地球レベルで環境問題が喫緊の課題となっている昨今、二酸化炭素排出量の削減が求められている。日本国内の現状を眺めてみれば、総排出量12億600万トンのうち運輸部門が占めるのは17.9%、量にして2億1500万トンに上る。さらにその内訳として、自家用乗用車が46.1%(9926万トン)、営業用貨物車が19.6%(4227万トン)、自家用貨物車が16.8%(3619万トン)という並びであり、自動車の影響が小さくないことが示された。
長期的な視野でこれまでの削減量を見てみれば、運輸部門の二酸化炭素排出量は確実に減っている。しかし中期目標として掲げる「2030年度までに2013年度比26%減」、長期目標としての「2050年度までに同80%減」を達成するためには、多くの策が求められる。
世界各国の状況を眺めても純粋なエンジン搭載車への締め付けには拍車がかかっていて、たとえば以下のような例が示された。
・イギリス:2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止(HEVを除く)
・フランス:2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止
・中国:ガソリン・ディーゼル車の生産・販売禁止の検討を表明
一方で、エンジンの最大効率化を図る各国の例も示された。
・ドイツ:ディーゼル車の改良とEVへの投資を同時に進める
・日本:世界で最も厳しいレベルの排ガス/燃費規制を実施
・北米:ガソリン・ディーゼル車の販売禁止計画はなし(カ州などはZEV規制を導入)
インドは、以前に2030年に国内販売をEVに限定する方針を示していたが撤回、「EV普及に向けた行動計画を準備」と、新たに発表している。
日本の方針の具体策として、「未来投資戦略2017」で定めたところによれば、2030年までに乗用車の新車販売に占める次世代自動車の割合を5〜7割とすることを目指す。次世代自動車とはHEV/PHEV、BEV、FCEV、クリーンディーゼル車、NGVの5種。ちなみに2017年度の実績では36.7%を数える。
では実際に国交省がどのような次世代自動車の普及促進に努めているか。現在の施策としては「燃費/排出ガス基準の策定による燃費向上」「税制優遇措置/補助制度の実施」「基準の国際調和」などが挙げられる。
「基準の策定」とは、先述のとおり世界で最も厳しいレベルの燃費/排出ガス基準。2006年に世界で初めて重量車の燃費基準を定め、2017年12月には次期基準を策定する。乗用車についても、2013年に世界最高水準の「2020年度乗用車燃費基準」を定めている。
排ガス基準についても同様。2016年には乗用車へWLTP(国際基準の排出ガス試験法)を導入を決定、2018年10月から適用を開始している。
「税制優遇措置/補助制度の実施」は、新車購入時の減免措置。先述の次世代自動車をはじめ、燃費/環境性能に優れる自動車について「エコカー減税」とする税制優遇がなされる。また、次世代自動車の導入にあたっても、一定額を補助することで購入を促す。
「基準の国際調和」とは、FCEVとBEVの基準に関する国際調和について、日本が主体となって基準策定を推進していくことを指す。基準を定めるにあたっては、各国いずれもが我田引水となるのは明白で、それを押し付けられてしまうために日本の技術が埋没、あるいは弱体化してしまうことを避けるための取り組みだ。
このほか、FCEV普及策として燃料電池バス/タクシーの導入支援および超小型モビリティの導入補助実績の例が示された。
日本カートラベル推進協会は、「クルマと旅する新たな“コト市場”の創造」を目的とする。
カートラベルとは車中泊を含む旅のことを指し、「時間的メリット」「旅先メリット」「移動空間メリット」の3つがあると同協会は訴える。
車中泊を可能とするクルマで移動することで、渋滞を避ける時間帯の出発が可能となる。宿泊先のチェックイン時間に縛られることも少なくなり、旅行のプラニングが拡大する。これが「時間的メリット」。
近年、宿泊先不足の問題が過熱しているが、車中泊が可能なクルマなら悩まされることもない。現地における移動手段にももちろん事欠かず、観光地以外への旅も楽しめる。これが「旅先の自由」だ。
車中で家族や仲間とコミュニケーションが図れるのはクルマの移動の醍醐味のひとつ。さらに、たとえばハンディキャッパーとの旅行の実現、ペットと一緒に出かけるといったプランも可能になる。これが「移動中の自由」である。
これらの自由度を含め、日本カートラベル推進協会はEVとカートラベルとの親和性の高さを訴える。車中泊を含めた移動では、居住性が求められる。当然、停泊中には電力供給があれば利便性が高まるのは必至で、野瀬氏によれば「もう火起こしではなくてIHで調理するんです」とおっしゃっていたのが印象的だ。BEVとすれば、走行感覚に先進性が得られるのもメリットのひとつだろう。
さらに野瀬氏は、災害時の給電機能についても力説する。カートラベルの普及に伴って車中泊が可能なEVが増えれば、避難所におけるプライバシー問題も含めて解決の方向性が見えてくる。
一方で、課題も示された。一例が、マナーの啓蒙だ。移動ではなく滞留になることが多いクルマの性質上、場所における振る舞い、利用者相互に対する気遣い、環境への影響など、考えるべき題材は少なくない。同協会ではマナー啓蒙委員会を発足させ、より良い利用の仕方を訴えていくという。