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さて、冬になっても春のように暖かい陽気を「小春」または「小春日和」といいますが、まさかこれが冬の時候の季語だとは思いもよらなかったという方も多いのではないでしょうか。
そこで、冬なのに春がつく理由とは? ほかにも似たような季語はあるの?など今回は「小春日和」に関して調べてみました。
季語の中には、「小(こ・しょう)○○」と表記する季語があります。そこには文字だけで想像できる季語と想像できない季語が含まれていることがわかります。例えば「小鳥」「小菊」などの名詞はわかりやすいのですが、今回は名詞ではない季語をピックアップしてみました。
○二十四節季の「小○○」
二十四節季とは、一年を15日ずつ太陽の角度をもとに区切った節季で、春分と秋分は同じ角度、夏至と冬至は角度が最大最少となる暦のことです。この中の「小○○」は以下の通りです。
「小満(しょうまん)」……万物がしだいに長じて満つる、を意味する夏の時候の季語で、新暦5月21日ころ。
「小暑(しょうしょ)」……新暦7月8日ころ。このころから暑気が始まる。対=「大暑」
「小雪(しょうせつ)」……新暦11月22日ころ。初冠雪が見られるころ。対=「大雪」
「小寒(しょうかん)」……新暦1月5日ころ。寒の入り。対=「大寒」
○「子望月(こもちづき)」
「望月」とは、旧暦8月15日の「十五夜」のことで、「名月」「今日の月」などと呼ぶ秋を代表する季語。「小望月」は、その前日の少し満たない月のことで「待宵(まつよい)」ともいう。
○「小六月(ころくがつ)」
「小春」とともに旧暦10月の異称。冬の季語で、立冬を過ぎても春のような暖かな陽気になることがあるから。「小春日和」も同意。ほかにも「小春凪」「小春風」「小春空」もある。
いかがでしたか? 「小○○」のつく季語は意外に多いことがわかりましたね。
おおむね同じ季節内の季語であり、想像できる範囲の言葉でしたが、「小六月」「小春」は季節が真逆の言葉。勘違いするのも無理はないのかもしれません。しかし、これからご紹介する冬の季語と一緒に覚えておけば、冬なのに春がつく理由が納得できるかもしれませんよ。
○「冬暖か」「冬ぬくし」
冬でも気温が上昇する日がある。寒さを忘れるような冬の暖かさが嬉しい。「暖か」自体は春の季語であり、冬をつけることで冬の暖かさが強調される。
〈校庭の柵にぬけみち冬あたたか〉上田五千石
○「帰り花」
小春日和にさそわれて春の花が季節外れに咲くこともある。本来は桜をさすが、山吹、つつじなども咲くことがある。つい先日、今年の台風の塩害で桜が咲いたというニュースがあったばかり。冬に咲く「十月桜」は帰り花ではなく、桜の種類。
〈帰り花海近ければ海の色〉九鬼あきゑ
○「日向ぼっこ」
一年中と思いきや、冬の季語に分類される。日の短い冬は暖かい日が恋しい。わずかな時間でも冬日のなかで過ごす至福の時間。
〈どちらかと言へば猫派の日向ぼこ〉和田順子
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫)
──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。「小春」を代表とする冬の季語は、暖かさを求める季語が多いのが特徴です。それは、夏の「涼」を求めるのと同じこと。人の身体と心が求める自然の形を言葉にしたものなのです。例えば「おでん」や「鍋」、「セーター」や「手袋」「布団」まで!
また機会があれば「知って得する季語」としてご紹介したいと思います。