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めでたい日になぜ「菊の花」なのでしょうか? その理由はとおい昔の中国にいわれがあるようです。
魏の文帝に仕える臣下が不思議な霊水をたずねて酈縣山(れっけんざん)の奥へ分け入ると、菊の咲く山中で少年に出会います。その少年は何百年も昔、周の穆王(ぼくおう)から仏徳を讃える偈(げ)を記した枕を賜わり、その偈を忘れないように菊の葉に書き写しておいたところ、やがて菊の葉の上に集まった露は甘い霊水となり、その霊水を飲んで少年は不老不死の仙人となったと語ったそうです。文帝はこの話を聞いて菊の花を盃にいれ、長寿の言祝ぎをしたのが重陽の宴とのこと。国を治める王として健康で長生きをするというのは心からの願いだったことでしょう。霊水を得たよろこびが菊で飾られた宴の華やかさとともに伝わってくるようです。
この話を元に作られた『菊慈童』または『枕慈童』は、能楽の演目として長く上演されています。
「ぬれてほす 山路の菊の露のまに いつか千とせを 我は経にけむ」
平安時代の三十六歌仙のひとり、素性法師も菊の水の霊験譚をこのような歌にしています。
健康な長寿は全ての人の望みですが、それはやがて迎える死を知るゆえの願い、なのかもしれません。
まずは食べる「菊の花」。ビタミンKやC、他にもカロテンを多く含み、これから寒くなる冬に向って身体に必要な成分を持っているのが菊の花。たっぷりの熱湯に酢を少々いれた中でサッと湯がき、冷水にさらした後しっかりと絞っておきます。おひたし、酢の物、またパスタに和えて色を楽しむのも素敵です。秋のほろ苦さは春のアクをふくんだ苦さとはまた違い、秋にしか味わえない独特なもの。花びらをちぎってそのままトッピングにしたり、それこそいける方は花びらを浮かべて「菊の酒」としゃれてみるのもいいですね。
そして飾る「菊の花」。仏花としては定番ですが、菊の花は種類、大きさ、色も豊富です。大きな菊は一本でも鮮やかな色がその場を明るくしてくれますし、ボンボンのような菊は高さを抑えて卓上においても可愛らしいものです。
「一枝は荷にさしはさむ菊の花」 正岡子規
子規が菊で演出した秋、どんなに重い荷物も頑張って運べそうな気がしてきます。
最後に身にまとう「菊の花」。四君子、四愛といって菊を合わせたおめでたい文様はいかがでしょうか。菊、梅、蘭、竹が四君子、四愛は菊、梅、蘭、蓮。どれも華やかさの中に品位と長寿や穏やかさへの願いが感じられますね。秋は結婚式やお祝いのパーティーなどが多い季節です。箪笥に眠っているこんな柄の着物や帯はありませんか。これをチャンスに是非伝統ある文様の装いにチャレンジしてみてください。周りの注目度も大いに上がることでしょう。昔の人の美の感覚を今に活かして秋を楽しんでみてください。
晴れた日に花を楽しむ。素敵ですね。そんな秋の日は「菊まつり」にお出かけください。いくつかをご紹介しましょう。
◎靖国神社で行われる「奉納菊花展」今年は10月16日(月)から11月5日(日)まで。葦簀掛けの囲いの中に丹精込めた菊の鉢がずらりと並んだ眺めは、大きさや色、形とどれをとっても花の見事さに溜息がもれることでしょう。必見、かもしれませんよ。
http://www.yasukuni.or.jp/access.html
◎亀戸天神の「菊まつり」は10月22日(日)から11月23日(木)まで。お祭りするのは天神さまでおなじみの菅原道真です。その道真が16歳のときに詠んだ『残菊詩』にちなんで行われる菊まつりということです。本殿のまわり、境内に飾られた菊の花を堪能した後は、下町の賑わいと美味しい味をたっぷりと楽しんでください。
http://kameidotenjin.or.jp/access/
◎京都府立植物園では10月20日(金)から11月15日(水)まで「菊花展」が開かれます。大芝生地特設展示場では大菊の他にも、小菊を鉢から下へ垂らした懸崖作りなどおよそ1000本が展示されるとのこと。小菊もボリュームで大菊に負けない見応えがあるでしょうね。
http://www.pref.kyoto.jp/plant/11900003.html
◎福岡県宗像大社の「西日本菊花大会」はまだ少し先ですが11月1日(水)から22日(水)までお子逢われます。西日本一の規模を誇るそうで、九州各県のみならず山口県からも愛好家が出品する熱心さです。合わせて3000鉢の菊を楽しめるそうですよ。
http://www.munakata-taisha.or.jp/html/access.html
行き方それぞれの場所のアクセスを参照してください。
菊の香りをたっぷりと吸って元気に秋を過ごし、冬へと備えてまいりましょう。
参考:
文部科学省食品データベース