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七十二候では「鴻雁来(こうがんきたる)」初雁の渡って来るころとなります。その頃吹く北風を昔の人は「雁渡し」とよんでいたそうです。雁といえば手紙のことを「雁の玉章(たまずさ)」というのをご存じですか? 昔の中国、前漢の蘇武という人が使節として北方遊牧民の匈奴に遣わされました。しかし捕らえられ19年間も抑留されてしまいました。蘇武は救いを託した手紙を雁の足に結びつけました。その手紙が無事に長安の都に届き国へ帰ることができたということです。
「秋風に初雁が音ぞ聞こゆなる たが玉章(たまずさ)をかけて来つらむ」
『古今和歌集』にみえる紀友則の歌はこの故事をゆかりに作られています。雁は手紙を運ぶ鳥ともされています。中国大陸を悠々と群をなして飛ぶ雁の姿はその大役にふさわしい鳥かもしれません。
雁が渡ってくる頃に葉が赤く色づくのが「葉鶏頭」です。又の名を「雁来紅(がんらいこう)」といいます。やはり同じ頃に鶏のとさかに形がにている「鶏頭」もきれいに色づいて花を咲かせます。
「鶏頭や雁の来る時尚あかし」 芭蕉
秋を彩る植物に雁を歓迎する気持ちをに託しているように思われます。木々から緑が失われていく秋の鮮やかな赤には、心をとらえる力がありますね。
また「秋湿り」ともいいますが、こちらは湿気の多い天候をさします。梅雨とはちがいどこか肌にひんやりと感じるせいでしょうか「秋湿り」には人恋しさや寂しさを感じます。
「秋霖の濡れて文字なき手紙かな」
折笠美秋
雨の降る日は静かに家で過ごすのもいいですね。思いきって、どうしているか気になっていた友人に手紙を書くのはどうでしょうか? それはちょっと億劫というときはゆっくり雨音を楽しむのもいいかもしれません。あったかい飲み物を手にしてぼんやりしていると、日頃のストレスも和らいでくるかもしれません。またこんな時だからためていたビデオをみたり、しばらくご無沙汰していた友人と久しぶりに電話でおしゃべりするのも楽しいでしょう。ゆっくりとくつろいだら、きっとまた新しい元気が湧いてきますよ。
「あすなろの木の高きより秋の雨」
草本美沙
秋はやっぱりスポーツ、行楽の秋でしょうか。もともとは1964年10月10日に東京オリンピックの開会式が行われた日を記念したものでしたが、ハッピーマンデー制度の導入で毎年10月の第2月曜日になりました。当時東京オリンピックの開会式を秋晴れの中で、という思いから晴れる確率の高いこの日に決められたと聞いています。
日本で初めての運動会は、明治7年3月に海軍兵学校で行われたといわれています。やがて明治も半ばになると小学校でも行われるようになり国民的な行事となっていきました。
なにはともれ秋の晴天の気持ちよさは格別です。思いっきり身体を動かしてかく汗も爽やかに感じられます。ちょっと近所を散歩にでも、というのでしたら少し足をのばしてみませんか? 気づかなかった花や木の実、そして美味しそうな「何か」も見つけられるかもしれません。さあ五官を開いて過ぎゆく秋をつかまえに行きましょう!