自動運転技術が実際のクルマに搭載されてその機能を発揮するためには、まずは公道での実証実験が欠かせない。その公道実証実験の実施にあたっては、2016年5月に警察庁が『自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン』を示している。
これによれば、
「公道実証実験に用いる車両が道路運送車両の保安基準に適合していて、運転者となる者が実験車両の運転席に乗車して常に周囲や車両の状況をモニターし、緊急時には他人に危害を及ぼさないように安全を確保するために必要な操作を行うこと。そして道路交通法をはじめとする関係法令を遵守して走行すること」
さえクリアしていれば、公道での実証実験は可能だということがわかる。
また、公道実証実験の前に、さまざまな条件や事態を想定した走行を充分に行ない実験車両が自動走行システムを用いて安全に行動を走行できることを確認すべき、ともある。
自動車メーカーや大手部品メーカーなら自社のテストコースを使って確認のためのテストができるが、ベンチャーや研究機関などはそうはいかない。その場合を想定してガイドラインでも、JARIなどの施設で事前の確認をするべき、としている。
前置きが長くなってしまったが、2月から開始する「事前テストサービス」は、公道実証実験の前の、車両とテストドライバーの試験をJARIが行なう、というものだ。
テストを行なう場所は、茨城県つくばのJARI・つくば研究所内に開設された自動運転評価拠点・通称「Jtomw」だ。V2X市街地、多目的市街地、特異環境試験場からなる施設である。
テスト内容は、公道実証実験の先行事例を参考にして作られた基本レベルと応用レベルの2種類を用意している。先行事例は、金沢大学(菅沼准教授)の例を参考にしたという。
基本レベルは、教習所内の単体走行を想定したシステムの基本性能とドライバー対応力をテストするもので、応用試験はその応用版だ。さらに雨天や西日、濃霧などを模擬した特異環境テストを行なうこともできる。
基本テストの費用は20万円前後、応用テストは30万円程度になる。
このJARIの事前テストサービスは、あくまでも公道実証試験に向けたシステムとテストドライバーの現状を把握し、課題を確認すること。いわば、「システムとテストドライバーの実力テスト、公道実証実験前の模擬テスト」というわけだ。
そしてシステムの性能に課題があった場合、同一のテストを行なうことで性能向上の確認ができるというのがメリットだ。この事前テストで「合格」「不合格」が決まったり、自動運転性能の「お墨付き」が得られるわけではない。