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冒頭でも述べた「TNR」とは、猫のエサやその食べ残し、排泄物の清掃、不妊去勢手術によって猫の繁殖制限を行い、いま以上に不幸な猫を増やさない目的のために始められた活動を指し、一代限りの命を見守ろう!という取り組みです。別名、「地域猫活動」ともいわれています。では、「TNR」の言葉について見てみましょう。
「TNR」の意味
■Trap(トラップ):捕獲すること
■Neuter(ニューター):不妊去勢手術のこと
■Return(リターン):猫を元の場所に戻すこと
「TNR」の活動としてわかりやすい特長は、不妊去勢手術の際に猫の耳先を少しカットすることにあります。その形が桜の花びらに見えることから、その猫たちは「さくらねこ」と呼ばれ、ボランティアや住民たちの協力によって世話をされ「地域猫」として見守られます。ただし猫が苦手な人もいるため、地域の中で問題を共有することも大切です。
かわいそうだからと、ただエサをあげ続けるのでは野良猫が増加するばかりで、食べ残しや排泄物の問題なども増えます。もし身近に野良猫がいて、個人でTNR活動を実施することが難しい場合は、保護団体などに相談にのってもらう方法もあります。
そして「TNR」活動を理解するうえで基本となるのは、「猫に罪はない」ということ。「問題は人間側にある」ことを知る必要があります。
地道にTNR活動を行う多くの保護団体は、保護猫や、愛護センターなどの施設に収容されている猫を引き出し、新しい家族を見つけるために里親会を開いています。
2年前、私は猫を家族に迎えたいと思い、里親募集のサイトを毎日のぞくようになりました。そこでいま一緒に暮らしているわが家の猫と出会うことになります。
── ここでは、里親になるまでの経緯をお話しさせていただくことにします。
まずは里親募集のサイトから気になる猫を見つけました。サイト上では猫の年齢、性格、健康状態、保護経緯などの他にも、里親になるための条件なども書かれていました。
保護団体にもよりますが、一般的には猫の寿命を考えて高齢の単身者には子猫は譲ってくれませんし、他にも細かい条件はあり(少し厳しいという意見も聞きます)、それは家族の一員(わが子)として猫を迎え、天寿を全うするまで大切にしてくれる人に里親になってほしい、という願いからといえます。
正式譲渡の際には、それまでにかかった検査代やワクチン代などの医療費の負担もありますし、うちの猫の場合は生後10か月で不妊去勢手術も済んでいたため、その費用も含まれていました── 。
そして、待ちに待った里親会の日。
私はのちにわが子となる猫に会いに行きました。サイトにその子の性格が「繊細で臆病、静かな環境を好む」と書いてあったとおり、ケージの奥の方で身をひそめていて、触れることはできないまま、申し込みを済ませ、その日は帰宅。
数日後、ほかにも里親希望者がいたなか、「わが家にお願いしたい」と連絡がきた時は、まるでなにかの試験に合格したような喜びにみちあふれました。そんな気持ちと同時に「命を預かる」責任感が押し寄せ、身の引き締まる思いだったのです。
保護猫を迎えるにあたって「トライアル」という1週間ほどのお試し期間があります。その間、飼い主との相性はもちろん、先住猫や犬がいる場合にも相性をみることができます。トライアルが始まるまでトイレやごはん、キャリーケースなど必要なものを揃え、家族全員でワクワクとドキドキした気持ちでその日を待ちました。
繊細で臆病なその子は、トライアル初日から3日間、保護団体から借りた大型ケージの中から出てくることもなく、かなり緊張している様子でした。しかし一日一日、少しずつでも距離が縮まっていくことがうれしくて、すぐには懐かなくても、もう保護団体に返すことは考えられず、1週間後、ついに正式にわが家の子になったのです。
保護団体から猫や犬を迎えることでよい点は、トライアル中に不安や疑問があった時、すぐに連絡をとって聞くことができる安心感があります。ペットショップではそこまで個々に対応はしてくれないと思いますし、ほかにも成猫や成犬の場合は特に、保護団体がその子の性格を把握しているので、条件に合った里親とマッチングができることです。
後日談としては、とても臆病な性格から、保護団体としては里親が見つかるのか心配していたそうですが、静かな環境を好むその子には、大人ばかりのわが家が条件と合ったのだと思いました。家族になってから1か月もするとすっかり慣れ、今ではわが家の癒し的存在となっています。
── TNR活動をしている人たちのなかには、保護団体に限らず個人ボランティアが集まって活動をしているケースも多くあります。個人でTNRをすることは決して容易ではありませんが、たとえ保護猫の里親になることができなくても、もし身近に猫を飼いたいという方がいたら、「里親になってみない?」と保護猫の存在を教えてあげれば、TNR活動はもっと広まっていくのではないでしょうか。
不幸な野良猫が1匹でも減るために活動している方たちや、その取り組みが多くの人々に広まるように願い、今回は「全米野良猫の日」にちなんで個人的なことを発信させていただきました。
「猫に罪はない」「問題は人間側にある」……。日本社会に幸せな猫が1匹でも増えるとよいですね。