コロナ禍で働き方や暮らし方を見直す人が増える中、夫婦で築100年越えの古民家を購入してDIYしながら暮らしはじめました。地方移住や古民家暮らしにあこがれる人も多いと思うのですが、気になるのが「住宅の修繕」ですよね。地域の気象特性によって修繕が必要な箇所が異なる場合があるので

・雨や風の影響を受けやすい地域では、屋根や壁がはがれて雨漏りやシロアリの被害がないか確認
・雪や凍結の影響を受けやすい地域では、雪の重みで躯体がゆがんだり水道管が割れていないか確認

など物件の内覧をする際には注意が必要です。きょうは修繕の中でも特に高額になりがちな「屋根の修繕」をについて、実際にかかった費用やDIYの方法をご紹介します。

※ このDIYは専門家の指導のもと十分な安全に配慮して実施をしています。高所作業で危険が伴うため屋根工事は工務店などへ依頼することをおすすめします。DIYを行う場合は専門家の指導のもと、必ず足場・安全帯・ヘルメット・安全靴を用意のうえ、自己の責任のもと実施してください。

雨漏りがひどい屋根をDIY


ボロボロの屋根の古民家に絶望した

2020年8月に築100年越えの古民家を購入しました。購入したはいいものの、100年以上も日差しや雨にさらされた屋根瓦はボロボロ。ところどころ修繕の跡は見られるものの、われていたり、かけていたりで雨が降るといろんな場所から雨漏りがある状態でした。地元の工務店に見積もりをお願いしたところ、昔の工法で建てられた家で構造が複雑なため、葺き替えをした場合「350万円」はかかるとのこと。さすがにそんな大金は支払えない・・・。もし自分で材料をそろえてDIYをした場合「80万円」程度でできそう。ということで勇気を出して建築士さんの指導のもと、自分たちで葺き替えにチャレンジをすることにしました。


100年前の瓦と土を取り除く

葺き替えにあたって本当に大変だったのが「瓦と土を取り除く作業」。昔ながらの家は、ビスや釘ではなく瓦を土で固定することで屋根をつくっていたんですよね。鼻の穴が真っ黒になる勢いで、瓦と土を撤去しました。撤去した瓦の枚数は1000枚以上、土嚢袋200袋以上の数に。古い古民家をリノベーションするときは、可能であれば購入前に複数の工務店や屋根専門業者に見積もりをしてから、購入するかどうか検討することをおすすめします。

また、施工の際には気象情報を毎日確認するようにしましょう。

・朝露や雨でスリップして転落事故になった
・風が強く屋根にあげていた部材がとばされてしまい接触事故になった

など危険がたくさん潜んでいるので、複数人で重ねて安全確認をしたうえで施工するのが大切です。


骨組みをきれいに清掃して朽ちた垂木を交換する

瓦と土を除去して、下地の板や草を取り除いたあとは上の写真のような状態になります。幸いに雨やシロアリで朽ちた箇所は多くなかったのですが、交換が必要な垂木(たるき:屋根の土台となる木)を取り換えたり、継いだり補強しました。瓦の屋根は1平方メートルあたり40~50kg/平方メートル(100平方メートルで約4~5トン)の重さになることがあるそう。地震の多い日本では倒壊の危険性もあるため、地震の影響を大きく受けそうな場所で古民家暮らしを希望する人は、瓦屋根の葺き替えを検討するのがおすすめです。


針葉樹合板を貼って屋根を補強する

垂木の修繕が終わったら、下地となる針葉樹合板を貼っていきます。重たい瓦屋根の影響を受けてひずみができているところもあるので、調整用の薄い板を挟んで高さを調整しながら貼っていくのがポイントです。この針葉樹合板は見かけによらず重量があるので、屋根の上に持ち上げるときには複数人でリレーするのが安全。ビスで止めるときには垂木にしっかり固定できるように目印をつけておくと作業がスムーズにすすみます。


防水シートのルーフィングを敷く

針葉樹合板を貼り終えたあとは、防水シートのルーフィングを敷いていきます。ルーフィングをしっかりと敷いておくことでもし表面の屋根材に穴やヒビができても、雨漏りを防ぐことができる「二次防水」の役割を果たすわけですね。雨が侵入した時に下地に水が浸入しないように、ルーフィングの上下左右の端は重なり合うように敷くのがポイント。「棟」と呼ばれる屋根の角の部分は二重三重にルーフィングを敷くことで耐久性をあげておくと雨漏りがしにくくなるのでおすすめです。


屋根材を貼って完成

ルーフィングを敷いて二次防水が完了したら、いよいよ一次防水の屋根材を貼って完成です。屋根材には

・ガルバリウム鋼板(軽量で地震に強いが、熱を通しやすく雨音が響く)
・スレート(軽量で地震に強く安価だが耐久性に難あり)
・瓦(遮熱性が高く長持ちだが、高額で重たく地震の際に不安)

などいろいろな種類があるので、予算やなにを優先するかによって決めていくのがコツです。今回の古民家では、耐震性と耐久性を優先して、軽量なガルバリウム鋼板を選択。施工方法がメーカーのWebサイトやSNSに載っているので、ある程度は自力で可能でした。ただ、棟や谷などが多い複雑な屋根の場合は、板金加工が難しいので専門の工務店や屋根業者に依頼することを強くすすめます。

また、ガルバリウム鋼板は雨や朝露に濡れると非常に滑りやすくなるため、必ず乾燥した状態を確認したうえで、滑り止めのついた安全靴を着用しましょう。軽い部材を使う場合は、強風により屋根にあげていた部材がととばされないように事前に気象情報をチェックしておくのも忘れずに。


まとめにかえて

働き方や暮らし方が多様になるなかで「古民家暮らし」に憧れがある人も少なくないのではないでしょうか?実際に購入してみたはいいものの、解体や修繕にお金がかかり、DIYに挑戦したら思ったように上手くいかずに途方に暮れてしまった・・・。なんてことが無いように、計画的に物件の調査や購入をしてくださいね。また、物件を購入・賃貸するまえには必ずハザードマップを確認し、津波や土砂災害の危険性が低い安全な地域であるかを確認しましょう。屋外で作業をする際には、事前に気象情報を確認し、雨や風が施工に影響を与える可能性を少しでも感じたら日時をずらして安全に取り組むことも忘れずに。次回は「床のDIY編」をお送りします。

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 貧乏写真家夫婦が築100年超えの古民家をDIYをした話(屋根編)