ローダウンというと、リアショックのリンク自体を変更して車高を下げる方法が一般的だが、手軽ではあるがハンドリングに悪影響を与えてしまうことも少なくない。これに対して「R Low」は前後サスそのものを作り直して最適化しているので完成度が高い。
跨ってみると、スリムな車体と相まって足着き性は抜群に良い。たぶん、平均的な日本人サイズであれば問題なく両足が着くはずだ。車体も軽いので女性ライダーでも安心して取り回しもできると思う。
ハンドリングも自然だ。車体トータルでバランスを調整しているため、基本的には「RS」と同じようなフィーリングで走ることができる。キャスター角やトレール量などのディメンションがより安定性重視の方向性になっているためか、乗り味は穏やかだ。
ただし、「RS」と乗り比べてしまうと、フロントで20mm、リヤで30mm以上少ないホイールトラベルが故に路面追従性という点で不利は否めない。それは乗り心地にも言えることだが、足着き性の向上とはトレードオフの関係にあるからだ。その意味では今回のサーキット走行でしかもウェット路面という条件は酷だったかも。逆に言えば、サーキット走行用にセッティングされた「RS」は、より高性能なサスペンションやブレーキ性能の優位性もあってさすがにここでは走りやすかった。
ともあれ、新型スピードトリプルはよりパワフルに軽量化され、電子制御も進化するなど走りは確実にアップグレードされていた。その中で「R Low」はパフォーマンスをより身近に味わえるモデルとして、幅広いライダーにおすすめできる。
■諸元一覧■
●エンジン、トランスミッション
・タイプ:水冷DOHC12バルブ並列3気筒
・排気量:765cc
・ボア/ストローク:78mm / 53.4mm
・圧縮:12.65:1
・最高出力 118PS / 116bhp (87kW) @ 12000rpm
・最大トルク 77Nm @ 9400rpm
・システム マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射SAI付、電子制御スロットル
・エグゾーストシステム ステンレス製3-INTO-1エキゾーストシステム、ロータイプステンレス製シングルサイレンサー
・駆動方式 Oリングチェーン
・湿式多板、スリップアシストクラッチ
・トランスミッション 6-speed
●シャシー
・フレーム フロント:アルミニウムビームツインスパー、リヤ:2ピース高圧成型ダイキャスト
・スイングアーム:両持ち式、鋳造アルミニウム合金
・フロントホイール:3.5インチ x 17インチ、鋳造
・リヤホイール:5.5インチ x 17インチ、鋳造
・フロントタイヤ:120/70ZR17
・リヤタイヤ:180/55ZR17
・フロントサスペンション:Showa製41 mm径倒立式セパレートファンクション・フルアジャスタブル・ビッグピストンフォーク(SF-BPF)、フロントホイールトラベル95 mm。コンプレッションダンピング、リバウンドダンピング、プリロード調整可能。
・リアブレーキ:220 mm径固定式シングルディスク、Brembo製シングルピストンスライディングキャリパー、切り替え式ABS
・インストルメントディスプレイとファンクション:フルカラー5インチTFTディスプレイ
●寸法、重量
・ハンドルを含む横幅:735mm
・全高(ミラーを含まない):1060mm
・シート高:780mm
・ホイールベース:1410mm
・キャスターアングル:24.9º
・トレール:105.6mm
・車両重量:166kg
・燃料タンク容量:17.4l