問題は歩行者保護のためのボンネット構造だが、ボンネットのポップアップ構造やエアバッグの装着も考えられる。
しかしここでは、それ以外の”隠し玉”の存在の可能性について解説してみたい。ジュネーブショーでコンセプトカーの代わりにレーシングカーを登場させたのは、びっくりだったが、その分、素の姿が丸見えとなったのも事実。そこで、あれっと思ったのは室内。写真を見て欲しいが、ペダルの下にカーボンのプレートがある。これは運転する際にかかとを載せる部分で、本来のフロアが剥ぎ取られているので、ここに床を作る必要があったようだ。 つまりかかとの下の部分は空間となっているのだ。この形状は助手席もほぼ同じで、左右にある程度の空間があることになる。 実は現在のGT-Rの床下には空間があり、ハイブリッドも視野に入れていたのとの話もある。また古い話になるが、初代のメルセデス・ベンツAクラスはやはり床面を二重構造としてEVへの対応も考慮していた。そのためにフロアが高かったのだ。そして軽自動車の三菱iは、当初よりEVも前提としていたことから床を二重構造として、のちにEVのi-MiEVを市販化している。 さらに言えば、最新のRRレイアウトのルノー・トゥインゴもフロアは高く、どうもRVやハイブリッド対応の二重底を持っている。不自然なほどにあまり大きく開かないボンネットも、その先に入るユニットを視野に入れていて、あまり荷物の入らない場所であることを印象付けておきたいのではないか、とも思ってしまうほど。
そして新型スープラだ。レーシングモデルで全高を1230mmとしながら、床下に空間を設けることが可能なのか? とも思われるが、写真で見えるフロアはペダルに対して明らかに低い。当初のコンセプトカーFT-1は、新型スープラとの酷似が伝えられるが、実際にはかなり異なるモデル。レクサスのLCでもそうだったが、トヨタはコンセプトのイメージを量産に生かす技に実に長けているといえる。そしてFT-1にはそうした床下の二重構造はないので、スープラ開発の本格稼動の段階で生まれたパッケージなのだろう。 しかし不思議なのは、この構造ではその空間がそれほど大きくないことと、単に蓋をするだけで室内との隔絶を図っているがそれで大丈夫なのだろうか、という点だ。現状のバッテリーであれば、安全対策と同時に冷却の必要性もあるものと思われるが、スープラのフロアにはその対策が想像できないのも事実。 ということは、実用化が2020年とも2022年とも言われる全固形電池を採用するということだろうか。この高性能ぶりは想像以上で、発熱もなく、数分でのフル充電が可能、充放電はキャパシターよりも早いという。バッテリーエリアもこれまで以上に、コンパクトにできる。 これら、現状ではまったく想像の域を超えないが、もはや内燃機関だけのためだけのプラットフォームを新規開発するというのは勿体ない。それでなくても現状では2シーター専用とも思えるプラットフォームだけに、より将来に期待できるものであることが望まれる。BMWと共同開発ということであれば、なおさらである。 是非ともこんな期待が、かなうといいのだが……。 (参考資料:Carstyling Vol.16, 3/26発売号)