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葉っぱの色は、太陽を吸収するための色素の色なのです。緑色はクロロフィル。黄色はカロチノイド。葉っぱのなかの葉緑体に含まれているこれらの色素によって、色みが変化していくのですね。
地球上にふんだんに降り注ぐ、太陽の光…まぶしい光を浴びると、私たち人間も、全身にエネルギーが満ちるように感じます。葉っぱは、実際にその光のエネルギーを、クロロフィルやカロチノイドなどの色素で吸収して、有機物(でんぷんなど)を生産しています。「光合成」ですね! その有機物を食べる昆虫や動物、有機物を分解するカビやキノコなど、生態系のすべての生きものの生活は、この葉っぱの働きなくしては成り立たないのでした。
森の中で見上げると、枝や葉の間からわずかに見える空。地上では、太陽の光はつねに上方から届きます。木々の足元で生きている背の低い植物にとっては「すきまから見える空の広さが全天に対してどれくらいの割合か」というのがとっても重要…その場所でやっていけるかどうかの目安となるのだそうです。光を得るために競争したりと、葉っぱも苦労が多いようです。
葉がまだ開ききっていなかったりして葉緑体が未発達のときは、クロロフィルよりもカロチノイドの色が目立ちます。だから春先の葉っぱは、黄色っぽい色をしています。葉緑体がだんだん発達し、太陽の光をたっぷり浴びてクロロフィルが増えるにつれ、葉はその緑を濃くしていきます。夏が来ると緑が深まるというのは、決して気のせいではなかったのですね。
と、いうことは…人間に降り注ぐ太陽の光も、すでにたっぷりと!? 私たちも紫外線対策に本気を出す季節がやってきました。
中国・北宋の山水画家 郭煕(かくき)は、『林泉高致』に「夏山蒼翠(そうすい)にして滴(したた)るが如く」といい、日本では「山滴る」が夏の季語になっています。濃い緑に成長した葉っぱから水が滴るような、青緑色(蒼翠)のみずみずしい夏の山。「翠」とは、カワセミの羽根の色を指す言葉だったそうです。
「みどり」の語源は、「みづみづし」。もともと木々の新芽や若枝を表す具体名詞だったといわれています。赤ちゃんを「みどりご」と呼ぶのも、生まれたてのフレッシュな命を表現しているのでしょう。
じつは古代日本には、色の名が4つしかなかったというのです。
白(明るい)と黒(暗い)、赤(濃い)と青(薄い)。光に関する2系列の4語が、やがて色彩に関する語に転じたものと考えられています。4色を図にすると、白・黒・赤で正三角形をつくり、底辺の白と黒のまんなかに青があって、頂点の赤と結ばれています。つまり青は、グレイ的な役割ももっていたのですね。
ところが日本人は、それを補う形で「具体的なものの名」を冠した言葉で、微妙な色もちゃんと認識していたのです。たとえば赤は丹(ニ)・ハネズ・ムラサキ、青はミドリ・ハナダなど…なんと「みどりいろ」は、もともと青に含まれる存在だったようです!
葉っぱを揺らす強い南風を「青嵐」、葉っぱを濡らす雨を「青梅雨」などと呼びつつも、色に繊細な昔の人の脳内には、きっといろんな「みどりいろ」がイメージされていたにちがいありません。
西洋では、自然は「火」「土」「空気」「水」の4つの要素で表現されるそうです。この中に緑色のものは入っていませんね…にもかかわらず、世界共通に、普遍的に自然や生命を連想させるものが「緑」だといわれているのです。心に浮かぶ緑の葉っぱは、たいてい昼の光のなか。そんなところも、なんだかホッとしますよね。
緑は、赤外線と紫外線に挟まれた可視光線スペクトルの中央に位置します。安定をもたらす色として人に安心感を与え、気持ちを和らげ、心を鎮める色なのです。ストレスを緩和し、血圧を下げ、体の機能を再活性化させる効果があるといわれています。また、人が何かを決断するのにも役立つ色なのだそうです。
ビリヤード台が緑色なのは、プレイヤーをできるかぎり落ち着かせ、よいプレイができるようにするため。また、ベートーベンやシューマンは、毎日森を散歩して作曲活動をしていたといいます。なんだかストレスがたまっているな〜と感じている方は、日用品に緑色をとりいれたり、お部屋に観葉植物を置いたりするのもおすすめです。
森林浴などで吸い込む葉っぱの匂いもまた、免疫力を高めるのに絶大な効果があるとされています。みどりの風にふかれて、生命のパワーを五感でチャージ! 地上の葉っぱがみどりいろで、本当によかった…さまざまな葉っぱの「みどりいろ」をさがしながら、初夏のお散歩を楽しまれてはいかがでしょうか。紫外線対策もお忘れなくおでかけくださいね。
<参考文献>
『葉っぱの不思議な力』鷲谷いづみ・埴沙萠(山と渓谷社)
『歳時の文化事典』五十嵐謙吉(八坂書房)
『色の力』ジャン=ガブリエル・コース(CCCメディアハウス)