この高圧タンクの素材には、水素漏れや爆発を防ぐための耐圧強度が求められ、従来、金属やポリオレフィンが用いられている。しかし、金属は重量が重いことから、タンクを含めた質量当たりのエネルギーは低くなり、さらに、水素が金属を劣化させてしまいます。また、ポリオレフィンは、水素を比較的透過しやすい等の課題がある。
こうした課題の解決に向け、DSMでは金属よりも非常に軽く、ポリオレフィンよりも水素の保存性に優れたポリアミドをベースとする材料の開発に着手した。DSMではすでに圧縮天然ガス(CNG)用のタンク向け材料開発に成功しており、その際の素材、Akulon Fuel Lock(アクロン フューエルロック)とEcoPaXX(エコパックス)を採用した。 タンクのライナー(内張り材)は、炭化水素に対して高いバリア機能を発揮するAkulon Fuel Lockをブロー成形して製造しており、さらに、その外側を、一方向連続繊維補強材と熱可塑性樹脂のEcoPaXXで製造したテープで包み、補強している。 これにより、薄さを保ちながら金属と同等の耐圧強度を持ち、なおかつ、ポリオレフィンよりも水素の保存性に優れた高圧複合タンクの設計が可能になった。また、低い温度(-40°C)でも延性や強度を維持でき、さらに、素材のリサイクルが可能である。