スズキのスクーターシリーズとして既に定着しているアドレス。アドレス50は87年にデビュー。さらに91年登場のV100は走りのスプリンターぶりが評判になり根強い人気があった。今回のモデルは05年に燃料噴射式エンジンの搭載でデビューしたV125の後継モデル、それがアドレス125である。(REPORT:近田 茂 PHOTO:山田俊輔)

燃費に優れる最新鋭エンジンを搭載

2005年に登場したアドレスV125は、50ccクラスに匹敵するコンパクトなボディと、小回りに特化した10インチホイール、11.4psを誇るエンジン出力など、そのポテンシャルの高さから「通勤快速」の異名を持ったロングセラーモデルである。2010年には外観を一新し、アドレスV125Sへとモデルチェンジを果たしたがエンジンの基本構成は同一(最高出力は9.9ps)であった。




今回登場した新型アドレス125は、外装もエンジンも、車両名にも変更を加えたフルリニューアルモデルである。全体的に大人しい外観デザインで、斬新さや奇抜さこそ見あたらないが、ただ全体にわたって細々と熟成進化されている。




その筆頭がエンジンである。SEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)と呼ばれクリーンかつエコロジーな最新鋭エンジンを搭載。平成28年排出ガス規制にも対応し、燃費もWMTCモード値で51㎞/Lというなかなかの好データを誇る。

トルク重視のロングストローク設定

エンジン冷却は走行風を利用する強制空冷式、シリンダーヘッドもSOHC2 バルブ単気筒という、スクーターで多くみられる機構を採用している。52.5×57.4mmというボア・ストロークは、アドレスV125S(53.5×55.2mm )よりもさらにロングストローク型へとシフト。9.4ps という最高出力の発生回転数も旧型より500 rpm低い7000rpmで発生している。傾向としてエンジン回転を上げなくても十分なトルクを発揮してくれる。そんな出力特性は、実用上もアクセルの開度をセーブでき、燃費性能の向上と静かな走りに直結しているようだ。


動弁系にはフリクションの少ないローラーロッカーアームを採用。シリンダーやピストン及び同リングもフリクションロスの低減化を徹底。燃焼室も燃焼状況を効果的に促進するM-スキッシュを新開発。バルブ形状も独特の最適加工が施された。

フロントを12インチ化

フロントには125ccスクーターで主流の12インチホイールを採用。

もう一つの大きな変更点が、アドレスV125Sでは10インチだったフロントホイールを12インチに大径化したこと。これには走破性を高める狙いがある一方で、リヤは従来通り100/90-10 インチのまま。こちらは足着き性を確保するために据え置きとしている。なおシート高は745mm 。小柄な人でも両足はベッタリと地面を捉えることができるだろう。装備重量は109 ㎏。アドレスV125S(101kg)よりもやや増加傾向にあるが、取りまわしや走り始めてからの軽快感は一級。その扱いに手ごわさは感じられない。

鋭い発進~中速域の加速が市街地用途向き

スロットルを開けると適正にセットアップされたCVT がスムーズかつ強かな加速性能をみせつける。特に出だしが俊敏な印象で、60㎞/h当たりにかけて徐々に穏やかになる。クイックかつ軽快な乗り味は混雑した都市部の道路をチョコマカと機敏に走る上では好都合かもしれない。ただ、ツーリング用途となると操縦性にもっと落ち着きを求めたい気分にもなってくるが、さすがにこんなイレギュラーな使い方をする人は少ないだろう。

必要にして十分な機能性

ほぼフラットなダブルシートの座り心地は、座面も広くなりタンデムしやすくなっている。シート下のトランクスペースはフルフェイスヘルメットが余裕で入る。2分割式のフロントインナーラックは500mlが余裕で収まる奥深さで、使い勝手が良い。その他カバンホルダーやヘルメット2 個分のホルダーも標準で装備する。




またフラットなフロアボードは足元スペースが十分確保されている他、前方の立ち上がりに足を突っ張ることで、急ブレーキでも、上体の安定を保ちやすかった。また、抜群の足着き性は、信号待ちでもふらつくこともなく、安心感の高い乗り味に貢献している。


エンジンから足周りに至るまで、確かな進化を見せるアドレス125。単なる日常の足と侮れないものを感じた。

120km/hの指針式メーター、ODO計、燃料系と、きわめてシンプルなメーター周り。
リヤボックスの積載にも便利なキャリア。最大積載許容重量は6kg。


リヤショックは1本タイプ。泥はね防止用に、インナーフェンダーも採用している
左右分割式のフロント収納。その中央に、カバンホルダーを装備する。


左右を絞り込んだシートデザインは足着き性の良さに寄与。着座面が広く、タンデム時の乗り心地も快適。。
身長約170cmのライダーがまたがると、両かかとまでしっかり着く。


■アドレスV125諸元(221,400円)■


・型式:2BJ-DT11A


・全長 / 全幅 / 全高:1,900 mm / 685 mm / 1,135 mm


・軸間距離 / 最低地上高:1,285 mm / 120 mm


・シート高:745 mm


・装備重量 :109 kg


・燃料消費率:定地燃費値52.0 km/L(60km/h)2名乗車時/WMTCモード値51.0 km/L(クラス1)1名乗車時


・最小回転半径:2.0 m


・エンジン型式 / 弁方式:AF22・強制空冷・4サイクル・単気筒 / SOHC ・ 2バルブ


・総排気量:124 cm3


・最高出力:6.9 kW〈9.4 PS〉/ 7,000 rpm


・最大トルク:10 N・m〈1.0 kgf・m〉/ 6,000 rpm


・燃料供給装置:フューエルインジェクション


・始動方式:キック・セルフ併用式


・潤滑油容量:0.8 L


・燃料タンク容量:6.0 L


・クラッチ形式:乾式自動遠心シュータイプ


・変速機形式:Vベルト無段変速


・フレーム形式:アンダーボーン


・ブレーキ形式(前 / 後)油圧式シングルディスク / 機械式リーディングトレーリング


・タイヤサイズ(前/後):90/90-12 44J/100/90-10 56J


・乗車定員:2名


・排出ガス:基準平成28年国内排出ガス規制に対応

情報提供元: MotorFan
記事名:「 二代目”通勤快速”を襲名!? 「新型アドレス125」に試乗【スズキ】