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熱は、物質の高い方から低い方へ移動するという仕組みがありますが、暑いと感じる気温30℃のときでも、人間がもつ熱は周囲(空気)へ移動しています。
人間の体温は、脳や臓器があるからだの深部の方が少し高めになっており、約37~38℃あります。
人間は「恒温動物」といい、内臓のはたらきを守るために、外部の温度が変化しても、脳や臓器があるからだの深部の温度を一定に保つはたらきがあります。
体温を保つために、体はたくさんの「熱」を生み出しています。
熱はいつも余分に生み出されていて、不要な熱は空気などの周囲の物質に移動しています。
この「生まれる熱」と「奪われる熱」のバランスがうまく取れるのが、だいたい気温25℃ぐらいのときと言われています。
気温25℃ぐらいのときは、暑くも寒くもなく、過ごしやすいなと感じる方が多いはずです。
25℃より気温が高い30℃、35℃のときは、体から熱が逃げにくくなり、「暑い」と感じます。
次に、気温30℃と水温30℃の感じ方が違う理由について解説します。
そのヒミツは、物質ごとに「熱の伝わりやすさ」と「温度の変わりやすさ」が違うことにあります。
まず「熱の伝わりやすさ」を見てみましょう。
物質の「熱の伝わりやすさ」を表した数字を「熱伝導率」といいます。
熱伝導率が大きい順、つまり熱が伝わりやすい順は「水→皮膚→空気」です。
次に、「温度の変わりやすさ」について見ていきましょう。
物質の「温度の変わりにくさ」を表した数字を「比熱」といいます。
比熱が大きい順、つまり温度が変わりにくい順は「水→皮膚→空気」です。
水は空気に比べて温度が変わりにくく、皮膚から熱をたくさん奪っていきやすいです。
これは、水は空気に比べて熱が伝わりやすく、熱をたくさん奪う、つまり人間の体温を奪う力が強いということになります。
このため、気温30℃の中にいるときよりも、水温30℃の中にいる方が体の熱が多く逃げていき、冷たく感じやすくなります。
ちなみに、温度が100℃の場合はどうなるでしょうか?
温度が100℃のお湯に入るなんて想像しただけで恐ろしいですが、確実に火傷をしてしまいますよね。
しかし100℃のサウナに入ることはできます。これはどうしてでしょうか?
皮膚は空気に比べて熱が伝わりやすく、温度が変わりにくいです。
温度が異なる物体が接しているとき、接している部分の温度は「熱が伝わりやすく温度が変わりにくい」方の温度に近づきます。
そのため皮膚のまわりには体温に近い空気の層ができます。
空気の熱はなかなか皮膚に伝わらないため、しばらくサウナに入っていることが可能です。
しかし100℃のお湯と皮膚では、お湯の熱があっという間に伝わって皮膚の温度が上がってしまいます。そのためすぐに火傷してしまいます。
今回は水と空気の温度の感じ方がどうして違うのかを解説しました。
とても身近なテーマで今まで当たり前に感じていたかもしれませんが、
これから外に出る時やお風呂に入るときに思い出してみるとおもしろいかもしれません。
くれぐれも熱中症にはお気をつけてお過ごしくださいね。
動画解説:河合恵