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ダチョウの外見って、ラクダに似ていると思いませんか? じつはダチョウ(駝鳥)の呼び名は、ラクダ(駱駝)からきていたのです!! 「駝」は「荷を負う動物」。ラクダみたいに「モノを載せて運ぶのによさそうなイイ背中をしている鳥」という意味のようです。…って、すでに鳥の扱いではないような?
たしかにダチョウは、鳥なのにまったく空を飛びません。サバンナの乾いた地面を、自動車なみのスピードでひた走ります。砂漠をゆくラクダにも劣らぬ持久力。羽ばたく筋肉はぜんぜんないのに、脚の筋肉はムッキムキ! 鳥の足先はたいてい3つに分かれていますが、ダチョウは2つ…それも地下足袋を履いているかのような形をしているのです。ラクダの足と同じく砂地を走りやすい構造なのですね。歩幅5mともいわれる大股で、つま先を活かしてタッタッタッッと、長距離を二足走行しています。
ダチョウといえばつぶらな瞳。なんと、目玉ひとつがニワトリの卵くらいの大きさで、脳よりも眼球の方が重いのだそうです(なんたって脳の重さは40g)! そしてまぶたとは別に、砂や乾燥などから目をまもる「瞬膜」が付いているのも、ラクダと同じ。ダチョウは視力がとても良くて、5kmくらい先のものも見えるといいます。脳なんてちょっとあればOK、というくらい眼球が高性能なのかもしれませんね。ちなみにダチョウの涙は、うまみ調味料を思わせる?独特の甘い味がするそうです。
すっくと立って敵の姿を発見しだい、駿足で逃走。いざとなれば、鋭いツメがついた足でライオンをも蹴り殺す!! …完全に地上戦仕様です。それなら、あんなにファサファサした翼なんて必要ないんじゃない?という気もしますが、高速で走っているときに方向を変える「舵」的な役目をしたりもするのだとか…そして何より、もっとも重要な用途が!?
ダチョウは、現在生きている鳥類のなかで一番大きい鳥です。メスが175〜190cmと大柄な大人くらい、オスだと210〜275cmにもなります。体色はメスが灰褐色、オスは黒。基本的に草食で、群れをつくって生活します。ダチョウは声を出す鳴管が発達していないため、鳴きません。なので、たとえ100羽以上で行動していても、とっても物静かな集団なのだそうです。群れの中で家族ごとに10羽くらいでまとまって暮らします。寿命は30〜60年、意外と長生きなのでしょうか。
春先から発情期が始まると、オスのくちばしは真っ赤に! 争いに勝って群れの支配者となったライオン、もといダチョウキングは、メスの前に座ると、長い首をくねくねさせながら羽を大きく広げて踊りだします。鳥ならではの恋歌を捧げることもなく、無音声(体に頭をぶつける音がすることも)のまま続く、激しすぎるダンス…くねくね〜バサバサ!! 「悪魔を呼び寄せる儀式のようにしか見えない(ダチョウ博士・塚本康浩先生 談)」。うっかり妖怪ろくろ首(←見てはいけないもの)を見てしまったような衝撃に戸惑う人間たち。しかし、夢中になったメスは、自分も首を地面に伸ばし、口をパクパクさせて応えるのです。「選ばれし者による静けさのなかの圧倒的な派手さ」…そこにはもしや、日本の伝統芸能にも通じる高貴なオーラが!? 求愛ダンスの振り付けが気になる方は「関連リンク」もどうぞ。
そしてダチョウはなんと、求愛されるほうの女子にもリーダー争いがあるようなのです! 晴れて正妻となったメスは、自分が産んだ卵と他の奥さんが産んだ卵をまとめて抱いて孵します。分け隔てなき愛の行為、さすがダチョウクイーンは度量も大きいですね…と、思いきや。じつは、自分が産んだ卵を中央に置き、その周りを囲むように下位の妻たちの卵を配置。もし敵に襲われても、外側の卵から犠牲になるようにとの護衛作戦だったとは(しっかり分け隔ててました)。
卵は、一斉に孵るように全部そろってから温め始めます。昼は茶色っぽいお母さん、夜は真っ黒いお父さんと、風景にとけこむように交代などもしています。まとめて育てることで、生存率やヒナの質を向上させているのですね。ちなみに、キングになれなかったオスと階級の低いメスが結ばれることもあるそうです。ダチョウの翼は、子孫繁栄に重要な役割を担っていたのですね!
ダチョウの羽根は飛ぶ鳥とは異なり、羽毛がほぼ左右対称。均整のとれた正義の象徴として、古代エジプトやイギリス王室の紋章などにも用いられてきました。ローマ時代の高官たちから、中世には貴族の愛用品として大ブレイク! マリー・アントワネットやハリウッドスター、いまでは宝塚歌劇団のトップスターさんの衣装にも欠かせないアイテムに。ふわふわと柔らかくて優雅でゴージャス。「選ばれし者」のオーラは、選ばれた人々をも魅了してきたようです。さらに、羽軸を取ったあとのイボ模様(クィルマーク)のついたオーストリッチ皮革は、軽くて耐久性のある高級バッグなどで有名です。
ファッションだけではありません。ダチョウの羽根は静電気をおこさず、静電気も埃も取り除けることから、自動車業界や電子業界ではダスターとして重宝されています。ダチョウは食材としても、また近年「ダチョウマスク」やガン治療薬など医療分野でも注目されている、期待の星なのです☆
かつては世界のあちこちに住んでいたというダチョウ。現在、ダチョウ牧場は日本にもいくつかありますが、野生の生息地はアフリカのみ。絶滅も心配されているのです。たくましい脚とつぶらな瞳の鳥たちが広い大地を元気に走れるよう、応援してあげたいですね。
<参考文献・サイト>
『空を飛ばない鳥たち』上田恵介(誠文堂新光社)
『ダチョウ力』塚本康浩(朝日新聞出版)
『ナショナルジオグラフィック 日本版サイト』
『日本オーストリッチ協議会』HP
『横浜市立 野毛山動物園』HP