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絵本の日は、民間図書館「絵本と図鑑の親子ライブラリー」(ビブリオ)が制定し、日本記念日協会の認定登録を受けました。昭和期の児童文学者、瀬田貞二(1916〜1979年)が“日本における絵本の考え方を示し、その後絵本の世界に大きな影響を与えた”評論、『絵本論』(福音館書店)の初版が発行された、1985(昭和60)年11月30日にちなんだものです。
瀬田貞二は、29歳で迎えた終戦のおりに、「私は私の能力と時間のすべてを子どもたちに解放しなくてはならない」と日記に書きしるし、その後のみずからの生涯を定めた人物です。その決意のとおり、『ナルニア国ものがたり』や、『指輪物語』などの児童文学や、数多くの絵本の翻訳者として名を残しました。絵本『きょうはなんのひ?』の作者でもあり、幼い頃に読んで、わくわくした記憶の残る方もあることでしょう。
【引用・出典】
「絵本と図鑑の親子ライブラリー」(ビブリオ)公式サイト
瀬田貞二(著)『絵本論』(福音館書店)
ご紹介する展示が行われている国際子ども図書館は、“子どもの本は世界をつなぎ、未来を拓く!”という理念の実現を目指して設立されました。図書館内には、絵本や物語を閲覧したり、主に中高生向けの調査やレポート資料が揃えられているコーナーのほか、児童書研究のための資料室、ホールやギャラリーなどがあります。子どもたちのための国際理解の本や、外国語の本も豊富。おはなし会や講演会などが毎月行われており、施設は入場無料です。
図書館は、レンガ棟とアーチ棟で構成されています。重厚な明治期ルネサンス様式のレンガ棟のはじまりは、1906(明治39)年。帝国図書館として建てられ、1929(昭和4)年に増築されたのち、戦後に国立図書館と名称が変わります。そして、改修を経て2000(平成12)年、国立として初めての児童書専門図書館として開館。東京都選定歴史的建造物にも選ばれています。2015(平成27)年には新たにアーチ棟が開館し、モダンな景観の中庭に面したカフェテリアは、上野散策の合間の休憩におすすめです。
3階のミュージアムでの展示会「絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで」では、現代アートの視点から国内外の絵本が展示されています。主に、20世紀における革新と創造に焦点が当てられ、ダダ、シュルレアリスム、ロシア・アヴァンギャルドなど、従来の価値観に反抗した前衛的な芸術運動の作家の作品や、その影響を受けて制作された国内外の絵本が並びます。普段はなかなか接することができない、貴重な絵本も少なくありません。
時代の流れに沿った展示に加えてユニークなのは、さまざまな画家によって描かれた挿絵による「アリス」、「赤ずきん」、「ピノキオ」の本のコーナーです。例えば「ピノキオ」では、ハートのモチーフで有名なポップアートアーティストのジム・ダイン、日本のモダニズムを代表し、今見てもモダンでお洒落な感覚の村山知義などの作品。「赤ずきん」では、明るくポップな湯村タラ、おなじみのディック・ブルーナたちの楽しい絵本。そしてサルバドール・ダリ、マリー・ローランサン、草間彌生らの世界観が錯綜する「不思議の国のアリス」。錚錚たる芸術家たちの絵本への思い、そして現代アートの多様性が可視化されているコーナーです。
時代の潮流が、現代アートを通じて絵本制作に反映された軌跡です。子どもたちにはユニークな表現との出会いとなり、そして大人には、改めて現代史を想起し、懐かしい時代を振り返る体験となることでしょう。
【引用・出典】
国際子ども図書館 公式サイト
【絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで】
〔開催日〕
前期:2019年10月1日(火)~11月17日(日)(※終了)
後期:2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)
会期中の休館日 月曜日、国民の祝日・休日、年末年始及び毎月第3水曜日(資料整理休館日)
〔開催時間〕 9時30分~17時
〔会場〕 国際子ども図書館 レンガ棟3階 本のミュージアム
入場無料
※詳細はリンクをご参照ください。