その中のイベントホールで開催されたのが、マツダ3の事前発表会だ。
しかし、はっきりいうならば、まだ解説を避けたい気分。まだまだしっかりと見ていない気がするのだ。
正直言えば、アンベールされた時のファーストインパクトが、少なかった。おそらくこれは自分たちもこれから考えなければならないポイントだ。例えば全く違う例だが、一時期ラジカセ(ラジオチューナー&カセットテープ内蔵のポータブルオーディオ)全盛のころはドンシャリといって、高音と低音を強調した音づくりをしていた。それは雑然とした店頭でも、インパクトのある音を出すためだ。
これまでのクルマのデザインには、そんなところがあったと思う。つまり凄いと思わせるインパクトをいかにつくり出すか、といったところにもある程度、焦点が置かれていたのではないだろうか。そんなインパクトに慣れてしまったのは、未だクリス・バングルさん時代のBMWシンドロームといっていいのかもしれない。
自分もどこかで、そのシンドロームに晒されてきたのだ。大抵、自分の場合、アンベールされるとディテールよりも見るのはプロポーション。つまりは全体のバランスだ。どっしりと足=タイヤは地についているか、腰=下半身を落ち着かせているか? そしてキャビンはどの位置に置かれているのか…。視界はどうか…。 そのあとにじっくりと見るのが、ボディまわりの造形と言ってもいいかもしれない。正確には造形とプロポーションはリンクしていてほしいので、分けては考えられないのだがざっくりとそんな見方をする。割とこれで起承転結が理解できたりする。
そんな中で、このマツダ3はどうしても最後まで見て、またそこから引き返しながら見直してしまう感じなのだ。
しかしながら面白いのはセダン、ハッチバックともにボディサイドの造形が異なること。キャラクターラインがないのでわかりにくいが、フロントフェンダーからして違う造形なのは、凄いな、やったな! と思う。
これによってハッチバックは前傾の、いかにも飛び出して行きそうなクラウチングスタイル、セダンはやや後ろに荷重の掛かった、止まっていても走って見えるスタイル(全体のプロポーションが前傾なのでそこまでいうのは大げさだが…)の印象をつくり出しているように思う。これをセダンとハッチで分けてやり抜いたのは、やっぱり凄い。
とはいえ自分の中でも、まだ何かすべてを理解していない模様。
それは明日、LAショー会場でじっくりと確かめて見たい。何れにしても、車のデザインはここから新しい時代が始まると思う。それだけに、マツダの示した意思をしっかりと受け止めたい。
カースタイリング 松永大演
ハッチバックとセダン。どちらも美しいのは? 新型マツダ3、スバル・インプレッサ、メルセデス・ベンツAクラス、アウディA3