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車内のオンライン化によって、より幅の拡がったエンタメ機能。それを味わい尽くすためにもサイバーナビの真骨頂であるキメ細かいサウンドチューニングを試してみたい。
20年以上もの歴史を俯瞰した中でも、特に2019年のモデルチェンジは大きなものだと思えた。まるでガラケーがスマホに移行するかのような感覚を抱く。
その核となるのが車内のオンライン化だ。ネットワークスティックの導入によってドコモの高速データ通信を定額で使い放題となったのだ。サイバーナビ自体をWi-Fiスポットとして捉えることができるほか、本体にYouTubeを直接視聴できる機能が標準装着されるので、エンタメ機能の幅は拡がった。
数年来、サイバーナビの商品企画と開発に携わり、今回、陣頭指揮を取ったのが同社の橋本兵樹氏だった。もともと電気系のエンジニアであり、既存のカーナビの概念を覆すほど、サウンド向上を筆頭とするエンタメ機能の拡充を追求してきた。
「NTTドコモさんの盤石な通信基盤を活用させていただくことで、日本中どこであってもオンライン化したエンタメ空間をご提供する。ここに大きな可能性を感じました。開発に関しては数多くの実走テストをしましたが、通信ストレスを感じることは皆無でした」
オンライン化という武器を手に入れたサイバーナビにとって、既存のストロングポイントがより活かされるようになった。それが優れた音楽再生能力である。高品質パーツを駆使した高級オーディオのような構造を持ち、音質調整も幅広くきめ細かい。
何しろパイオニアには音響を究めようとするエキスパートチューニングチームがいる。チューニンガーと呼ばれる彼らが理想像を追い求めたひとつの結果が、車種別専用エキスパートチューニングというもの。車種ごとに異なる音響設定をデータ化したものだ。SDカードからインストールするだけで設定できるという。
具体的に彼らはどんな調整をしているのか。数多くの国産車に対して最適解を導き出してきた同社の林真琴さんの協力を得て教えて頂くことができた。
今回、サイバーナビを搭載したデリカD:5を使って、簡易的にサウンドチューニングをしてくれたのだ。
最適化に必要不可欠なのは、車種ごとに異なる車室空間をしっかり把握すること。音を聴く人間(ドライバー)の耳と、設置される各スピーカーとの距離をメジャーで計測する。ホームオーディオと違って車内では、スピーカー類の中心点に人が居ることができず、必ず偏りが生じる。そこでリスナーに近いスピーカーの音に遅延をかける作業が必要となる。これがタイムアライメントと呼ばれるもの。
サイバーナビにはスピーカーまでの距離を簡単に入力できる項目が存在する。さらにそれぞれの音量を調節できるのがスピーカー出力レベルだ。こちらは単に距離だけの問題ではなく、シートなどの遮るものがあれば音の届き方は違ってくる。
そして周波数ごとに強弱を設けるイコライザー調節。さらにツイーターやサブウーファーの担当する周波数を調節するカットオフ(クロスオーバー)やツイーターゲインなど。この辺りまでいくとプロの領域になるものの、基本的な意味合いを理解した上でDIYで挑むなら「自分の好きな音楽が気持ちよく聴こえるか」という感覚的セッティングでも充分だ。今では簡易的に周波数特性を測定できるアプリも存在する。
林さんは鮮やかな所作で簡易的な測定器と耳を使って調整していく。その様子はまさにプロフェッショナル。まるでダッシュボードの奥にコンサートホールが拡がっていて、直に演奏しているかのような臨場感を、ごく短時間で構築してくれた。
なお、車種別専用エキスパートチューニングの開発にあたっては、熟練チューニンガーの耳と専用測定機器を駆使して、数日間ずっと車内で設定と向き合って作ってきたという。
こうした職人たちが描いた理想像を手に入れるのは大きな価値がある。たとえ設定のないクルマに乗っていたとしても、奥深きサウンドチューニングの入り口だけでも自分で挑んでみたくなった。
メジャーがあれば誰でもできる。【タイムアライメント】
音の速度とともに音量にも注目【スピーカー出力レベル】
周波数ごとに事細かく調整できる【イコライザー】
サブウーファーとの共存共栄を図る
問:パイオニアカスタマーサポートセンター 0120 -944 -111/0570-037-600
https://carrozzeria.jp
**スタイルワゴン2020年9月号より**
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