- 週間ランキング
いきなりですが、温泉とは?と問われたらどうお答えになりますか?
単に「地面から出てくるお湯」とか、ざっくり「疲れがとれる気持ち良いもの」と答える人もいるかもしれません。もちろんそれで構わないですし、温泉の定義について熟慮したことがある人なんてほとんどいないと思います。
みなさん何となく“良いもの”というイメージはあるのでしょうが、良いということはそれを使って商売ができますし、悪用して不正にお金を入手することだってできてしまいます。そんな曖昧な「温泉」というものに対して、しっかりとルールを決めて運用しましょうと定めたのが昭和23(1948)年に施行された「温泉法」という法律です。
この温泉法では、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)のなかで、「温泉」と呼んで良い物について2つを定義しています。
1つ目は「温泉源から採取される温度が摂氏25℃以上のもの」、そして2つ目が「1kg中に含まれる特定の物質が一定以上のもの」です。2つのうちどちらか一方を満たしていればOKなので、“地中から25℃以上の温水、鉱水、水蒸気その他のガスが湧き出ていれば温泉”だし、“特定の物質が一定以上含まれていれば、冷たくても温泉”ということになります。
自然界で湧き出る温泉は大きく「火山性温泉」と「非火山性温泉」の2種類に分けることができます。
火山性温泉は何となくイメージできますよね。読んで字のごとく、火山の地下にあるマグマの熱で地下水が温められ、地表で噴出したり掘削したりして出てくるものです。火山がある地域に有名な温泉地が多いのはこのためです。
では、非火山性温泉とはどういうことでしょうか。
湧いているのはこちらも温められた地下水なのですが、火山(マグマ)などの熱源がないのに温かい地下水が湧くというのは不思議ですよね。これには「地下増温率」というものが関係しています。少し難しい言葉ですが、簡単に言うと「地表から100m深くなるごとに地温は約3℃高くなる」というものです。単純計算ですが、地表の温度が15℃の場所であれば、その1000m下の地温はおよそ45℃ということになります。さらに深くなれば温度はもっと高くなるので、その付近に地下水があればその地温で温められるという仕組みです。これを非火山性温泉の(1)「深層地下水型」という種別になります。
非火山性温泉には(2)「化石海水型」という種類もあります。これは何らかの原因で太古の海水等が地中深くに取り残され、圧力や掘削により噴出するというもの。かつて海水であったということは、塩分やミネラルを含んでいるので、上で紹介した「1kg中に含まれる特定の物質が一定以上のもの」に該当します。“温かくなくても温泉”と認められる代表的な例で、海に囲まれた島国である日本では多くみられる温泉です。
温泉を使用している浴場には、必ず温泉分析書というのが掲げられており、そこには「単純温泉」や「塩化物泉」といった泉質を記した項目があると思います。温泉法等でしっかりと定められていると思いきや、条文で泉質について言及している法令は一つもありません。
泉質とは「療養泉」という考え方のもとで規定されたもので、療養泉は環境省が制定した「鉱泉分析法指針」に基づいて定められています。(※療養泉=水蒸気その他のガスを除く温泉のうち、特に治療の目的に供しうるもの)。泉質の表記については過去に様々な名前が存在しましたが、現在は以下の10種にまとめられています。
【療養泉の種類】
・単純温泉
・塩化物泉
・炭酸水素温泉
・硫酸塩泉
・二酸化炭素泉
・含鉄泉
・酸性泉
・含よう素泉
・硫黄泉
・放射能泉
全ての療養泉に共通の一般適応症が掲げられているほか、それぞれの泉質によって様々な効能が期待されています。温泉毎に泉質は異なるので、いつか全泉質を制覇してみるのも面白そうですね。
温泉法や泉質について解説してきましたが、小難しいことは考えずに頭を空っぽにしてリラックスできるのが温泉の良いところ。
「肌に良いと言われているけど、この温泉に入ると肌がむず痒くなる」
「お湯は抜群だけど、もう少し空いているところが良いな」
など、人それぞれ温泉との相性や好みというものがあるものです。
温泉は湯そのものを楽しむのはもちろん、お風呂から眺める景観や浴場の風情、そして温泉地へと向かう際の旅情感など、楽しめる要素はいっぱいあります。泉質や効能だけにとらわれず、総合的に自分が幸せを感じられる温泉を見定めることも大切です。