CVTで、タイヤサイズも全車共通14インチ。特筆すべき新機軸は皆無に近いが、小さく軽いゆえに動力性能は軽快で、燃費もまずまず。小回り性や車両感覚の良さは、残すべき伝統として開発陣も意識しているところという。そして、価格も国産登録車では最も安い部類に入る。
……というわけで、今のマーチは良くも悪くも「普通に走れば良い」という割り切るべきゲタクルマなのである。ただ、土台となっているVプラットフォームは、よりボディサイズが大きなノートなども想定した堅牢設計のためか、この価格帯では意外なほど剛性感が高いのもなかなかの美点に思えてくる。
軽さを活かし加速性能は良好 操作性も良く扱いやすさは◎
ミラージュの全長は3795mmで、コンパクトカーの中でもボディが特に小さい。パッソやマーチのライバル車だ。2012年の発売時点には直列3気筒1.0ℓエンジンを搭載していたが、14年に1.2ℓを加え、15年には1.0ℓが廃止された。
1.2ℓエンジンは1500rpm付近でゴロゴロとしたノイズが気になる。動力性能も高くないが、車両重量が900kgと軽いから加速力に不足はない。全高も立体駐車場を使いやすい1505mmだから、重心高も適度で安定性は満足できる。
乗り心地に粗い印象はないが少し硬い。タイヤが路上を転がる時に発するノイズも大きめだ。
内装ではエアコンのスイッチが比較的高い位置に装着されて操作しやすい。前席は肩まわりのサポート性が不満だ。運転席に装着された着座位置の高さを調節する機能も、座面だけが上下に動く簡易型になる。背もたれまで含めて、シート全体を動かさないと座り心地が悪化する。
後席は頭上と足元の空間が狭いが、乗員の足が前席の下に収まりやすく、大人4名の乗車を妨げない。
緊急自動ブレーキは赤外線レーザーをセンサーとして使うタイプで、歩行者を検知できない。作動速度の上限も時速30kmと低い。
今では設計の古さが散見されるが、小さなボディは最小回転半径も4.6mに収まり、狭い裏道や駐車場で使いやすい。各部の機能が改善されると選ぶ価値が高まるだろう。
コンパクト唯一の本革シート
ゴルフバッグを横向き積載可
スイフトのひとつ上の車格という位置付けで、スズキが考える“理想のコンパクトハッチバック”を目指して開発されたバレーノは、最大の市場となるインドで生産され、各国にデリバリーされている。
そんなバレーノは、流麗かつエレガントなデザインを追求したロー&ワイドなプロポーションや印象的なフロントフェイス、力強く張り出したフェンダーなどを特徴とするスタイリングのユニークさも際立つ。
曲線と曲面で構成されたインテリアも独特の雰囲気を見せている。このクラスでは希少な本革シートが設定されているのも特徴的だ。
コンパクトなサイズながら5名の成人男性が座れる居住空間が確保されており、特に後席の膝前スペースはかなり広め。ラゲッジスペースもゴルフバッグを横向きに積めるほど広く、実用性に不満はない。
走りの味つけは至って現代的で、欧州での高速走行にも対応する引き締まった足まわりが与えられている。しっかりとした剛性感があり、操舵に対する応答遅れの小さいハンドリングも心地良い。「ブースタージェット」に6速ATが組み合わされる「XT」は、ターボならではの力強い加速を味わうことができ、パドルシフトも付く。一方の「デュアルジェット」を搭載する「XS」は、4気筒らしい上質なドライブフィールが持ち味となる。
このクラスでほかにはない雰囲気を持った、異彩を放つ一台である。