【解説】UEFA「緊張感ある試合多く」刷新的中 興行成功の一方、過密日程で負傷リスク増加
<欧州CL1次リーグ最終節>◇29日(日本時間30日)
18試合が各地で一斉に同時刻開催され、リバプール(イングランド)MF遠藤航(31)は敵地でのPSVアイントホーフェン(オランダ)戦にフル出場し、2-3と敗れた。それでも1位での決勝トーナメント進出を決まった。24位までにプレーオフ(PO)進出が与えられる中、MF南野拓実(30)のモナコ(フランス)は17位、FW上田綺世(26)のフェイエノールト(オランダ)は19位、MF旗手怜央(27)のセルティック(スコットランド)は21位、MF守田英正(29)が負傷欠場したスポルティング(ポルトガル)は23位を守った。DFチェイス・アンリ(20)のシュツットガルト(ドイツ)は26位、MF川村拓夢(25)のザルツブルク(オーストリア)も34位で敗退。崖っぷちだったマンチェスター・シティー(イングランド)は22位で進出を決めた。
◇ ◇ ◇
◆解説 欧州サッカー連盟(UEFA)がもくろんだ「緊張感ある試合を多くする」狙いは当たった。今回から大会方式は刷新。1次リーグの参加チーム数は32から36へ、試合数も6から8へと増えた。前回までなら1次リーグは強豪同士が各組に分けられたことで、5試合目までに決勝トーナメント進出(各2位以内)が決まり、最終節は消化試合となる傾向にあった。
だが今回は上位8チームに与えられる「16強ストレートイン」、9~24位によるプレーオフ進出と2段階があり、そのせめぎ合いが生まれた。前節の時点で上位が確定していたのはリバプールとバルセロナの2チームだけ。よって最終節まで多くの白熱した試合が展開されることとなった。
興行的なうま味も拡大した。第1ポット同士の強豪対決も組まれた上、今回の1次リーグは全144試合もあった。従来の96試合から48試合増え、プレーオフ16試合も加算すれば決勝トーナメントの前までに全160試合を実施。これは従来の1・67倍に当たり、高い放映権料をさらに右肩上がりのものとしている。加えて最終節のスタジアムはどこも満員で、その経済効果は計り知れない。
ただ日程に目を向ければ課題は浮き彫りとなる。12月に終わっていた1次リーグが1月まで延長されたことで、移籍期間と重なった。セルティックは先週までプレーしていた古橋亨梧がレンヌへ移籍し、最終節はエース不在となった。最終節でPO進出に影響が出なかったのは幸いだったが、そういう事情も踏まえての勝負だと捉えるしかない。
何より過密日程で負傷リスクが高まり、選手生命への影響が一番の課題となる。3日に1試合ペースだけに、Rマドリードのアンチェロッティ監督はこれまでも「選手たちの健康に目を向けなければいけない」と苦言を呈している。興業と健康を両てんびんにかけ、連盟とクラブは“綱渡り”をしていく。【佐藤隆志】