レクサスのフラッグシップサルーン”LS”シリーズが一新され、遂に発売されることとなった。これまで通り正常進化しているのは言うまでもないが、しかし、”匠の技”へのこだわりは相当なレベルに達しているのは事実。事前に行われた撮影会を通じて、その一部をご覧いただきたい。




PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

ボリュームーでグラマーなエクステリア。

レクサスは、フラッグシップサルーンの「LS」シリーズを一新し、その販売を開始した。今回のモデルで5代目となる新型LSは、すでに好評を博しているクーペのLCと同一のGA-Lプラットフォームを採用、そのLCにも通じるクーペスタイルのセダンとして上品に仕立てられている。




実車を見て特に今回のLSで斬新だと思うのは、そのボリューム感。前後フェンダーをワイドに仕上げ、ドア付近は絞り込むというようにセダンとしては珍しく立体的な造形を実現している。フロントフェイスにしても最新レクサスの象徴でもあるスピンドルグリルが際立ち、これまでのLSシリーズよりも一段と迫力が増したと同時に、全体的にもシャープな印象を与えた。そのスピンドルグリルもハニカムメッシュで構成するなど実に凝った創りが見て取れる。また、ドアフレームとガラスの段差を極限まで抑えたフラッシュサーフェスウインドウを採用しているほか、ボディサイドのエッジを際立たせることで、真横のシルエットにもこだわりが見える。




その見た目の良さは、デザイン性のみならず、乗車性や居住性を向上させるためにパッケージングが見直されたのも注目だ。前作比で15㎜ほど車高は下げられてはいるものの、乗車性を確保するために後席の高さは同一としながら、ドライバーズシートはスポーティ性を求めたことから前作比で30㎜下げられているが、その差を解消するために、エアサスペンションに新機能の“乗降モード”を設定して乗り降りの際は車高が上がるように配慮されている。

パッケージング比較(前型比)

日本の技法が活かされた、これこそ”匠”の成せる技。

天然杢に最新レーザーカット技術で刻むことで実現した、レザーカットスペシャル。

インテリアに関しては、さらに魅力が増した。レクサスの開発陣は、“匠の技と先進技術の融合”を目指したというだけあり、そのこだわり方は日本ならではのセンスが活きている。ドアトリムには、天然杢にアート性を付加したというアートウッドや、L字型のプリーツ状の折り目を手作業でつけたハンドプリーツなどをはじめ、強化ガラスに加工を施したうえ、実現するにも極めて難しい切子調カットガラスを実現させるなど、日本らしい美意識を基にしたフィニッシュは、もはや世界に誇れるレベル。しかも表皮巻きのステアリングやシフトノブなども職人技によって作り込まれているというから徹底している。




全体のデザインも優れている。中でもダッシュボード周りのセンスは高く評価できるだろう。その立体的な造り込みもさることながら、ワイドに感じさせる演出は見事だ。それでいて運転席周辺は適度にタイト感を持たせるなど、他では見られないレクサスらしいラグジュアリーカーのあるべき姿を具現化しているように思える。ナビゲーションシステムも12.3インチワイドディスプレイを採用し、クラウドと車載機でのルート探索を実現させることによって、交通情報を基に、より短時間で目的地まで案内するなどサービス面でも充実している。

視認性の高いTFT液晶式メーターを装備。ドライブモードの変更もダッシュボード上部に配置するなど機能性も際立つ。
ディスプレイによって表示するデジタルインナーミラー。後席の乗員など、視界を遮るものがない後方の映像を映し出すことができる。


EXECUTIVEに採用される”ハンドプリーツ”と呼ばれるドアトリム。上質な生地が織り込まれ、上品かつ美しい内装を実現している。
フロントシートは28Wey調整式、エアブラター(空気袋)を備え、膨張させて身体にフィットさせる。足元のクッション長は可変機能付き。


後部座席の22Way調整式パワーシート。フロントシートの薄型化などにより、競合トップの1022㎜のレッグスペースを確保している。
オットマンには伸縮機能を装備。140㎜ほど伸ばすことが可能で、リクライニングも48°まで可倒する。


後部座席用のマルチオペレーションパネル。空調やオーディオ、シート機能など、様々な操作ができる。
マークレビンソン”リファレンス3Dサラウンドシステムを世界初採用。後部座席前のルーフ部にもスピーカーを配置することによってステージ感まで表現する。


後席に関しても同様で“人を包み込む連続性のある空間”を目指したというだけあり、ドアトリムやシートバックがシームレスにつながる構成としているのは印象的で好ましい。また、“クラストップレベルのレッグスペースによる開放感”と豪語するだけに快適性も高い。特に厚みのあるリヤシートのクッションは、内部にエアブラダー(空気袋)を備え、それを膨張させることで乗員の背後から大腿部まで押圧することによってリフレッシュ効果を図るなど、一度腰をかけると自然とリラックスしてしまうほど、安らげる機能と雰囲気に仕上げられている。電動オットマンの伸縮も140㎜もあるうえ、その調整も22Weyというから申し分ない。




もちろん、質感も良いのは言うまでもない。グレードにもよるが、ウッドマテリアルは、縞杢やウオールナット、アートウッドなどをはじめ、レーザーカット本杢など実に多彩にラインアップ。豊富なドアトリムと共に、その選択に悩むことになるオーナーも少なくないだろう。レザーに関しても先にも触れたように厚みがあって丈夫に仕立てられているだけでなく、その質感にも相当配慮しているのが伺えるほどだ。触った時の感触などは、欧州のハイエンドサルーンに引けを取らないほどの完成度を見せる。

最新の予防安全技術をフル装備。

LEXUS LS500h

当然ながらレクサスが誇る予防安全技術も万全だ。“統合安全コンセプト”に基づいた実績のある「Lexus Safety System +」でパッケージ化されたプリクラッシュセーフティ(歩行者注意喚起・アクティブ操舵回避支援)やレーンディパーチャーアラート、レーダークルーズコントロールといった各種機能の性能を向上させたうえに、先進の予防安全技術や高度運転支援技術「Lexus CoDrive」をパッケージ化。大型ヘッドアップディスプレイやマルチインフォメーションディスプレイによって支援状況の通知も直感的にわかりやすいようにしている。




中でも世界初となる大型カラーヘッドアップディスプレイに歩行者の存在する方向を表示し、歩行者注意喚起を行い、ブレーキ制御に加えて自動で操舵を制御するアクティブ操舵回避支援の装備は必見だろう。他の運転支援システムとともに可能な限りリスクを減らす技術が採用されている。

アクティブ操舵回避支援の作動イメージ。

グレードに悩まされるかもしれない。

LS500 ”F SPORT”のフロントグリルは、これまでの縦基調のメッシュを継承。ホイールも専用品、ブレーキも2インチアップされる。

ステアリングも”F SPORT”専用の本革仕様。クーペのLCと同様の太めのグリップとなる。
シートも”F SPORT”専用で、スエード調の人工皮革ウルトラスエードを採用。世界初のヒップサポートなどによるマルチサポートを実現している。


ラインアップは、基本的に「LS500」と「LS500h」の2モデルが用意される。前者のLS500は、レクサスとしては初の3.5ℓV型6気筒ツインターボエンジンを採用し、310ps&600Nmを発揮、これに10速ATを組み合わせる。一方のLS500hは、クーペのLC500hに採用されているハイブリッドシステムに有段ギアを組み合わせた独自の機構をもつパワートレインを採用。3.5ℓV型6気筒エンジンと走行用モーターの両方の出力を制御することによって、かつての5ℓV型8気筒ハイブリッド車を上回る駆動力を実現。エンジン出力は220ps&300Nm、モーターは180ps&300Nmを誇る。JC08モードにおける燃費性能もこのクラスとしては優秀で、14.4〜16.4km/ℓを記録する。いずれも2WDと4WDモデルを用意し、Fスポーツなど5グレードをラインアップする。




【車両本体価格(税込)】


LS500:980〜1540万円


LS500h:1120〜1680万円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 新型「レクサスLS」に見る”匠の技”