なお、本ソリューションは、トヨタ自動車との高効率生産モデル構築に向けた協創*2の一環として、自動車製造を担うモデル工場での共同実証に先行適用している。現在、さまざまな現場のOT/ITデータを活用し、全体最適に向けた高速PDCAによる改善に取り組んでいる。
近年、製造業では、顧客ニーズの多様化やデジタル化の進展などにより、市場環境が急速に変化しており、デジタルツイン*3の考え方に基づいた高効率な生産システムの構築が注目されている。その実現には、生産現場の各工程に点在する多種多様な現場データを集約して工程全体をデジタル空間上に再現し、全体最適化視点によるデータ分析を継続的に試行することが重要だ。しかし、各工程に保管されているさまざまな設備稼働データや個別に構築している各種業務システムのデータを統合し分析するためには、データサイエンティストなどが有する高度な専門知識と膨大な時間が必要であり、工程全体のデータを分析して得られた予測をタイムリーに現場改善に反映する上で大きな課題となっていた。
本ソリューションは、さまざまな工程に個別に蓄積されているOT/ITデータの集約・整備を容易にし、AI分析やシミュレーションによる継続的な生産業務の改善を可能にするデータ活用基盤を提供する。
今回、日立は、自ら製造業として長年培ってきたノウハウと、データ間の「つながり」を記録するグラフデータベース*4の考え方を基に、生産業務と4M*5データから構成される独自のデータモデルを確立した。このデータモデルを用いて各工程の個別システムに蓄積されているOT/ITデータ間の関連付けを簡略化することで、生産工程全体にわたるさまざまな業務とデータの関係を視覚的に分かりやすく見える化する。また、生産工程の追加や変更が発生した場合にも同じデータモデルを用いて速やかにデータ連携を行うことが可能。これらにより、現場作業員や生産管理者などITの専門知識を有していない担当者でも必要なときに必要なデータを容易に抽出・統合することができるようになり、データ分析のPDCAサイクルを回す工数を大幅に削減する。例えば、ある工程で特定製品に不具合が発生した場合、その他の工程の材料や品質のデータ、生産計画データなどを抽出し分析することで、不具合の原因や影響範囲を迅速に特定するなど、工程全体の最適化に向けた取り組みを外部環境の変化に応じて継続的に行うことが可能だ。
*1 OT:Operational Technology(制御・運用技術)
*2 2017年10月4日ニュースリリース「トヨタと日立がIoTプラットフォームを活用した高効率生産モデル構築に向けて協創開始」
*3 工場や製品などに関わる物理世界の出来事を、そのままデジタル上にリアルタイムに再現するコンセプト。実際に製造する工場や出荷する製品をあたかも双子のように現実世界を模したシミュレーション空間を構築し、現実の工場の制御と管理を容易にする手法。
*4 モノとそのつながりを抽象化して表すグラフ構造を持つデータベース。ノード(人やモノ)を起点として、つながりをたどることで、条件にあったデータの検索が可能。
*5 4M:Man(人)、Machine(設備)、Material(材料)、Method(方法)