多くのレースシーンで培われた技術をロードカーに転用することを特徴とするアストンマーティンAMRシリーズ。しかし、その最新モデルとなる「DB11 AMR」は、他のAMRはもちろん、従来のDB11とも一線を画する。果たしてその内容とは? 絶妙な融合を見せているという。




REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

【動画】アストンマーティンDB11 AMR ☓ 大谷達也

変更はわずかながらも、その効果は絶大!

 ラピードとヴァンテージに続いて“AMR”の名が与えられた「アストン・マーティンDB11AMR」。しかし、AMRが意味する“Aston Martin Racing”とは裏腹に、DB11AMRは決してサーキット向きのマシンではなく、あくまでもストリートユースを念頭に置いて開発されたという。




 では、ベースとなったDB11に対してどのようなチューニングが施されたのかを、まずご説明しよう。




 ダンパーはピストンスピードの遅い領域のみ減衰率を高めるとともに、フロント・アンチロールバーの直径を0.5mm拡大。また、リヤサブフレームとボディを結ぶゴムブッシュにはDB11 V8でデビューしたのと同じ硬めの仕様を用いる。実は、足まわりの変更点はわずかにこれだけ。言い換えれば、ピストンスピードの速い領域の減衰率、リヤ・アンチロールバーのサイズ、タイヤの銘柄やサイズ、そして前後のサスペンション・スプリングはいずれも現行型のDB11とまったく変わらないことになる。

 こうしたチューニングの狙いを、チーフエンジニアのマット・ベイカーは次のように説明する。




「足まわりを少し硬めることで路面のフィーリングを確実にドライバーに伝えることを目指しました。また、ダンパーの減衰率を高めたのはコーナリング中にボディが斜め方向に動くのを抑える効果を狙ったものです(ダイアゴナル・ロールの抑制)。フロントのアンチロールバーを0.5mm太くするかどうかについては、乗り心地の悪化を恐れる声が社内にもありましたが、結果的には快適性を保ったまま力強いターンインが可能になりました」




ベイカーの言葉からは、ステアリングフィールやスタビリティの改善を目指しながらも、乗り心地はできるだけ損ないたくない開発陣の思いが伝わってくる。

 ドイツ・ニュルブルクリンク周辺の公道を舞台に行なわれた今回の国際試乗会では、DB11AMRがベイカーらの狙いどおりに仕上がっていることが確認できた。




 これまでのDB11よりも足まわりが硬くなっていることは、走り始めの直後から感じられた。いかにもダンピングレートの高いサスペンションらしく、ボディの動きがどっしりしているように思えるのだ。しかも、同じく減衰力を高めた効果なのだろう、ステアリングをわずかに切っただけでもノーズの向きが的確に反応するようになった。




 さらにステアリングを通じて感じられる路面フィールも申し分なく、タイヤが路面をしっかりと捉えている様子が克明に伝わってくる。これに伴って路面からのかすかな振動も感じられるようになったが、その度合いはごくわずか。スポーツカー好きのドライバーであれば、ステアリングフィールと接地感が格段に向上したことを真っ先に歓迎するはずだ。

 ただし、足まわりが硬くなったことで快適性が損なわれたとは思えない。それどころか、リヤブッシュの硬度が引き上げられたことでボディがしゃっきりとしたように感じられる。率直にいえば、足まわりに衝撃が加わった直後の振動の収束が素早くなったためボディ剛性が上がったと錯覚するくらい。おかげでダンピングレートが上がっても不快には感じられず、むしろクルマ全体のソリッド感が増して快適になったと思えるほどだ。




 いっぽう、コーナリングではスプリングレートを変更しなかった恩恵で、ブレーキングやコーナリングに伴う姿勢変化がほどよく感じられ、自分がいまタイヤの性能の何割くらいを使っているかが手に取るように把握できて心強い。ただし、適切なダンパー・チューニングによりサスペンションの沈み込んでいくスピードが絶妙にコントロールされており、ドライバーに不安感を与えない。前述したステアリングフィールと微舵応答の改善と相まって、クルマを操っている醍醐味を満喫しながら、安心してタイヤ・グリップの限界近くまで攻め込めるシャシーに仕上がったといえる。

 試乗の舞台をアウトバーンに移すと、それまでのダイナミックな印象がすーっと消え、オリジナルのDB11が有していた快適性がぐぐっとクローズアップされる。つまり、ワインディングロードではスポーツカー並みのダイレクト感を伝えるのに、ハイウェイではいかにもグランドツアラーらしい心地よさを味わえるのである




 もともとのDB11と比べれば、低速域のゆったり感と引き替えにスポーティな味わいを高めつつも、高速域では従来と同等の快適性を維持したように思う。このスポーツ性とグランドツアラー性の絶妙な融合こそ、DB11AMRの真骨頂なのだろう。



【SPECIFICATIONS】


アストンマーティン DB11 AMR


■ボディサイズ:全長4750×全幅1950×全高1290㎜ ホイールベース:2805㎜ 


■車両重量:1870㎏ 


■エンジン:V型12気筒DOHCツインターボ 


 総排気量:5204cc 


 最高出力:470kW(639ps)/6500rpm


 最大トルク:700Nm/1500rpm 


■トランスミッション:8速AT 


■駆動方式:RWD 


■ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン(電動式) 


■サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク 


■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク 


■タイヤサイズ:前255/40ZR20 後295/35ZR20 


■環境性能(EU複合) CO2排出量:265g/km 燃料消費料:11.4ℓ/100km 


■パフォーマンス 最高速度:334km/h 0→100km/h加速:3.7秒
ASTON MARTIN DB11 AMR

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情報提供元: MotorFan
記事名:「 アストンマーティンの最新モデル「DB11 AMR」は何が違うのか?《動画レポート有り》