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いつの間にか、秋がどんどん深まってきました。「寒露」とは、暦便覧によれば、「陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすればなり」とあり、野の草に降る冷たい露のこと。朝晩の冷え込みに、冷たい風に、肌寒さを感じるころとなりました。
そんな冷涼な空気の中に漂う甘い香りが、金木犀の匂い。その姿は見えなくとも、千里先までも届くという芳香が、オレンジ色の可憐な花の存在を教えてくれます。中国では、この花の香りに包まれて観月をする風習も。月輝く夜、金木犀の花を浮かべた盃を重ねるのも一興です。
さて、この頃に吹きはじめる北風の名が「雁渡(かりわた)し」。七十二候では、寒露の初候「鴻雁来(こうがんきたる)」となり、晩秋の空に北の国から越冬に訪れる渡り鳥たちが、群れをなして翔び交います。実りの季節もたけなわとなり、日本全土が五穀や作物の収穫にわきたつ秋。凍てつく冬を前に、北から南へ、黄金色に、紅黄色に、深紅に、列島は次第に染まりゆくのです。
旧暦の10月の異称は、「神無月」。八百万の神々が出雲の国に集まる留守を、江戸で守っていたといわれるのが恵比寿さま。商家では、10月20日に商売繁盛を祈願する「恵比寿講」を盛大に行っていました。
現在も東京・日本橋「宝田恵比寿神社」を中心に旧大伝馬町一帯で続くのが、「べったら市」。これは、恵比寿講の準備をするための市が前日の19日に立ったことが起源。恵比寿さまの像や打出の小槌、酒宴につきものだった鯛、切山椒、そしてべったら漬などが売られていたそうです。今も人気のべったら漬は、大根を塩漬けにした後、麹と砂糖に漬けたもの。沢庵のおよそ三倍程度の厚切りにしたものを、江戸っ子たちは好んで食していたとか。
今年も多くの露店が連なる大伝馬町界隈。遠路はるばる訪れたり、仕事帰りに立ち寄って、「べったりつくぞー」と、振り回されていたという、甘く歯ざわりのいい漬物と江戸情緒を味わってみるのも秋の愉しみの一つです。
秋の花の代表格といえば、やはり菊でしょうか。同じキク科で、色の咲き方もさらに艶やかで表情多彩なダリアの花も、秋咲きの花時を迎え、全国各地で咲き誇ります。原産地はメキシコ、グアテマラ。アステカ文明では薬草として育てられていたダリア。スペインからヨーロッパ全土に広まり、日本には天保年間にオランダ船によってもたらされたとか。天竺牡丹(でんじくぼたん)という別称にも、華やかさと異国情緒が漂います。
花の色は赤、白、ピンク、黄、オレンジ、紫、黒紅など様々。形もデコラティブ咲き、カクタス咲き、ポンポン咲き、アネモネ咲き、ピオニー咲きなど実に多彩。各地のダリア園へ行けば、色とりどり、形もとりどりに美を競うダリアたちに出会えることでしょう。