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「オレンジライナーえひめ」は、伊予鉄バス(本社:愛媛県松山市、当時は伊予鉄道)と西東京バス(本社:東京都八王子市、当時は京王帝都電鉄)が1990(平成2)年5月に共同で運行を開始し、2020(令和2)年で運行30周年を迎える老舗の夜行高速バスです。両社とも高速バスの運行に際しては実績があり、安心して利用できます。
今回乗車したのは、伊予鉄バス担当便。愛媛県の特産「みかん」をイメージする鮮やかなカラーリングが特徴で、遠くからでも目立ちます。
早速、車内に入ってみましょう。
車内は、幅広の3列シートが並びます。茶系のシートモケットと木目調の床、そして最後部まで一人掛けになっているのが特長で、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。通路カーテンは窓側座席に設置されています。
シートは、夜行タイプの1人掛けシートを採用。
レッグレストとフットレスト(足置き台)も完備しています。フットレストは、靴を脱いで使用します。
肘掛け下のレバーを引きながら、シートをフルに倒してみます。かなり深く倒れます。
各座席には、毛布、スリッパが備えられています。スリッパは使い捨てタイプで持ち帰ることができますが、毛布は車内装備品のため持ち帰ることができませんのでご注意を。
携帯電話やスマートフォンの充電に便利なコンセントは、肘掛け下に設置されています。
車内中央部にはトイレを完備。途中、2回の休憩停車がありますが、いざという時に嬉しい設備です。
また、写真はありませんが、トイレ上部のおしぼりボックスの中には使い捨ておしぼりが入っており、セルフサービスで利用することができます
車内では、Wi-Fiサービスも提供されています。設定方法は、備え付けのリーフレットに記されており、1回の接続につき60分、1日5回まで利用できます。
トランクに荷物を預けると、写真の「荷物引換券」が乗務員から渡されます。降車の際に必要となりますので、無くさないようにしましょう。
以上、伊予鉄バス「オレンジライナーえひめ」の車内をひと通り紹介しましたが、夜行バスに必要な装備はひと通り揃っており、12時間以上の道のりを快適に過ごせられるようになっています。
今回は東京行きの「オレンジライナーえひめ」に乗車します。旅の始まりは、JR八幡浜駅前の伊予鉄南予バス本社営業所から。八幡浜地区を運行する伊予鉄南予バスのほか、東京方面、名古屋、大阪梅田へ向かう高速バスや松山~八幡浜・三崎間特急バスも発着しており、同社の主要バスターミナルとしても機能しています。
営業所の1階には待合室があり、乗車券カウンターのほか、椅子やテレビなどを完備。雨風を気にすることなくバスを待つことができます。
待合室に置かれていた伊予鉄バスの高速バスポケット時刻表です。全路線分を集めて横に並べると、伊予鉄グループの社名ロゴができあがるという面白い仕掛けになっていました。
愛媛県八幡浜市は、古くから四国の西の玄関口、西四国の交流・交易活動の拠点として発展してきた場所。八幡浜と九州大分(別府・臼杵)を結ぶフェリーも多数運行されており、このフェリーと夜行バス「オレンジライナーえひめ」を使うことで、1回の乗り継ぎで首都圏~大分間を移動することができるのです。
時間はかかりますが、とにかく安く移動したいという方は検討されてみてはいかがでしょうか。
新宿・横浜行き「オレンジライナーえひめ」の八幡浜発車時刻は17:20。あとで調べたところ、新宿・横浜行き「オレンジライナーえひめ」は、日本で一番早い時間に発車する夜行バスとのことで、日が長い季節であれば、夕暮れの車窓も楽しめそうです。
17:20定刻に八幡浜を発車した「オレンジライナーえひめ」は、国道197号を東へ。西大洲(伊予鉄南予バス大洲営業所)、大洲本町にて乗車扱いを行なったあと、大洲インターから松山自動車道に入ります。内子五十崎インターでいったん松山自動車道を降り、内子で乗車扱いを行なったバスは、再度松山自動車道へ。夕暮れの瀬戸内の風景を眺めながら、松山市内へと向かいます。
18:30過ぎに松山インターを通過したバスは、帰宅ラッシュで渋滞する中を道後温泉駅へと向かいます。
道後温泉は、日本最古の温泉としても知られ、その歴史は日本国内でもひときわ古い3000年もの歴史を持つといわれています。現在は、3か所の共同湯(「本館」「椿の湯」「別館 飛鳥乃湯泉」)があり、いずれの場所もバスのりば(道後温泉駅)から徒歩圏内にあります。
もちろん、温泉に浸かってから「オレンジライナーえひめ」に乗車することも可能です。
道後温泉駅で乗車扱いを行なったバスは、松山室町営業所へ。ここでは乗務員交代も行われ、八幡浜からここまで乗務を担当した伊予鉄南予バスの乗務員(1名)から、この先新宿・横浜まで乗務を担当する伊予鉄バスの乗務員(2名)に交代します。
松山室町営業所を発車したバスは、5分程で松山市駅に到着。到着後、早速乗車改札が始まります。「オレンジライナーえひめ」も、ここからの乗車が一番多いそうです。
松山市駅は、伊予鉄道の路面電車と郊外電車および伊予鉄バスの路線バスと高速バスが発着するターミナル駅で、百貨店「いよてつ高島屋」も併設しています。
新宿・横浜行き「オレンジライナーえひめ」は、「2番のりば」から発車します。のりば付近には待合室を完備するほか、隣にはコンビニもあるので便利です。
ここで注意したいのが、松山市駅とJR松山駅は場所が違うこと。なおかつ、距離も離れていますので、乗車の際は事前に場所を確認しておきましょう。
19:45に松山市駅を発車したバスは、松山市一の繁華街である大街道と、郊外の余戸南インター、松山インター口で乗車扱いを行い、松山インターから三度松山自動車道に入ります。
川内インターで最後の乗車扱いが終わったところで、乗務員による運行経路、注意事項の案内が行われ、その後に車内モニターを使って車内設備の案内が行われます。
この日は、ゴールデンウィーク連休前の平日ということもあってか、5割弱の乗車率。聞くところによると、週末や繁忙期には満席になることも少なくないそうです。
混雑期は年齢層も幅広いとのことですが、車内を見回してみると、若い方の利用が目立ちます。中には、リクルートスーツを着た学生と思わしき方の利用も見受けられました。到着後、会社説明会や採用選考会に参加するのでしょうか。
「オレンジライナーえひめ」の途中休憩は、消灯前と起床後の2回のみとなっています。
消灯前の休憩場所は、川内インターから20分ほど走行した愛媛県の松山自動車道石鎚山サービスエリア。こちらでは20:50から15分間停車しました。
トイレや売店のほか、フードコートも完備しているサービスエリアで、売店ではみやげ物の購入も可能ですが、停車時間が15分と短いですので、トイレや洗顔、買い物は早めに済ませましょう。
石鎚山サービスエリアに停車する「オレンジライナーえひめ」です。
石鎚山サービスエリア発車後、30分ほどでバス車内は消灯されます。消灯後は数か所のサービスエリアにて乗務員交代と車両点検のために停車しますが、乗客は下車することができませんのでご注意を。
起床後の休憩は、消灯後7時間30分ほど経過した神奈川県の東名高速道路足柄サービスエリアにて実施。定刻では5:15頃に到着します。敷地が広く、売店やコンビニ、フードコートなども充実していることで有名なサービスエリアですが、こちらも停車時間は15分と短いですので、洗顔や買い物は早めに済ませておきましょう。
夜明け前のサービスエリアに停車する「オレンジライナーえひめ」です。
足柄サービスエリアを発車したバスは、東名高速道路を東京へ向けてひた走ります。
横浜町田インターまで走行したあとは、保土ヶ谷バイパスと横浜新道を経由し、横浜駅西口へ。定刻では6:40に到着しますが、この日は保土ヶ谷バイパスでの渋滞の影響で、定刻5分遅れで到着しました。京急線、相鉄線、横浜市営地下鉄への乗り換えは、こちらでの下車が便利です。
その後、首都高速道路横羽線~同羽田線~同都心環状線を経由し、1時間程で新宿へ。終点のバスタ新宿には、定刻7分遅れの7:52に到着しました。
JR各線、京王線、小田急線、都営地下鉄新宿線、同大江戸線、東京メトロ副都心線などへの乗り換えは、こちらでの下車が便利です。
東京~松山間をJRで乗り継ぎ(岡山で乗り換え)移動する場合、片道普通運賃と新幹線特急料金(「のぞみ」指定席利用)、在来線特急料金の合計金額は19,260円となります。(2019年5月現在 格安移動調べ)
また、松山~東京間を飛行機で移動する場合、ANAは19,300円~33,890円、JALは19,400円~35,800円となります。(いずれも2019年5月出発で、最安運賃は事前購入割引運賃。各社公式サイト調べ)
LCC「Jetstar」を利用した場合では、通常期で4,990円~22,090円となります。
そんな中、八幡浜・松山~新宿・横浜線「オレンジライナーえひめ」は、松山~新宿・横浜間の片道運賃が11,000円~13,800円、八幡浜・大洲・内子~新宿・横浜間の片道運賃が12,000円~14,800円となっています。
さらに、「オレンジライナーえひめ」には各種割引運賃が設定されており、学生対象の学生割引を適用すると、松山~新宿・横浜間が8,800円~11,040円、八幡浜・大洲・内子~新宿・横浜間が9,600円~11,840円で移動できるほか、大人の片道普通運賃が約20~30%割引になる「インターネット割引」(※)を利用すると、松山~新宿・横浜間が6,900円、八幡浜・大洲・内子~新宿・横浜間が7,900円で移動することができます。
※インターネット予約限定。乗車日5日前までに購入する必要あり。バス会社が設定した設定日及び設定した座席のみの販売。
LCC「Jetstar」と比較すると、利用日によっては「オレンジライナーえひめ」の方が高くなることもありますが、JR新幹線や飛行機(レガシーキャリア)と比較すると、時期によっては新幹線や飛行機の半額以下の運賃で移動でき、宿泊費も節約できることから、「オレンジライナーえひめ」のコストパフォーマンスは高いといえるでしょう。
なお、週末や繁忙期は混み合いますので、早めのご予約・ご購入をおすすめします。
今回は、八幡浜から新宿までの全区間を利用しましたが、平日の木曜日に利用したということもあり、片道12,000円(D運賃)で移動することができました。
ゆったりとした1人掛けシートに、コンセント、Wi-Fiといった充実の車内設備、そして通路カーテンのおかげで、消灯後は翌朝の休憩までほぼ目を覚ますことなく、ぐっすり眠ることができました。
そして、八幡浜に乗り入れる「オレンジライナーえひめ」は、八幡浜~別府・臼杵間のフェリーも活用することで、東京~愛媛間の移動手段としてのみならず東京~大分間の移動手段としても使えます。
充実設備のバスでぐっすり眠りながら移動したい
地元の信頼できるバス会社のバスで移動したい
他の交通機関よりも安く、かつ快適に移動したい
という方に、「オレンジライナーえひめ」は最適なバスだと私は思います。
(須田浩司)