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まず頭に入れておいて欲しいのは、登山でどれくらいの水分が必要になるかは個人差が大きく、あまり給水しなくても大丈夫な人もいれば、頻繁に水分補給が必要になる人もいることです。ここでは登山で必要になる水分量の計算方法を紹介しますが、あくまでも基準量であり、最終的には自分で調整を行いましょう。
登山で必要になる水分量は次の計算式で求めることができます。
補給量(ml)= 脱水量(ml)✕ (0.7~1.0)- 朝食で摂取した量
脱水量(ml)= 体重(kg)✕ 行動時間(h) ✕ 5(ml)
※軽装で整備された登山道を標準的なタイムで歩く場合
まずは登山でどれくらい脱水するかを求めます。体重が60kgの人が6時間の登山を計画したとすると「60(kg)×6(h)×5(ml)= 1800ml」の水分が体から抜ける計算になります。このときに補給すべき水分量は「1800(ml) ✕ (0.7~1.0)= 1260~1800ml」になります。
朝食時に200mlの水分を摂取していたなら、1060~1600mlで足りる計算になります。ペットボトルなら3~4本持っていく必要があります。
ちなみに脱水量の計算で「5」としている係数は春や秋での数値ですので、夏には「7~8」、冬には「3~4」に調整します。また汗をかきやすいという自覚があるならさらに係数を大きくしてください。
【参考】
登山の運動生理学とトレーニング
登山では汗として水分が失われますが、この汗には様々なミネラルが含まれています。このため登山中の給水では水分だけではなく、ミネラルも補給しなくてはいけません。水分補給はミネラルウォーターではなくスポーツドリンクで行いましょう。
スポーツドリンクの多くが汗をかくことによって失われる成分に近い成分になっており、抜けたミネラルを水分とともに補給することができます。ただ、スポーツドリンクは甘くて苦手という人は抜け落ちた水分をすべてスポーツドリンクで補給するのは大変ですよね。その場合はサプリメントなどでミネラルを補いましょう。
また持っていく水分がすべてスポーツドリンクだと、ケガですり傷ができたときなどの消毒に使えません。念のためミネラルウォーターも500ml分は持っておくと安心です。ただし、1度蓋を開けると傷の消毒には適しませんのでご注意ください。
計算上1500ml分の水分が必要だとすると、1000mlのスポーツドリンクと500ml程度のミネラルウォーターがあるといいでしょう。
脱水症状を防ぐためには水分補給のタイミングも重要になります。喉が渇いてから一気に給水しても体がそれらの水分を吸収することができません。水分補給は1時間毎に行い、持っている水分を均等に分割して飲みましょう。
ただし人間が1回に吸収できる水分量は200~250mlとされていますので、1時間毎の給水量が200mlを超えるようでしたら、1時間毎ではなく1回に飲む量を200mlとして、飲む回数を増やしてください。
6時間の登山で1500mlの水分を持っていくとして、1時間毎の給水なら5回の給水タイムがありますが、この場合は1回の給水量が300mlになってしまいます。これは飲みすぎですので、1500mlを7~8回に分けて飲みましょう。
もちろん下山してからの水分補給もしっかりと行いましょう。登山後はすぐにビールを飲みたくなりますが、アルコールには利尿作用があるため水分補給にはなりません。まずはスポーツドリンクで水分を補うようにしてください。
山によっては登山道や山頂に山小屋があり、水やスポーツドリンクを売っていますが、基本的にはこれらを使うのは緊急事態だと考えてください。山小屋で購入するつもりで持っていく水分量を減らしたら、水やスポーツドリンクが売り切れていたというようなこともあります。
富士山のように山小屋が充実している場合には、山小屋や山頂で購入するという選択肢もありますが、水分が重くて登れないということは、その山を登るだけの体ができていないことを意味します。もう少し難易度の低い山で鍛えてから挑戦しましょう。
登山で大事なのはリスク管理です。持っていく水分量を減らすというのは脱水リスクが高まるだけではなく、遭難したときには命にかかわります。安易に山小屋で購入するのではなく、もしものことを考えてすべて自分で用意しましょう。
ここでは「ちょうど足りる水分量」の計算方法をお伝えしましたが、リスク管理を考えると下山したときに水が多少残っているのが理想です。下山したときに水筒が空っぽというのは、トラブルが起きていたら足りなかったことを意味します。
想定外のトラブルに備えて、必要な量の水分とは別に予備として200~300mlの小さいサイズのペットボトルの水を保険として持っておきましょう。